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第135話 竜石の軍団《Gargoyle》

 赤褐色の飛翔体が空を覆い尽くす。

 月華騎士団(ヴァーガルナイツ)本隊は城壁の上に立ち、国土に迫り来る大量の飛翔体への迎撃準備を敢行している真っ最中。

 朝っぱらから叩き起こされた俺やアイリスも迎撃に参加することになり、それぞれ武器を手に城壁の上で空を見上げていた。


「“ゼロンガーゴイル”……まさか空路で迫って来るとはな。しかもこんな大群で……」

「上からじゃあ検問や城壁の意味がないし、距離が離れすぎて剣や槍も届かない。厄介だね」


 俺たちの視線の先には、竜の頭部と細い身体、巨大な鉤爪と蝙蝠(コウモリ)の様な両翼を(あわ)せ持つ赤褐色のモンスター――“ゼロンガーゴイル”の大群が迫って来る光景が広がっている。

 互いに射程距離まで幾許か時間があるが、色んな(・・・)意味で衝撃的な光景であるのは言うまでもないだろう。


「連中の生息地は大陸でも南の辺境。こんな距離の離れた土地まで出張って来るなんて、ありえないはず……」

「でも、実際にこうやって……」

「だから、頭を抱えたくなってるんだ。それにあの鬼気迫る様子……明らかに普通じゃないな」

「どういうこと?」

「モンスターとは言っても、積極的に人間を襲いたいと思っているわけじゃない。本当に危険とされているのは、ごく一部だけ……。モンスターと人間がぶつかるのは、互いに領域を侵し合っているからだ」

「領域……」

「人間はモンスターを狩って生きている。言ってしまえば、彼らの領域へ無断で踏み込んで、刃を向けているわけだ。身を守る為に戦うのは当然のこと。一方、稀にモンスターが人間の領域へ侵入して来ることもあるんだろう」

「今みたいに?」

「そうだ。でも、それは多くのモンスターとしても望むところじゃないはず。大して可食部の無い人間(獲物)を狩る為に、相手の領域(テリトリー)に踏み込むなんてナンセンスだからな」


 全ての生物の根幹――本能は自らが生き延びること、伴侶を見つけて世継ぎを残すこと。

 生きていく中でリスクを負うは極力避けるべき。


 草食動物が植物を食べて生きていくのは、自分よりも弱いから。

 肉食動物が草食動物を食べて生きていくのは、自分よりも弱いから。

 自ら望んで怪我をしたい生物なんて、ごく一部を除いて存在しない。

 それなら、本来あり得ないガーゴイル襲来の原因は、ある程度絞り込むことができるだろう。


「連中はどう見ても、人里に紛れ込んできてしまった“はぐれ”ガーゴイルって感じじゃない。だから、異常事態なんだ」


 モンスターが自らの住処(すみか)を大きく離れ、群れ全体でこれまで(・・・・)にない(・・・)大移動をしていること。

 連中の鬼気迫る様子。


 何らかの要因により、元の住処(すみか)を離れざるを得なかったのだろう。

 予測される要因は、彼らが住めなくなるほどの気候変動。もしくは更に強力な捕食者によって住処(すみか)を占拠されたのか。


 以前遭遇したスコル系のモンスターも南の砂漠に住む種族。群れの数が多い鎧虫種としては遭遇数が少なく、はぐれとして処理はしたが、ニヴルヘイムに紛れ込んでしまいそうなモンスターじゃないのは明らか。

