第112話 黒の妖精と巨人族
――スヴァルトアルフヘイム国境線内側・フィリア荒野。
尖った耳を持つ二つの勢力と巨人たちが既に激しく火花を散らしていた。
そこは正しく、泥沼の交戦地帯。
俺たちの想定した最悪の形で、既に戦争の火蓋は切って落とされている。
「アルフヘイム軍までも含めた三勢力入り乱れる前面衝突……全く血の気があり過ぎですね」
「ああ、あのまま放っておけば、どちらかが絶滅しかねない。それにしても、アレが……」
ダークエルフに関しては、正しく想像通り。それほどの驚きはなかった。
近隣領土の危機を察してか、宣戦布告をされたからか、既に迎撃に当たっている白いエルフ――アルフヘイム軍に関しても同様。
でも巨人族は別だ。
俺たちよりも一回りぐらい大きな者から、全身を見るのに少々手間がかかるぐらい巨大な者まで揃っている。連中は他のモンスターと違って、俺たちと同じ人型種族なのだから、スケール感の違いに驚きを隠せないでいた。
「血の気があり過ぎっていうか、ちょっと脳筋過ぎない!?」
「人間にしろ、エルフにしろ、やはり我らとは強度そのものが違う。数が少ないとはいえ、単一で上位種のモンスターと張り合えるほどと考えれば、破格の戦闘能力だな。実情は目の前に広がっている通り……」
生物が戦うということにおいて、大きさと重さは強さの象徴。当然、重量の付け過ぎや魔法の様な例外はあるが、基本的にはデカくて重たい方が勝つ。
実際、巨人族は魔法文明に関して、最低か下から二番目であるとされているものの、ただ歩く、武器を振り回す――そんな単純な動作が、他の種族の魔法すら上回ってしまう。そこにブーストされるのだから、稚拙な魔法さえ、脅威足り得るということだ。
正しく戦うために生まれて来たと言っても過言じゃない。
「びっくりしてる場合じゃないわよ」
「とはいえ、この陣容では……」
「ちょっと癪だけど、お隣さんも援護しましょうか」
「良いのですか?」
「――味方になるわけじゃない。貸しを作るというところかしらね」
直後、紅桔梗の砲撃が飛翔し、一人の巨人を灼き払う。
エルフたちの魔力弾を肌や防具で弾いていた巨人が容易く倒れ伏したことにより、全ての視線が俺たちに注がれる。
「あれは、エゼルミア陛下!?」
「姿が見えないと思ってみれば……」
「む、陛下、だと? ほう、“妖精女王”自らの出陣とは……!」
三勢力三様の反応ではあるが、共通しているのは大きな驚愕。
それはエゼルミア陛下の名声が、他国にまで轟いていることを意味している。
一方、巨人たちは、最強の援軍の存在を受けたアルフヘイム陣営よりも大きな盛り上がりを見せていた。
「王自らの出陣! その心意気や良し!」
「我らも誇りを懸けて戦おうぞ!」
「かかれェっ!!」
いきなり総大将が前線に出て来た。
確かにエゼルミア陛下を討てば、アルフヘイム軍は瓦解する。戦略的に考えて、真っ先に頭を狙うのは定石の一つともいえるが――。
「皆で一斉突撃って、気合入り過ぎじゃない!? 仲間がやられたんだし、もっと作戦とか……」
「お国柄、そういうタイプじゃないんだろう。とはいえ、この混乱した状況では、敵も味方もあったもんじゃないな」
「ええ、向かって来る攻撃は全て斬り伏せるしかない。あの大きな方々を早急に退席させるとしましょう」
巨人族は味方がやられて、むしろ戦意が燃え上がっている。
アルフヘイム陣営も混乱から俺たち人間を味方と認識できないだろうし、ズヴァルトアルフヘイムに関しては敵国同然。ヨトゥンヘイムに関しては言うまでもない。
こちらから攻撃を仕掛けるかは別にしても、肩を並べているセラたち以外は全て敵と判断して行動するしかないということ。
結果、四勢力入り乱れての闘いが始まった。
「さて、行きましょうか! “天絶せし幻想の怒砲”――ッ!」
エゼルミア陛下の“テュールゲイルス”から紅桔梗の砲撃が放たれる。
遠距離こそが魔導師の真骨頂。先頭の巨人を強襲し、巨大な盾と激突した。
「ぬ、ぬううっ!?」
だが紫紺の光を纏って進化する砲撃は、鍔是り合う盾すらも容易く溶解させてしまい、推進力任せに巨人本体すらも灼き払った。
凄まじい威力に驚愕せざるを得ないが、まだ終わりじゃない。
「死にたくないなら、さっさと引っ込みなさい! お呼びじゃないのよ!」
桔梗連戟光。
次々と発射される砲撃が一発ずつ進化を繰り返し、巨人族を強襲していく。
「防御は無意味だ! 皆最速で突き進めッ!」
死の光と化した砲撃が瞬く中、地面を蹴り割る勢いで多くの巨体が迫り来る。怖いもの知らず、勇猛果敢という言葉がこれ以上合う状況もないだろう。
一方、巨人族の強さは大したものだが、近接一辺倒では芸がない。つまり距離が空いている以上、エゼルミア陛下との相性は最悪だということ。
加えて、こちらには近接格闘主体でありながら、強力な遠距離攻撃を持つ女がいる。
「では私たちも参りましょう」
「うん、とにかく巨人の人たちを追い払わないとだね」
“断罪の聖光”。
“黄昏渦巻く凍星”。
セラの十字斬撃とアイリスの断裂斬撃が凄まじい出力で飛翔し、剣士の領域外である遠距離であっても、威力の減衰を見せることはない。
そうして巨人族へと直撃。猛々しい爆炎の華を咲かせる。
「わざわざ相手の土俵に立つ必要もない。我らも行くぞッ!」
更にアムラスたちや対峙している両国も魔法の勢いを強めていき、三人の女傑に怯まされている巨人族を強襲。三人の嵐のような乱撃とエルフたちの波状攻撃で完全封殺状態にまで追い込んでいる。
闘いの定石――その究極は、相手の嫌がることを行うに等しい。
つまりいくら一人一人が強くて頑丈であっても、この状況では本来の力を発揮できないわけだ。
このまま何事もなければ、撃退は時間の問題だろう。
「さあ、戦線を押し返しなさい! 自分の国を守りたいのなら……!」
だが皆が頑張っている一方――俺は能力の性質上、どこかから力を喰らわなければ本領発揮は不可能に等しい。それに今は、一発でも多くの攻撃を放って相手を封殺することが先決であり、味方からの譲渡も好ましくない状況だろう。
何より、前線まで上がって出て好き勝手に動き回った結果、味方の攻撃を吸収でもして弾幕に隙を作った挙句、巨人族に突破されました――では笑い話にもならない。
端的に言ってしまえば――あれ、俺戦力外じゃね、と思いながら皆の奮戦を見守る他なかった。
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