第150話 蒼剡纏う不死鳥《BRAVE PHOENIX》
「生き、てる?」
「何がどうなっているの?」
砲撃の余波で転げたリアンとコーデリアは、周囲を見回しながら呟く。
本来髪の毛一つ残さず消し飛ぶはずだった自分たちが生きていること。人々の街並みが殆ど変わらず残っていることに驚愕しながら――。
「効かないな。どうやら……」
砲撃は一ヵ所に集結し、黒翼の羽ばたきによって四散する。
それはつまり、魔眼の力で特大砲撃を喰らい尽くし、事実上の無効化を成し得たことを意味していた。
「これが二つの魔眼を束ねた力……」
「理論上は可能。でも、誰もなし得なかった。いや、そんな発想自体、禁忌に等しかった。つまり私も凄い」
セラに支えられながらドヤ顔を浮かべている少女ともかく、その発言は現状を表すとしては最適なものだろう。
現に先の特大砲撃は、俺が開放状態であっても吸収限界を超えていたはず。ましてや無傷でほぼ無効化するなんて、不可能に近かった。
それを成し得たのは、今の状態だからこそ。
俺の“叛逆眼”は、“恤与眼”の力を経て、飛躍的に力が高まっている。
「征くぞ……!」
四枚となった黒翼を羽ばたかせれば、翡翠の残光すら置き去りにして俺の姿が掻き消える。
「■■■――!?」
直後、交錯。
右の“デュランダル”を振り抜き、直槍の柄ごと奴の腕を断ち穿った。
「この、力……」
更に左の“レーヴァテイン”を一閃。
二叉槍を穂先の中心から縦に両断する。
「■■■――!!」
だが流石に異形の怪物。
腕の喪失などものともせず、残った四本を用いてさっきの特大砲撃を放とうと魔力を収束して来るが――。
「砲撃……撃たせるものか!」
最大加速で自ら魔力の奔流に身を晒す。
そして翠紅纏う蒼金の六芒星を煌めかせれば、全ての魔力が消え去り、両剣に纏う漆黒が激増する。
「■、■■――!」
「“混沌祓う聖魔の双戟”――」
聖魔双閃。
直槍と二叉槍を割断し、腕までも斬り飛ばす。
剣圧だけで破壊の波動が拡散する。
圧倒的な破壊力。
自らの純然たる力の高まりを感じる。
これで残すは腕と三叉槍が二本、それと奴の合成眷属のみ。
だが一転攻勢で攻撃を受けてもいないにもかかわらず、俺の両目からは鮮血の涙が零れ落ちていた。
加えて全身が軋み、細胞単位で悲鳴を上げているのがはっきりと分かる。理由は単純。
「ちっ、過ぎた力は身を滅ぼす、か……。じゃじゃ馬どころの話じゃないな、これは……」
オージーン戦と同様の現象――いや、それを遥かに超える危険極まりない力をこの身に宿しているから。
早急に決着を付けなければ、逆に俺自身が吹き飛びかねないほどに――。
一方、無理やりな限界突破は、俺に新たな力を馴染ませる引き金と化していた。
「蒼い炎? これは……」
「ヴァンの魔法だというのですか……?」
そう、今も両剣が纏い、先のスコルタイプとの戦闘でも使用した蒼炎――その正体は俺自身の魔力。
つまりセラの言う通り、今の俺は使えないはずの魔法を使っている。
元より蒼炎を扱うに至った経緯は、魔眼の力を御し切り、己の魔力の吸収・放出すら自在になったから。正確には、自在になりつつあったというのが正しいか。
そんな中、“禁忌魔眼・解放”へと至った“恤与眼”による強引な付与が俺に完全な魔法の力を取り戻させた。
他の誰とも変わらない、当たり前の魔法の力を――。
「何の因果なのか。本当に……」
スコルデリンジャー戦では思うままに蒼炎を行使したが、戦いが終わった後に去来したのは歓喜ではなく虚無感だった。
今更魔法を取り戻したところで戻って来る物など何もないし、魔眼の力を極めるのなら、そもそも魔法の練度を上げる必要もない。
故に先の闘い以来、己自身の魔力を行使することはなかった。
だが他の魔眼が示す通り、魔法技術と魔眼の力の同時行使が大きな力となりえるのは事実。
そして、かつて俺を世界から追放し、取り戻しかけながらも放棄した力が、自分の意志に反して再びこの身に力を与えている――なんて皮肉どころの話じゃない。まるで世界がそう在れと示さんばかりに――。
「■■■――!」
この力を使って戦うのは少々癪だが、譲れない物を護る為の剣となるのなら迷う必要などないだろう。
何せ、相手は世界の調律者とやら。
理を超えた存在を相手にするなら、今この身に蘇った力を開放することに不服など抱くはずもない。
「終わりにしよう……!」
二本の三叉槍が烈風を纏いて迫り来る。
これまで以上の出力ではあるが、退くという選択肢などない。
烈風に紛れて四本の腕が再生し、そちらで収束している特大砲撃を含めても。
「“蒼剡纏う叛逆の翼”――!」
蒼剡天翔。
聖剣と魔剣から放たれた斬撃が、蒼き炎を纏った不死鳥と化して飛翔。
合成騎士が放つ攻撃の数々を貫き、全てを灼き尽くしていく。
「■、■■■――!?」
何故、初めて魔法を行使した“炎”と化したのか。
それは“レーヴァテイン”が“炎”を司る魔剣であるから。
かつての炎獄魔神を思えば、当然の帰結だろう。むしろ今までの俺は、“レーヴァテイン”自体の力を全く引き出していなかったわけだ。無論、“デュランダル”も――。
だが逆を言えば、この蒼炎は全く未知の領域へと踏み出せたという証でもある。まだ強くなれる余地が残っていることだけは、この戦いの中で唯一の朗報だったのかもしれない。
そうして、これまでの軌跡と複雑な思いを抱えながら、蒼炎に呑み込まれていく合成騎士を戦場の空から見下ろしていた。
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