 つまりモンスターの分布すらも急速に変化してしまう程の何かが、この世界で起きているということ。

 俺たちの追う真実と関係しているのかは定かではないが――。


「モンスター、来ます!」

「総員、撃てェ!!」


 そんなことを考えている最中、オーダー卿の指示を受け、遠距離主体の面々が次々と魔法を放ち始めた。

 いよいよ射程圏内。


「■■■、■■!?」


 飛び交う光を前に、ガーゴイルが空中で二の足を踏んだ。


「“エアリアルシュート”――!」


 コーデリアを始めとした射手によって、一体、また一体と敵勢力は数を減らしていく。


 城壁到達前に全てのガーゴイルを叩き落せば、街への被害を未然に阻止できる。正しく最適解。連中が襲い掛かって来る前に一体でも数を減らそうという寸法だ。

 そして、今のところは想定通りに事が進んでいると言っていいだろう。


「ちっ、今回俺は戦力外だなァ」

「そうですね。斬撃を飛ばして戦うだけというのは、どうしても効率が悪いですから……」


 一方、グレイブやリアンを始めとした近接特化の面々は、城壁に張りつかれた時の緊急戦力という位置づけとして控えている。セラやアイリスの様に、ポンポンと大規模斬撃を放てる方が異常なのだから当然だろう。

 逆を言えば、固定砲台としてのアイリスの有用性は、比類ない次元に達しているということであり――。


「考えてたって仕方ない。今は……!」


 “黄昏渦巻く凍星トワイライト・ルミナス”――黄金の斬撃が空を()き尽くす。

 最大の一撃というより連射性を意識した攻撃ではあるが、それでも並の兵士とは比べ物にならない破壊力を秘めていた。


「すげぇ……」

「空が光ってる……?」


 黄金の光は改めて味方兵士を唖然としてしまう程の衝撃を周囲に拡散させる。

 戦術規模の中に戦略規模の存在が紛れ込んでいるのだから、むしろ自然な反応だろう。文字通り、戦いの次元が違う。


「……そうだな。今は戦う以外に道はない」


 “慟哭の刃雫マリシャス・ティアーズ”――周囲から喰らった魔力によって黒翼を生成。高度を上げると黒翼から漆黒の刃を無数に撃ち出し、アイリスの斬撃から逃れようとするガーゴイルを強襲する。

 今回は陣形も何も関係ない。ひたすら撃ちまくるだけということもあり、俺も攻撃に参加している。

 加えて新たな力に目覚めた影響か、魔眼の基礎出力自体も上がっていた。


「ぐおっ――ぉぉ!?」

「こっちも滅茶苦茶だ!?」


 戦場の空に爆炎の華が咲き誇る。

 数多くのガーゴイルが撃墜していく中、その最奥に一際大きな個体を発見した。


「アレか……」


 漆黒の波動を放射線状に振り撒き、一瞬で加速。

 空を駆ける先にいるのは、群れを率いる上位種――“ゼロンガーゴイル・フォルツァ”。

 他の連中と比べて見るからにゴツい体躯をしており、空中での動きも別次元。接近する俺に気づくと、巨大な鉤爪を差し向けて来た。


「お望みの接近戦だ。お互いにな」

「■、■■■■!!」


 “デュランダル”と鉤爪が交錯する。

 ガーゴイルの戦闘手法は、上方からの奇襲と近接格闘戦。目前の上位種ともなれば、息吹(ブレス)の一つや二つ放ってきそうではあるが、基本は変わらないはず。

 対するこちらは言うまでもない。近接格闘は、むしろ望むところ。


「■■、■!?」


 急反転からの高速機動で攪乱(かくらん)

 聖剣に漆黒を纏わせながら振り上げれば、奴の右腕を割断する。

 普通の相手であれば致命傷だが、流石に上位種のモンスター。腕を失いながらも、即座に巨爪を薙いで反撃を繰り出して来た。

 だが最早脅威足り得ない。腕の軌道に回り込む形で回避し、奴の左肘に掌で触れる。


「終わりだ……!」


 “天柩穿つ叛逆の剣リベリオン・ヴルガータ”――奴の左腕を喰らい尽くし、力を糧とした“デュランダル”が膨大な漆黒を纏った瞬間に一閃。

 赤褐色の竜人を真っ二つに破断した。

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