第125話 互いの変化
ニヴルヘイム帰還から翌日――旅の疲れが癒えたとは言い難いものの、主要高官を集めて改めて互いが得た情報の交換、共有を行っていた。
ニヴルヘイム側に関しては、旅立つ前に敷いていたセラ抜きの体制が機能し、ニーズヘッグの尽力もあって、いつも通りの日々を過ごせていたそうだ。ここまではシェーレから聞いた通り。
それと聖冥教団の一件に関しては、今も被害者へのケアに当たっており、洗脳されたままだった大多数を正常に戻すことができているとのこと。
当時からやり過ぎて収容された者もいたし、未だにアルバート・ロエル――というより、自分が正義の使徒であると喚いている者もいて全員元通りといかないのは、何とも言えない話ではあるが、それでも驚異的な復興ぶりだろう。
街の復興だけではなく、色々とやってくれていたということだ。
「――! ――!」
「ふふっ、貴女も頑張りましたね」
実際、会議中でもセラに擦り寄ったまま離れないニーズヘッグは別にしても、以前までのニヴルヘイムであれば、当時の現状維持プラスα程度に留まっていたはず。
頼る相手がいなくなったこと。
今度は見放されない様に、もしセラが戻って来た時に驚かせられる様に――先の二の舞にならない様にと、一致団結した結果ということなのだろう。
結果的にではあるが、就任当初からセラがいなくなったことがプラスに働いたというところか。
「全く頼もしいやら、頼もしくないのやら……」
「あはは……」
まあ連中からすれば、俺がいなかったことも大きな要因となったんだろう。こちらの理由は単純明快。冤罪を引っ掛けてしまった俺に気を使わなくて済むから。
本当に遺伝子単位のレベルで団体行動に向いていないのだと、思わず自分に呆れてしまう。実際、ミュルクでもレジスタンスからも嫌われていたわけだし。
まあ逆を言えば、寄って来るのは一癖も二癖もあるというか、ヤバい連中しかいないとも取れるわけだが――。
「我々も頑張ったし、竜神様の様にアレをやって下さるのだろうか?」
「打ち首が関の山では?」
「いや、セラフィーナ陛下の胸に溺れられるなら打ち首も止む無し」
「私はソフィア殿下が……」
いや、一般人が常識人は、訂正するべきか。
高官だけではなく、全方位に対して説教が必要だ。
ただこんな連中でも、バイザーを付けた一八禁エルフお姉さんや底知れぬダークエルフ侍女騎士を筆頭に、戦闘狂のトンデモ巨人王、よく分からない組織のヤバい連中と比べれば、キャラが薄くなってしまうのは如何なものなのだろうか。
思わず頭を抱えたくなってしまったのも自然な反応だろう。
そうして、いよいよ本題。
「ひ、姫ぇぅ!?」
「おいおい、いくら上官っても、男に倒れ込まれても嬉しくねぇぜ!」
旅の中で起こったこと、勝手に決めてしまったことを伝えたわけだが、オーダー卿を筆頭に文字通り開いた口が塞がらない――というより、一部の連中は、本当に顎が外れるほどの驚きを見せていた。
「紆余曲折はありましたが、こうして無事だったのですから……」
「そういう問題ではありませんぞ! 一体、どんな無茶を……いや、無茶とかそういう次元の話ではありませぬ!」
連中にも大局に関することは薄っすらと伝わっているはずだし、三国同盟が締結された辺りの情報は間違いなく知っているはず。
とはいえ、元敵国であるアースガルズに赴いてみれば、“ミズガルズ動乱”に巻き込まれ、名を偽って潜入したミュルクでは、現地抗争が勃発。街一個が吹き飛びかねない爆炎に呑み込まれた。
挙句の果てがニヴルヘイム本国に伝えることなくアルフヘイムへと赴き、敵対し合っていたズヴァルトアルフヘイムとも共闘。ヨトゥンヘイム軍とぶつかるどころか、世界最強の戦士と死闘を繰り広げ、要所では“神断の罪杯”と名乗る組織と相対していた――などと、伝えられる側も困るというか、ドン引きして然るべきという鮮烈な日々を送っていたわけだ。
自国の新たな皇帝が、いつ死んでもおかしくないような事件にポンポンと巻き込まれていたと事後報告された彼らの心情は押して図るべき。
加えて、“神断の罪杯”がアースガルズとの戦争の裏で暗躍していたことと、強力な魔眼保持者の存在。
今は俺が持つ“デュランダル”とアイリスに一時返還された“プルトガング”。
更には四国同盟となりましたと、素知らぬ顔で伝えられたのだから、驚かない理由がないということ。
そんな国家を揺るがしかねない闘いに参加できなかったことを憤る者。
完全に処理落ちして頭から蒸気を噴出している者。
今にも気絶しそうな者など反応は様々だが、セラの腕の中でご満悦そうなニーズヘッグだけが唯一の癒しというところか。
「――! ――!」
「そんなに動いては、擽ったいですよ」
「あらあら、大変だったのねぇ」
まあ、先皇も頭を抱えるこの状況ですらマイペースを貫いる辺り、ニヴルヘイム姉妹は少々肝が据わりすぎているような気もするが――。
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