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第133話 幕間:少女の困惑

 ある日の朝――。


 先日、武器庫に忍び込んだカールナイツの少女――アサレア・ハインツは、再び部屋を抜け出し、ニヴルヘイムの街を彷徨(さまよ)い歩いていた。


 因みに彼女の現状としては、先の一件にてカールナイツの実質的指導者――エディス・シュバインから大目玉を食らっていたのは言うまでもない。とはいえ、そんな彼らの必死の懇願と彼女自身の心境や境遇、ヴァン・ユグドラシルらが未然に防止した事が相まって、ニヴルヘイム側から情状酌量の余地ありと認められ、温情ではあったがお咎めなしとなっていた。


 では何故そんな彼女が外部を出歩けているのかと言えば、軍の管理下にあるカールナイツでも正規の許可さえ取れば、ある程度の自由行動が認められているからだ。


 とはいえ、討ち延びて来たということで、アサレアたちの懐事情は厳しい。よって、今のカールナイツは、ヴァンの言う通り国民の血税で生活しているも同然であり、周囲からの目は少なからず厳しいものがあるのは言うまでもない。

 だが、人を隠すなら人の中。

 少人数での行動であれば、多少の融通は利くということだ。


「ニヴルヘイム皇国……か」


 少女――アサレアは、初めての街並みを(まぶた)に焼き付ける様に周囲を見回す。田舎者丸出しの立ち回りで周囲から多少浮いてしまっているのはご愛敬だが、雑踏が織りなす騒めきによって、その辺りは掻き消されている。

 無論、先の一件で心象が悪い中、わざわざ外出した理由はショッピングやデートの為ではなく――。


「あんなに偉そうなこと言って……私は……」


 もし武器庫でのやり取りの中、復讐など止めろと諭されていたら、彼女は現在進行形で言い知れぬ感情に襲われることはなかっただろう。アサレアとしても、自分の復讐に道理が通っていないというのは、心のどこかで理解していた。

 止められたのならそれまで。

 止められなかったのなら、誰に気付かれることもなく出奔して何処(どこ)とも知れぬ地で果てる。


 彼女が望んでいた未来は、そのどちらか。


 要は何もしない自分が許せなかった。

 だから、せめてもの意地として、頑張ったから駄目だった――その行動の結果が欲しかった。停滞して動かない自分が許せなかったのだ

 つまり完全な自己満足であり、破滅願望。


「まずは情報収集。どうせやることなんてないんだし!」


 アサレア自身、周りが被る不幸に関して思考から抜け落ちていたのは不徳の致すところと恥じているが、自棄(やけ)を起こしたのも強い葛藤の果ての結果。アンドラスへの怒り自体が消えたわけではない。

 故にまずは知ることからだと、ニヴルヘイムの街へと繰り出していた。


「どうして、あんな……」


 あの武器庫での一件、どちらに非があるのかは考えるまでもないだろう。

 実際、さっさとアサレアを捕らえれば、あんな会話を繰り広げる必要はなかった。正論で論破することだって容易だったはずだ。

 だが武器庫で相対した銀髪の少年は、アサレアのことを肯定も否定もしなかった。


 黒か白か、正しいか間違っているかで上から押さえ付ければ、全て終わったはずなのに。


 彼の真紅の瞳が見据えていた景色が分からない。

 そう、分からないのだ。


「ぬおおおお――おォォッッ!?!? シェーレちゃん、それ激しすぎィ!?」


 だが次の瞬間、考え込んでいたアサレアの目の前で見覚えのある巨体が舞う。

 これまた見覚えのある少女にぶん投げられ、特徴的なリーゼントを風圧でへし折りながら――。


「え……はっ? え……?」


 理解が追い付かない。

 そう、分からないのだ。


「警護中、どさくさ紛れに私の体に触ろうとした罰です」


 シェーレは落ちた巨体に向け、ゴミを見るかのような視線を向ける。昨日からは想像もつかない冷たい眼差しだ。

 しかし、そんな異常な光景を前に固まっているのは、アサレアだけ。


「あら、今日は一段と豪快だねぇ。流石、力持ち!」

「アタシも若い頃は……」


 警護されている者どころか、住民までもグレイブが吹き飛んだことを当然のように受け入れて日常生活を送っていた。


「ぬああああぁぁぁっ!?!? なんで僕までェ!?」

「男のドジっ子なんて流行らないわよ。非がなくても、セクハラだから!」


 更に直後、つんのめったリアンがコーデリアの胸元にダイブしかけた結果、思い切り蹴っ飛ばされて宙を舞う。潰れたような声を出して、グレイブの隣へと崩れ落ちていった。


「は、え……? ええ、っ!?」


 これまた微笑ましい物を見るかのような住民を前にアサレアは更に全身を強張らせる。

 彼女の心中に去来するのは、もしかしたら自分はとんでもないところに来てしまったのではないかという焦燥。アサレアは看板の影で半泣きになりながら頭を抱えてしまう。


「――!」


 だが聞き覚えのある声に釣られて再び顔を挙げれば、待ち人来たれり――とばかりに、白銀の少年と蒼銀の少女、白竜の姿が視界に飛び込んで来た。

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