第166話 天空神殿
「これ、は……!?」
王の間へと突入してみれば、そこに広がっているのは無限に広がる空間と石造りの一本道。
玉座に腰掛けているはずの王がいないどころか、部屋と呼べる状況ですらない。異質な感覚と光景に誰もが目を見開いていた。
「――全く、こんな国の中枢に土足で上がり込んで来る人たちがいるなんて」
「貴女たちは……!?」
そして俺たちの視線の先で佇んでいるのは数名の男女。
何人かについては、あまりに見覚えがあり過ぎる顔ぶれ。だが奴の姿はない。
そうして色んな意味での衝撃に身体を硬直させた俺たちの背後から衛兵が迫る。思わぬ挟み撃ちを前に武器に手をかけようとするが――。
「な、何奴だ、貴様……ら……ぁ?」
さっきまでアメリアに詰め寄っていた衛兵の首から上が消し飛んだ。
桜色の散弾で惨劇を引き起こしたのは、なんと味方であるはずのフレイヤと呼ばれていた女性。
「何奴……ね」
「あら、勘が鋭い。流石は“解放者”の一人というところかしら」
衛兵視点では俺たちの正体について疑念のある段階と言っても、さっきまで顔を合わせていたのだから、何奴――お前は誰だ、という言葉は出てこないはず。
つまり衛兵の言葉は、室内の連中に向けられたもの。奴らと彼女たちは同じ宮殿に身を寄せているはずなのに――。
「ひぃっ!?」
惨劇に戦慄する一般兵が集まり始めた瞬間、俺たちの背後では独りでに扉が閉まった。一人巻き込まれて室内に取り残されたアメリアもいるが、今は気にしている場合じゃない。
俺たちの前に立つのは、一人一人が各国最強クラスの戦士と称して何ら過言ではないから。
「――!」
「……」
バックから飛び出したニーズヘッグが対面に佇んでいるフェリスと視線を交錯させる。マーズ・エリュニスと姿形は違えど、最早懐かしくも感じる光景だった。
「さて、招かれざる客というか、いずれ招くはずの客が今来たというか……」
「どういう意味だ? そもそも“解放者”とは……」
「まあいいでしょう。この国がどうなろうが知ったことではないけど、この場所で暴れられるのは、ちょっと困っちゃうもの」
フレイヤとフェリス以外は知らない顔触れ。だが気の抜ける相手じゃない。
そんな最中、本来玉座が備わっているはずの箇所で輝く光の柱が部屋中を閃光で包み込む。次の瞬間には、室内とは思えない広大な空間が目の前に広がっていた。
「これは……?」
「“葬黎殿”――私たちの在るべき場所。言ってしまえば、アジトってところかしら」
星の広がる月光の夜天。
空にそびえる天空神殿。
更に月明かりに照らされる草原や泉、切り立った山脈など、文字通り別世界。王の間から直接飛ばされて来たこの場所は一体――。
とはいえ、いくら綺麗に見えても、此処は連中の領域。誰もが瞬時に力を開放できる臨戦状態で会話が進んでいく。
「まあ!? 凄いわ! ゴージャスでエレガントな私にぴったりな宮殿ね! というわけで、アンタたちは即刻退去! 今日から私たちの家にするわ! あぁ、素敵な愛の巣ねぇ!」
一人はうっとりした表情で草原に座り込んで見当外れの発言をしているものの、全員がスルーしたのは言うまでもない。
今ここにいる誰もが小指のデコピンで頭蓋破裂ぐらいさせられる程度には力の差があるが、自称悲劇のプリンセス相手にはそれすらもしたくないということ。全員の気持ちが謎に統一された瞬間だった。
「……それにしても、まさか自力で私たちの影を追いかけて来るなんてね」
「お前たちが何か大きな意志の元に行動しているのは明白だった。俺たちに役割を振り、世界の裏で暗躍していることも……」
「なるほど、どうやら貴方たちを甘く見ていた様ね。本当にままならない」
「これまで散々好き放題されて来たんだ。こちらの要求も呑んでもらいたいところだが……」
視線の先、天空神殿の彼方で渦巻いているのは、巨樹を思わせる光の柱。
紅蓮と翡翠の奔流が螺旋を描いて、凄まじい存在感を放っている。
「“ミストルティン”――神を殺す力」
「神を殺す力……そして、全身を貫くこの戦慄。やはりニザヴェッリルを消し飛ばし、世界の均衡を揺るがしたのは……!」
こちらの戦力はニーズヘッグを含めて六人。
向こうはフレイヤとフェリスを含めて七人。
数的不利ではあるが、何とかするしかないだろう。
俺たちの求める真実は、今目の前にある。
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