8−28 足を引っ張らないのも、チームプレイ
「必殺! スターダスト・レインボー!」
嗚呼、今日も虹色の星(物理)が眩しい。薄暗い廊下を明るく照らす星型の弾丸が、ヒュンヒュンと軽やかに飛べば。素敵な決めポーズ(黒歴史一歩手前)の効果も相まって、ミアレットの気分は軽やかどころか、ズドンと重苦しく沈んでいく。
(うわぁぁぁん! アケーディア先生のバカァ‼︎)
魔物達も、流石に不意打ちの暴挙は想定していなかったろう。慌てて飛び立ち、ミアレット目がけて突進しようとするものの……もちろん、ミアレット(コズミックワンド)が彼らの猛攻を許すはずもなし。
「殲滅ッ! バーニング・ストリームぅ……」
新発見した必殺技も、おまけとばかりに渋々繰り出せば。絶好調をキープしたままのコズミックワンドはいとも容易く、ミアレットのオーダーを満たしてくる。素敵なステッキのホスピタリティは、現在進行形で過剰に抜群なのだった。
「一応、終わりましたぁ……」
散々、不本意な「キラキラポーズ」をキメさせられ、魔物を殲滅したミアレットが背後の2人に振り向けば。満足そうに頷くアケーディアの一方で……ステラが呆気に取られた顔で硬直している。
(あぁ、あの視線は明らかにイタい子を見る目だわぁ……。いや、そうでしょうね……そうでしょうとも)
きっと、驚きのあまり理解が追いついていないんだろうな。ミアレットはステラの表情に、居た堪れないものを感じていたが……。
「すっ、素晴らしい!」
「へっ?」
「素晴らしいですわ、ミア! あなた、振付師の才能もおありですのッ⁉︎」
「ふっ、振付師……?」
とても機械仕掛けとは思えない興奮を露わにしたかと思えば、ミアレットの手を取り、ブンブンと上下に揺らし始めるステラ。どうやら……ミアレットの「キラキラポーズ」はダンスのポージングか何かと、勘違いされた模様。「是非に、素敵なポーズを教えてくださいません?」と、嬉しそうに詰め寄る。
「いや、誤解ですってぇ……。このコズミックワンドなんですけど。それっぽいポーズを取らないと、必殺技を繰り出せないんですよ……」
「まぁ! それはそれで、素敵ですわ! いずれにしても、先程の洗練されたポーズはミアの考案なのでしょう?」
「あっ、ハイ。それは間違いないです……。とっても不本意ですけど……」
前向きに勘違いされたようで、ミアレットはますます頭が痛い。「あぁう〜」と呻きながら、額に手を遣り、チロリと元凶を見やれば。当の言い出しっぺは、堪え笑いに腹を抱えていた。
(もぅ! 誰のせいだと、思っているんですかー!)
いずれにしても、副学園長先生もご機嫌で何よりである。
「とにかく、この調子で進みましょう。ステラがいれば、罠は無効化もできるようですし……後はスムーズに攻略できそうですね」
「えぇ、お任せなさいな。私としても、早急に脱出したいですし」
まだまだ仲良しとまでは行かないにしても。共通の目標があれば、多少の不仲は受け流せるものらしい。しかも……。
「ステラ、お願いできますか!」
「もちろんですわ! 罠はしっかり、無効化しますから……あなたは魔物をサッサと処理してしまいなさいな!」
「言われなくとも、対処しますよ。特別に、僕の華麗な魔法を見せて差し上げましょう!」
(ワーォ……! ステラさん、やるぅ!)
売り言葉に買い言葉ではないけれど。何故か、絶妙なコンビネーションを見せつけつつ、アケーディアとステラがサクサクと快調に心迷宮を進んでいく。しかも、アケーディアに至っては本当に「華麗な魔法」を見せつけるつもりのようで、ポンポンと攻撃魔法を繰り出しながら、鮮やかに魔物を殲滅していくではないか。
(アケーディア先生って、意外と見栄っ張りなのかなぁ?)
生徒の前では、「疲れた」だの「気が乗らない」だのと駄々をこねたりもしたが。ライバル意識を刺激されれば、やる気も出る模様。この調子であれば……ミアレットが余計な精神汚染を被る必要もなさそうか。
(なんか、楽させてもらっちゃってるけど……。それはさておき。やっぱり、ステラさんの言葉がちょいちょい、聞き覚えがあるのよね……)
状況を窺いつつも、ミアレットはステラの言語がどこから来たものなのかについて、思いを巡らせていた。
生前は事務職であったため、ミアレットはプログラミングには詳しくなかったが。それなりにパソコンはポチポチしていたため、起動やら、強制シャットダウンやらの意味くらいは分かる。そして、機神語のルーツに「日本」を感じては、関連性があるのではないかと勘繰ってしまう。
(私が転生した時には、既にローレライは無くなっているって、習ったわよね? だとすると……)
ローレライの根幹がもし、健在ならば。今はその性質をグラディウスが引き継いでいると考えていいだろうか。
「ミアレット、どうしました? いつになく、難しい顔をして」
「あっ、すみません。ちょっと、考え事をしてました!」
「……あまり感心しませんね? 僕とステラが、身を粉にして道を切り開いているというのに」
「いやいや、私が出て行っていい感じじゃなかったじゃないですかぁ。足を引っ張らないのも、チームプレイだと思いますよ?」
妙な言い訳ではあるが。実際問題、ミアレットが出て行ったところで、足手まといになるのは目に見えている。上の空だったのは、申し訳ない限りだが。ミアレットは何も間違ったことは言っていない……はず。
「……まぁ、いいでしょう。とにかく、それらしい場所に出ましたから……気を引き締めなさい」
「それらしい場所……あっ、そういうことですかぁ……」
2人の背中を見つめている間に、どうやら「それらしい場所」……つまりは大ボスの元にたどり着いてしまったらしい。背景が寂れた洋館なのは、変わっていないが。アケーディアがクイと顎で示す先を見つめれば。……そこには天使を模しているのか、背中に金属の翼をくっつけた、いかにもな雰囲気を醸し出す機械人形が鎮座していた。




