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第178話 世界会議

 これまで数世紀どころでない期間、交わることのなかった大国の王たちによる初めての国家会議。

 その議題の主は、国家間の争いの停止。

 襲来する神々と神獣種に対しては共闘すること。

 それほど損をする者がいない内容にも思えるが、議論は紛糾を極めている。


「……貴様ら人間がエルフと我ら巨人族の争いの場に現れたこと、世界の均衡を破ったこと……その理由には得心がいった。全面的に信じるかはともかく、少なくとも全ての辻褄(つじつま)が合ってしまうからな。だがおいそれと提案を呑んで、我が将兵を危険に晒すつもりはない!」

「まァー、力を合わせるってのは悪くないと思うけど、(しゃく)に障るのは事実だよねぇ」


 まず不満を露わにしたのは、ヨトゥンヘイムとヴァナヘイムの王。ある程度、事情を知っている四国同盟と“神断の罪杯(カオス・グレイル)”を除く面々ということで、当然というべきだろう。

 とはいえ、アースガルズの王もあまり好ましい表情は浮かべていない。出来うる範囲で情報交換していたとはいえ、今回の一件だけでも色々と事態が動き過ぎた。足並みが揃っておらず、とりあえず静観という構えだ。


 何より、ここまでこじれている理由は大きく三つ。


「ウチの国にスパイは紛れ込んでいるのかなぁ? というか、ニザッヴェリルをあんなにした兵器をチラつかせられるんだから、実質脅迫みたいなものだよねぇ」

「貴様らが我ら地上で争う我らを嘲笑い、戦争と混乱を振り撒いていたことについてが気に食わん!」


 自分たちの知り得ない領域で事態が動いており、混沌の果てに真実を知らされた。

 その真実とは、今の世界を維持する為に力を備えていた者と、真実を追って世界を放浪する者がおり、もう戦争だの国家同士の(いさか)いどころではない現実のこと。

 更には未知の異世界から来た斎藤翔真という男と、今此処に在る世界すらも滅ぼしかねない対神用の大量破壊兵器の存在。


 これらを知っているのと知らないでいることに対して、世界を表と裏で分ければ理解は容易だろう。

 つまりこれまでの闘いや価値観は世界の表側でのみ通用するモノであり、裏側である真実――こちらの提案を受け入れるということは、自分が道化であると認めるのと同じ。

 自分の生きてきた時間や想い。その為に命を散らした者を否定するようなものであり、ある意味では死よりも残酷。

 そんな誇りと矜持と意地――何より、これまで気の遠くなるほど敵対し続けてきた時間という名の溝が、皆の間に深々と横たわっていた。


「少なくとも“神断の罪杯(アナタたち)”には、色々と明かして貰わなければならないことがある。彼らに対してはそこからだと思いますし、ニザッヴェリルの一件に関しては私たちもお聞きしたい」

「そうね、貴女たちが別の領域へ目を向けていたこと自体は非難するつもりはないけれど、落とし前は付けるべき。でないと、誰も納得しないんじゃないかしら?」


 その上で事態を簡潔に説明するなら、セラとエゼルミア陛下が言っている通り。

 要は他国に対しても、“神断の罪杯(カオス・グレイル)”に対しても、信頼を置けるわけがないということだ。特に後者に関しては、満場一致。


 私利私欲で滅ぼされたミュルクや魔眼を弄ぶ“魔眼狩り”。

 アースガルズの様に内側から揺動されて起こった争いによって、命を落とした者も数知れず。

 どんな理由が根底にあれ、被害を被った国に連なる者が連中を許せるわけがない。


 一方、結果的にではあるが、フェリスとはニヴルヘイムで共闘した一幕もあるし、幾度も刃を交えたゼインやフレイヤがイーサンの様な下種なのかと言えば、明らかに性質が違う。


 神に立ち向かう正義でもなく、世界を支配する純粋悪でもない。

 白でもなく黒でもない。

 まさに混沌。


 同時に何らかの決着を付けなければならない場面には違いないということだ。


「少し長い話になってしまいますが、ここまで来て空中分解というのも御免被りますからねぇ……」


 そうしてアンブローンが語ったのは、世界を取り巻く真実。

 力のある魔眼保持者を見出す為に世界に混沌を振り撒いたこと。

 神話に記された中から神々に対抗する術を見出し、進化した魔眼と未知の技術を融合させる目的と並行していたこと。


 今を生きる人々を軽んじて踏み(にじ)る所業の数々には、当然ながら事情を知らぬ誰もが憤りを隠せない。特に自分の武や戦いに誇りを持つ巨人族などは、今にも斬りかかりそうな勢いだったが、当のオージーンは座ったまま腕を組み、目を閉じたまま静観を保っていた。

 ただ“偽りの神にでもなったつもりか?”――という言葉で、これまで不遜だったアンブローンに一石を投じていたのは、どこか印象的ではあったが。


 とはいえ、連中にとって、俺たちの魔眼は替えの利かないものとなっている。ギブアンドテイク、WINWIN――と言い方は色々あるが、共にイニチアシブを握っているが故に今は“神断の罪杯(カオス・グレイル)”側も、そんな糾弾を素直に受け止めざるを得ない。

 まあこんな事で(みそぎ)になるわけもなく、失った者が戻ってくるわけもない。第一、ここで改心する様な連中なら事態を肥大化させはしないだろう。

 互いに理解は出来るが、納得は出来ないという状況のまま事態は進んでいる。


「……ニザヴェッリルに関しては、“ミストルティン”完成の為に必要な事でしたので」

「ふん、それで数万では利かぬ小人(ドワーフ)を天からの光で滅ぼしたと?」

「彼らの武器製造技術は私たちにとっても必要。何より、神話の時代から脈々と受け継がれてきたものですから。それに……彼らはあちら側(・・・・)に付くようでしたからね。残念ながら、一手(・・)遅かったようですが……」


 その一方、そんな膠着(こうちゃく)状態の中で紡がれたアンブローンの言葉は、俺たちを驚愕させるに足るものだった。

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