第171話 魔眼の真実
「神を殺す、魔眼が……?」
「人の身に在りて、天上の神を殺せし力……神と人とが混じり合った血族のみに現れる特異体質。それこそが……!」
ゼインの言葉を聞き、思わず自分の掌を一瞥する。
遥か太古、自分の血脈に神とやらと交わった歴史があるのかもしれないと知らされたのだから当然だろう。
それは他の魔眼保持者も同様――。
「なるほど、人と神が共に過ごしていた時代の産物が魔眼保持者ということね。迷惑な話だけれど……」
一口に神とは言っても、全能の創造神から動物を神格化したような大したことない者まで様々な伝承が言い伝えられている。当時では概念でしかない今と違って、ある程度一般的な存在だったんだろう。
一言で表すなら、神と人の共生。気まぐれや運命の悪戯で、その道が交差することもあったのかもしれない。実際伝承では、神々は性に関してかなり奔放だったと記されている。
「つまり“解放者”とは……」
「時代を経て、薄れゆく神々の力を色濃く発現させた者が魔眼を有する。そして流れる時間の中で独自に進化を重ねた姿こそ、“禁忌魔眼・解放”なのだ!」
無限に増大する力と喰らい尽くす力。
刃に乗せてぶつけ合いながら、真実が一つに繋がっていく。
「それなら、まさかアレは……その動力源は……!?」
視界の端に映るのは、背後で螺旋の渦を巻く大量破壊兵器。
通常武器の範疇を超え、連中にとって重要なアイテムなのは言うまでもない。そして、魔眼の力を高めた者たちを監視しているところからして、用途について凡その見当は付く。
「魔眼の力で作動する“呪眼兵器”か……!」
「如何にも……! 無論、貴様の知る物とは次元が違うがな!」
かつて相対した“呪眼兵器”。
それこそニザッヴェリルを消し飛ばし、世界に異常を引き起こした大量破壊兵器の正体。加えて、あの“ミストルティン”は、“解放者”――つまり“禁忌魔眼・解放”に目覚めた者でないと扱いきれない代物。
イーサンが持っていたのは、この兵器を元に開発された|非魔眼保持者用の試作品、もしくは劣化品というところか。
「歴史の裏で暗躍して戦争すら操っていたのは、優れた魔眼保持者を探し当てる為なのか!? 資質とは……!」
「ふっ、貴様も俺も同じ穴の狢だ。戦うことでしか己の価値を見出せない。その結果、今の貴様があるのではないのか……!?」
「否定はしない。アースガルズとの戦争がなければ、ニヴルヘイムでの居場所はなかった。いや、今も世界を彷徨っていたはずだ」
「ならば、結論は出ている! 自分たちが引き起こした争いで一度文明を滅ぼしながら今も神を気取り、我が物顔で天に立とうとする愚者を滅する為、力を振るうがいい!」
紅破裂閃、黒迅双閃。
何度も斬り結び、斬撃を撃ち飛ばす。
砲撃を、刃の雨を降らせながら、全てを置き去りに互いの力をぶつけ合う。
「その為に一体どれほどの犠牲……闘いに関わるべきでない者を傷付け、想いや命を踏み躙って来た!?」
「貴様こそ、愚かな神々の家畜となる世界を許容できるというのか!?」
「それはお前たちがやって来たことも何ら変わりない。高みに立って地を這う人間を嘲笑っているんだからな!」
“神断の罪杯”が相手だろうと、神々だろうと、俺たちの成すことは変わらない。
「障害は斬り捨てる……!」
凛として舞う蒼銀の髪。
俺にも譲れないものがある。
「“破滅衝く黎明の剣”――ッ!」
「“災禍轟く滅獄の冥皇”――ッ!!」
黒金と紅銀――かつての焼き直しの様なシチュエーションで、絶望的なまでの極大斬撃が激突。
俺たちは極光に身を灼かれながら再び弾かれ合うと、巨大なクレーターの中心で再び相対する。
「ヴァン……!?」
「なんて破壊力!?」
「馬鹿力同士ねぇ……」
だがかつての焼き直しでありながら、互いに覚醒状態とあって威力は桁違い。天空大陸に地鳴りが起きるほどの激突によって、他の連中も弾かれ合いながら手を止めていた。
「――!? ――!?」
「頭、叩かないで。土まみれ……」
二人で首をフルフルと振っているマスコットを含め、余波から逃れられなかった者たちが愉快な状況となっているのは言うまでもない。
「どの道、この地が貴様の終着点。魔眼を得た以上、逃れられぬ運命……」
「勝手に運命を決められる覚えはないな」
破壊の波動が気流となり、俺たちを包み込む。
新たな力を得ても尚、気を抜けば消し飛ばされかねない死闘。纏った刃を研ぎ澄まし、再び激突しようとした瞬間――頭から埋まっていた泥よりアメリアが抜け出し、俺たちの中心でクルクルと舞い荒ぶ。
「ちっ、神聖な地を穢すな! 連れなら、躾ぐらいしておけ!」
信念と矜持と誇りと――己の全てを懸けた戦い。
その最中、アホ面を晒しながら気流の竜巻の中を舞うアメリアに対し、ゼインの怒りが爆発。大剣の腹でアメリアが撃ち飛ばされて、こちらに向かって飛んで来る。
「勝手についてきただけ……ちっ、邪魔だっ!」
この状況で余裕などあるはずがないし、積年のストレスが爆発してしまったということもあるんだろう。直後、大気を引き裂いて飛んで来たアメリアを条件反射で蹴り返してしまう。
「び、ぶぅぅううっっ!?!?」
若い老婆は今度こそ気流に乗って遥か天空へと舞い上がっていく。
「二人して何をやっているのですか?」
「あら、楽しそうね」
セラとフレイヤから呆れたような視線を向けられるが、こちらとしては真剣そのものというのが、また何というか――。
そうして仕切り直しとなったわけだが、俺たちの刃が交わるよりも早く、浮遊大陸が激震に包まれた。
何故なら、遥か天――この浮遊大陸より更に上から、神々しいまでの光が差し込んでいたから。
「ひっ、ぶ、ぅっ!?」
舞い上がっていったアメリアを一瞬にして消し飛ばし、この地を灼き焦がしていた光の主。それは――。
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