第146話 神話を穿つ叛逆《Tempest Fang》
「ぐっ……!? 一撃一撃、大地が震えてやがる!」
「闘いの次元が違い過ぎますね。こちらからでは手の出しようがない」
ここまで好き勝手に動き回られているのだから、周囲への被害より撃退最優先。
結果、街を破壊しながら繰り広げられる災害規模の闘いに誰もが目を見開いていた。
「だがこのまま手を拱いているわけにはいかないぞ! あそこには、皇帝陛下が……!」
「そんな事、分かっているけど……」
仲間たちがそんな会話を大声で繰り広げている傍ら、爆炎の中より神話の怪物が姿を現す。
それなりに大技を叩き込んだつもりだったのだが――。
「無傷ってわけじゃなくとも、流石に頑丈だな」
「ええ、攻撃力という意味ではケルベロスの方が上かもしれませんが、継戦能力は……」
三体の怪物。
異形の騎士たち。
身体の各所から鮮血を流してはいるが、未だ健在。それどころか、既に傷が治癒し始めていた。
「やっぱり脳天か心臓辺りに直接ぶち込まないと、どうにもならないか……」
「ですが、少々難度が高いですね。彼らが従えている眷属、得物、能力……全て踏み越えた上で硬質な肉体に致命傷を与えねばならないのですから……!」
双剣と聖剣を以て三本槍と切り結ぶ。
二体は空中、一体は地中というステージを持ちながらも、連中の戦闘スタイルはあくまで騎馬での白兵戦。その究極形ではあるが、対処方法が正面対決であるということには変わりない。つまりはいつも通りだ。
ただ搦め手でない分、基礎能力の差が戦力に直結するということであり――。
「■■■■――!!」
「“雷鳴のストレイン”――!」
コーデリアの雷矢が人口密集地に降り注ぐ毒液の威力を弱めるも、純然たる質量は止まらない。
「くそっ!? あんな物、剣じゃどうにも……!」
「“剣破する突斬撃”――!」
民衆に迫る毒液にリアンたちが二の足を踏むと、走り込んだグレイブが斬撃を放って間一髪で払い落とす。
「邪魔……」
「■■■――!」
だが今度は白の少女とエリゴスが砲撃を撃ち合い、相殺し切らなかった余波が街全体に拡散する。
「にゃろぉっ!」
「第二波、来ます!」
次は攻撃動作直後のグレイブを庇う様に第七小隊が前に出て技を放つ。
「“絶突咆哮”――!」
「“金撃輝く魂”――!!」
「“乱反射せし爆裂”――!」
三連撃が破壊の烈風を斬り裂くものの、ニヴルヘイムが誇る戦士たちが被害の軽減だけに全力投球――という時点で、どれほど異常な闘いなのかが浮き彫りになることだろう。
それでも尚、怪物との激戦は大乱戦の様相を呈していく。
「このままでは、地図の上からニヴルヘイムが消えるか……!」
「ですが、出力を抑えれば、こちらが吹き飛ばされかねない……!」
セラは大刀を維持したままの斬り上げで二叉槍をかち上げた。
そのまま両腕を上げさせ、胴が開いたところを狙い撃とうとしたが、アイムが従えている大蛇が大口を開けて迫り来る。
無動作の一撃に虚を突かれて然るべき状況ではあるが、そこは流石の斬滅皇女。
大刀形態の熱量で毒液を蒸発させると、大蛇の口元から横腹にかけて一気に斬り裂いた。
「これで一体は……!」
連中とて痛みがないわけでもなければ、不死身なわけでもない。
“混沌祓う聖魔の双戟”――黒翼から放射線状に波動を振り撒きながら加速。アイムの頭蓋を刻むべく、両剣に漆黒を灯すが――。
「■■■■――!」
暗黒直槍。
底上げした斬撃を放ちながら横入りしてきたエリゴスと激突。
そのまま押し勝って奴の身体を斬り裂くものの、間に防御が入った分、致命傷にまでは達しない。更に立ち直ったアイムの二叉槍による連続刺突で強襲される。
「厄介、ちょっとだけ……」
相手を変えて“デュランダル”で斬り結ぶ最中、今度は翡翠の砲撃がアイムの横腹に炸裂。その余波で旅館らしき建物が崩壊した。
「本当に好き勝手やってくれますね……! 人の国で……!」
今度はそんな白の少女を強襲しようとしていたアンドラスの三叉槍と“グラム”が交錯。
因縁の相手同士、激しく鍔是り合う。
「この乱戦……戦力は拮抗している。ならば……!」
事実上の三対三。
頭数を減らすべく、矢継ぎ早に相手が変わる大乱戦となるのは自明の理。
突破口となり得るのは、力を最大開放した、この俺自身――。
「斬り裂く――!」
黒翼を一回り巨大化させて超加速。
これまでの乱戦で吸収し続けてきた力を一気に開放する。
「■、■■■■!?」
漆黒を纏わせた二刀を束ねて横腹に双閃。
だがまだ攻撃は終わらない。
更にそのまま空中を駆け抜ければ、急速反転。
最大速度を維持したまま、左右の剣を織り交ぜた上下左右への斬り抜けと急速反転を繰り返す。
正しくそれは、鮮血と黒刃が織りなす絶迅乱舞。
加えて、相手との接触時に瞳の蒼金を瞬かせれば、漆黒の乱舞が勢いを増していく。
「これで……終わらせる……!」
瞬迅翼閃、黒牙双裂。
天馬を、胸を、そして首元を双剣の乱撃で断ち穿つ。
最後に漆黒の双閃で頭蓋を斬り裂けば、戦場の空を夥しい鮮血が彩る。
これで戦力数値はこちらが上、後は各個撃破を――と背後の戦場に視線を向ければ、なんとスタミナ切れなのか、白の少女がボケーっと突っ立っており――。
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