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第124話 帰還と再会

 ――ニヴルヘイム皇国首都・フヴェルゲルミル。


 長いようで短かった旅を終え、既に宮殿へと戻って来ている。

 そんな俺たちの前には、最早懐かしく感じる光景が広がっていた。


 濃ゆいリーゼント大男に清楚系露出狂とその他女子二人。

 真面目系女子に空回り系男子。

 ニコニコと笑っている紅銀の皇女。


 そして――。


「――!」


 勢いよくセラの胸に飛び込んで、ヒシっと抱き着いている白の竜皇。

 神話ハイスペックの無駄使いとも称せる神速突撃に呆れるべきか、全く動じないセラに感心するべきなのか――。

 久々の再会となったが、それぞれがごく自然にかつての定位置へと収まっていた。


「ふふっ、今日は甘えん坊さんですね」

「――!!」


 因みにセラが微動だしなかった理由は、胸元で衝撃を吸収する巨大な物体が自己主張していたから。

 それも現在進行形でニーズヘッグがグリグリと頭を押し付けている為、その動きに合わせて文字通り胸が弾んでいる。


「これは……」

「バブみを感じざるを得ませんな」


 頬を染めて前屈みになっている高官連中をぶん殴りたい気持ちに駆られなくもないが、当のセラも十代半ばの女子が出せる艶やかさじゃないというのは事実。

 まあ、どちらにも非はないし、ギリギリセーフとしておくべきか。


「それにしても、あまり変わった様子はないみたいだな」

「うん、勢揃いって感じだけど……」


 アイリスが言う通り、こちらの旅は世界情勢の混乱に抗いながらの激戦の連続だった。

 何度も死にかけただとか、新たな出会いが多くあっただとか、連中に伝えたり、自分たちで整理したりと、やらなければならないことが多くあるわけだが――それにしても、出迎えに来た面々は、代わり映えが無さ過ぎる。

 よく言えば平和、悪く言えば呑気。

 これまでの緊張感溢れる旅の日々と比べると、あまりにも対照的だった。


 そうしてセラが出迎えを受けている中、アイリスと共に輪の中から外れていると見覚えのある面々が近づいて来る。


「いやー、旦那たちもお変わりないようで!」

「まあ、そう見えるだろうな。見たままだけなら……」

「ん、どういうことなの? というか、二人ともその剣は……」


 セラを除けば、この国においてはかなり古い付き合いになる二人――グレイブとコーデリアが開口一番、言葉を紡いだ。

 グレイブは少しばかりリーゼントが巨大化、コーデリアは僅かに髪が短くなっているという違いはあるが、それ以上に変化した俺たちを見て首を傾げる。


 当然、視線の先にあるのは、アイリスの“プルトガング”と俺の“デュランダル”。


 前者は直接本物を見たことがあるはずだし、アイリスが手放したことも知りえている。

 後者に関しても、このクラスの実力者であれば、相当な業物であることは理解できてしまうのだろう。少なくともその辺で拾ったにしては物騒すぎるし、“レーヴァテイン”と並んで遜色ないとあって、大方の予測はついてしまうということ。


「詳しいことは後で話す」

「そうだね。というか、私じゃ順立てて説明できる気がしないんだけど。情報量が多過ぎて……」


 (もっと)も、俺の中身にはそれ以上の変化が起こっているわけだが、詳細を伝えるのはもう少し後の話になるだろう。

 その理由は、俺が“禁忌魔眼・解放スペリオル・エクシード”を制御できていないから。


 どの道、強い敵がいるということ以外は連中が知っていてもどうにもならないし、他国との同盟やこれまで関わって来た様々な戦い、世界情勢の方が重要問題であるはず。

 現にアルフヘイム王国からの親書が届いており、正式に四国同盟が締結されることは決定している。タイミング良く俺たちの帰還に合わせての一報だった為、ニヴルヘイムに残っていた連中が知る由もないのだから、情報過多もいいところだろう。


「世界情勢がごちゃごちゃしているのは、何となく伝わっていると思うが……よくこんな呑気してられるな。出迎えパーティーを急造で開くなんて……」

「うん、それに元宰相の一件で燃えちゃった街もすっかり元通りだし……」


 それはそれとしても、ヨトゥンヘイムに別動隊がいた可能性や非同盟国の襲来、元から急増していたモンスター被害、アルバートの一件からの立ち直りなど、残った連中からしても問題は山積みだったはず。

 だがパッと見では、大した被害を負っているようには見えないし、少なくとも主要メンバーは全員無事。それどころか街並みまでも、以前の繁栄を取り戻していた。

 嬉しい事態には変わりないが、逆の意味で首を傾げざるを得ない。


「いえ、相変わらず忙しい日々ではあったのですが……」


 そんな中、シェーレが背後を振り向けば、視線の先にはニーズヘッグの姿。

 出迎え挨拶を終え、ソフィア殿下と共にこちらに歩いて来るセラの腕の中に納まり、むふーっと、何やら得意げにふんぞり返っていた。


「強力なモンスターへの対処は、あの子が頑張ってくれました。それと国家間干渉に発展しそうな揉め事はありませんでしたので、事件復興にも力を注げたわけで……」


 シェーレの口ぶりからして、ニーズヘッグがいなければ、相当厳しい状況だったのは明らか。結果的に戦力を二つに分けたのは、大正解だったわけだ。

 死にかけながら戦った甲斐があったと、改めて認識した瞬間だった。

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