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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第2章】目指せ! オフィーリア魔法学園本校
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2−27 勢いは超大事

「ミアちゃん、ランドル君! とにかく、下がって! ここは私に任せて!」

「はっ、はい!」


 さっきまでのスパルタ加減をかなぐり捨てて、アレイルが最前線へ躍り出る。きっと、弓では攻撃の通りが悪いと判断したのだろう。愛用のフレアノートを引っ込めると同時に、新たな武器を呼び出した。


「さぁて……これで、真っ二つにしてやるわ! 覚悟なさい!」


 アレイルに呼び出された途端に赤々と炎を放つのは、見るからに凶暴な印象の両刃斧。妖艶に火の粉を散らしながら、彼女が振るう度に周囲を光と熱とで包み込む。


(……アレイル先生って……本当に力持ちなんだなぁ……)


 圧倒的な熱量も異常ではあるが、何より驚嘆すべきは斧の大きさだろう。さして苦労している様子もなく、事もなげにアレイルが振り上げるが……既に、斧の全長が彼女の身長よりも長い。その上、左右対称の刃はアレイルの顔よりも大きく……とにかく、分厚い。


「グルァァァァッ!」


 しかし、魔物も負けてはいない。アレイルが放った渾身の一撃を容易く受け止めると、ヒョイと後ろへ飛び退く。そうしてすぐさま、野太い怒号と一緒に振り下ろされる剛腕の鉄拳。その衝撃は凄まじく、戦線から避難しているミアレット達の足元をグラグラと揺らし、ピシリと床を穿った。


「アレイル先生ッ!」

「くっ……! まだまだッ!」


 伊達に、本来は「ボスクラス」の魔物ではないということか。アレイルが足元に気を取られている隙に、強烈な追撃を放ってくるのだから、流石のアレイルも攻撃を受け流すのがやっとのようだ。


(何とかしなきゃ……! 何か……何か、使えるものはないかしら……!)


 想定外の苦戦を強いられているアレイルを手助けしようにも、ミアレットにできることはあまりない。片やランドルはしっかりと防御魔法を繰り出しては、サポートも続けているが……相手がパワフル過ぎて、折角の防御魔法も片っ端から破られていく。


(えぇと……! あの魔物に弱点は……ゔぅ。弱点もなさそうかぁ……)


・漆黒ショウジョウ:ゴリラに酷似した、大型の魔物。迷宮深度7以上にて出現を観測。非常に発達した剛腕は、全ての障害を薙ぎ払う。霊長類型の漆黒魔獣の最上位種であり、心迷宮の深度によっては漆黒霊獣としての出現も確認されている。


 突破口を見つけ出そうと、ミアレットは「心迷宮魔物図鑑」を起動してみるものの。画面に映し出されるのは相手が強力な魔物であるとまざまざと示した、あまりに無慈悲なものだった。そもそも、深度レベル5の階層にボスクラスの魔物がいる時点で、色々とおかしい。


(何か使えるもの……! 使えるものは……あっ、そうだ!)


 それでも、目の前にボスクラスの魔物がいる現実は変わらない。ミアレットはさっき、【アイテムボックス】に超大物の道具をしまい込んだことも思い出し、今度は【アイテムボックス】を起動する。使い方こそ、ミアレットには分からないが。魔法駆動車と言うからには、魔物を轢くくらいはできるかも知れない。


(でも……あれ? 私、こんなの拾ったっけ……?)


 しかし、改めて【アイテムボックス】に並ぶ項目を見やれば……ミアレットとしては、見覚えのない「あるモノ」がしっかり収められているのにも気付く。「魔法駆動車」の下には、「マジカル★ステッキ」なる項目が表示されていて……。


「……」

「ミアさん、どうしたっすか?」

「い、いえ……何でもありません。因みに、ランドルさんは魔法駆動車を運転できたりします?」

「あぁ……残念ですけど、俺は運転できないっす。魔法駆動車には、自動送迎と自由移動の2パターンがあるんですけど……どっちにしても、ここでは使えないっすね。自動送迎タイプは目的地を設定してないと動かないし、自由移動タイプは運転スキルがないと動かせないし」

「そうなんですか……」


 意外と、魔法駆動車は面倒な代物らしい。誰も運転できないともなれば、魔物を魔法駆動車で轢き殺すプランも採択できなさそうだ。かと言って、あの大物相手にラブリー箒の攻撃が通用するとも思えない。だとすると……。


(一か八か、これに賭けてみる……?)


 字面からしても、これはあの「魔法少女ステッキ」だろうか。ミアレットは「見なかった事」にして、置き去りにしたつもりだったが……まさか、こんな所に勝手に紛れ込んでいるなんて。しかしながら、そこまでしてアンジェレットが持たせてきたステッキなのだ。もしかしたら、「彼女の一押しアイテム」なのかも知れない。


「悩んでいる場合じゃないわ……! やってやろうじゃないの!」

「えっ? ミアさん……何をっすか?」


 何やら、突如やる気を出し始めたミアレットに、困惑気味のランドルだが。訝しげな彼にお構いなく、ミアレットは意を決して、「例のステッキ」を【アイテムボックス】から取り出す。すると……登場と同時に、自己主張も過剰にキンキラリンと輝きを振りまく「マジカル★ステッキ」を手に取ると。ミアレットはさも自然に、ノリノリでステッキを振りかざした。


「行っけぇぇぇ!」

「ちょ、ちょっと、ミアさんッ!」


 初めて手にしたとは思えない程に、滑らかかつ、馴染みのある握り心地。昔のピュアな自分を思い出しながら、ミアレットはステッキ任せに必殺技を繰り出した……!


「必殺! スターダスト・レインボー!」

「はいっ⁉︎」


 もう、どうにでもなれ。こうなったら、勢いは超大事。

 適当に必殺技っぽく叫んでみれば、ミアレットの悪ノリさえもなんのそのと、ステッキから七色の星がヒュンヒュンと飛んでいく。しかも、大量に放出された星は硬い物質でできている模様。見た目は魔法っぽい雰囲気なのに、ドスドスと音を立てては、物理的に刺さる、刺さる。はてさて……マジカルとは、一体。


「ぐっ……グギャギャ!」

「よっし、この調子で押し切るわよ! 次は……必殺! スターダスト・エターナルビィィィムッ!」


 子供の頃、こんな風に魔法少女ゴッコをしたっけなぁ。何となく、聞き覚えがありそうで、ないような必殺技名を叫べば。これまたミアレットのオーダーをすんなりと叶え、冗談抜きで強烈なビームを放つ「マジカル★ステッキ」。ドゴドゴと大袈裟な衝撃音と一緒に、漆黒ショウジョウの巨体さえもジリジリと後退させる。そして……。


「グギャァァッ⁉︎」


 通路の奥まで押し切ったところで、魔物の体が耐えきれなくなったらしい。ビームの幅分に、ポッカリと空いた穴を抱え……遂にドウと膝を着く、漆黒ショウジョウ。それでも、まだまだ消滅しないのを見ても、倒し切れてはいない。魔物は往生際悪く、鉄拳を床に打ち付け、グラグラと通路を揺らし始めた。そして……。


「えっ……?」

「うあッ⁉︎」


 ガタガタと大きく揺れたかと思えば、ガラガラと床が崩れ落ち、ミアレットとランドルはそのまま下方へと放り出されてしまう。落ちるついでに、下方を見やれば……そこは仄暗く光る苔に覆われた、剥き出しの大地が広がっていた。

【武具紹介】

・ヘルファイアラブリュス(炎属性/攻撃力+181、魔法攻撃力+22)

アレイルが所持する魔法武器。真紅の両刃を備えた、大型の斧。

刃・本体共に特殊鉱石・マグニスクロサイトを使用しており、素材由来の灼熱によって掠っただけでも火傷のステータス異常を与えることができる。

刃自体も非常に鋭いが、どちらかと言うと量最重量級の質量を生かし、叩き割るように相手を攻撃するのが正しい使い方である。


【補足】

・ステータス異常:「火傷」

火炎系の魔法効果によって、身体機能が損なわれるバッドステータス。

皮膚を焼かれ、深層まで組織障害を起こした状態であり、発生箇所によって様々な行動制限を余儀なくされる。

症状が進むと回復が叶わなくなるので、応急処置として氷結系の魔法で患部を冷やすか、即座に回復させるには、アイテム「クールペースト」を使う必要がある。


【道具紹介】

・クールペースト

バッドステータス「火傷」を回復するための、塗り薬。

魔界の永久凍土を砕いた粉末を配合しており、火傷を即座に改善させる優れた効能を持つが、製造方法が特殊なために高価な傾向がある。

非常に粘性が強いペースト状になっており、患部に塗ると湿布薬のようにピタリとくっつく。

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