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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第8章】魔法武闘会、ついに開催です
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8−21 不可思議を通り越して、超常現象

「さぁて……君には、お仕置きが必要なようですね? 授業中によそ見をする悪い子は、木っ端微塵に吹き飛んでおしまいなさいッ!」


 あぁ、無情かな。別方向にキレ散らかした副学園長先生は、魔物と生徒の区別すらつかない模様。授業にカウントして良いのかも分からない、課外学習(心迷宮攻略)で荒れ狂い、手元の武器を思う存分に暴れさせる。その瞬間に迸るのは、未だかつてない空間の振動と爆音だった。


「ギャァァァッ⁉︎」


 そんな状況で、か弱い人の子にできることと言えば、絶叫と一緒に廃墟が崩壊しないことを祈る事くらい。イヤーマフをグッと耳に押し当て、ギュッと目を瞑り。ミアレットは体を丸めて蹲ることしかできない。


(死にたくない、死にたくないッ! こんな所でゲームオーバーなんて、絶対に嫌ぁッ!)


 KingMou様のライブに行くまでは、死んでも死に切れない。ここで死んだら、アケーディアの枕元に化けて出てやるんだから。

 その想いが通じたーーワケではないにしても、音と光の暴力が収束したところで、恐る恐る目を開ければ。……そこには更に倒壊度が増した、廃墟の残骸が山のように積み上がっていた。


(グリフォンは……あぁ、流石にさっきのは耐えきれなかったかぁ。それに……アハハ、今度は天井ごと逝っちゃったのね……)


 あぁ、無常かな。副学園長先生は宣言通り、魔物を木っ端微塵に吹き飛ばし遊ばした模様。更に散らかりまくった廃墟は天井さえも失い、間抜けな大穴からどんよりとした空が覗くことを許している。蜂の巣状の壁は今にも崩れそうだし、建造物として持ち堪えているのは不可思議を通り越して、超常現象ですらある。


「ふぅ〜……こんなもんですか? 低威力に抑えたのですから、感謝してほしいですね」

(嘘ぉ……これで、低威力なんです……?)


 そそくさと物騒な重火器を固有空間に戻しながら、アケーディアが堆く積もる残骸をスタスタと乗り越えていく。しかし……よくもまぁまぁ、こんなにも悪い足場をヒョイヒョイと進めること、進めること。あまりの足元の悪さに、ミアレットは彼の後に付いていくのもやっとである。


「何をしているのです、ミアレット! 行きますよ!」

「うわぁぁん、待ってくださいよぉ……!(アケーディア先生、バランス感覚もどうなっているのよぅ……!)」


 華奢な見た目からは想像もできないしっかりとした歩みと、人離れした跳躍。人は見かけによらないと、よく言うけれど。……ここまでその言葉を体現する相手は、そういやしないのではないかとミアレットは呆れ返っていた。


「ところで、ミアレット。隠し部屋がある落とし穴は、ここで合ってます?」

「あっ、はい。一番奥の、角に面した部分です」

「そう。しかし……やれやれ。こうも泥臭く調査をしなければいけないなんて、面倒ですねぇ。本当は現実世界側で一気に済ませられれば、よかったんですけど」

「えぇと、それってどういう事です?」


 一際大きな瓦礫を苛立ち紛れに蹴り倒しながら、アケーディアがため息混じりで語る事によると。先程、彼が利用したガトリングガン、正式名称・トワイライトアヴェンジャーは深魔討伐用の魔法武器なのだとか。そして、その最大の特徴は心迷宮に入り込まずとも、深魔に対処できる事なのだそうで。……深魔を魂ごと消滅させられるらしい。


「しかし、それではモリリンは助けられませんからね。深魔に成り下がるような相手は救う価値もないと思うのですけれど……ナルシェラ君にも頼まれてしまいましたし。モリリンのせいで観察対象に嫌われるのは、避けたいところです」


 ……つまりは、そういう事である。ナルシェラのお願いがなかったらば、冗談抜きで副学園長先生はモリリンを「深魔として討伐」するつもりだったのだろう。ナルシェラからどんなお願いがあったのかは、ミアレットは知らないものの。あの優しすぎる王子様の事。きっと、モリリン(とお家)の窮地に心を痛めていたに違いない。


「えぇと、それじゃぁ……心迷宮内でさっきの武器を使うのは、問題ないんです?」

「ギミック破壊や、一般モンスターの討伐程度であれば、問題ありません。しかし、漆黒霊獣相手に使うと、宿主の魂も傷つくかも知れませんし……はぁ。仕方ありません、ボス相手には差し控えておきましょうか。非常に面倒ですけれど」


 ……さっきのグリフォンも、十分にボスっぽいと思うのだけれど。漆黒霊獣が真のボスとするならば、中ボスといったところなのだろう。アケーディア的には、危なっかしい武器の使用もセーフ判定になるらしい。


(とりあえず、この後はあんなに怖い思いをしなくて済むかなぁ……。あぁ、でも。大ボスは残っているんだよなぁ)


 グリフォンの攻撃よりも、副学園長先生の暴走が恐ろしいだなんて。先程の解説からするに、漆黒霊獣相手にはっちゃける可能性は低いようだが……他の手段でファイヤーする可能性もゼロではないし、アケーディアの魔法特化型は嘘だったと分かった今、不安要素も瓦礫の山の如く積まれたままである。


(それにしても……この耳当て、触っているだけで落ち着くわぁ……。あっ。でも、返さないといけないかしら?)


 アケーディア(ロバ)と同じく、フカフカの毛に覆われた飾り耳は、手触りも抜群。モフと爽やかな香りによる、セラピー効果もバッチリである。そんなイヤーマフを少々手放し難いと思いつつ、借り物である以上、アケーディアに返却すべしと声を掛けるミアレットだったが。


「それはそのまま、持っていていいですよ。記念にどうぞ」

「えっ? これ……多分、貴重な魔法道具ですよね? いいんですか?」

「構いません。あぁ、因みに。そのイヤーマフは魔力接続にも対応していましてね。魔術師帳側から接続先として検索すれば、音響再生装置としても利用できます」

「そ、そうですか? それじゃぁ、お言葉に甘えて……」


 凶悪な武器用で渡されたブツなので、記念にするにしても、妙な思い出が残りそうだが。アケーディアの解説からするに、モフモフイヤーマフはワイヤレスヘッドフォンとして利用できる……という事らしい。外観のプリティさはともかく、魔力式の電源いらずなため、なかなかに便利そうだ。


「そうそう……先週から、音楽アプリケーションも展開されていまして。ストアページから是非にダウンロードしてみてください。集中力を高める効果もあるので、オススメです」

「あっ、アケーディア先生、音楽聴くんですね?」

「まぁ、それなりに。基本的には古典音楽が好きですが、妖精族の民族音楽も捨て難い」


 しかも、これまた耳寄りな情報である。ミアレットも音楽は大好きである。それこそ、最大のモチベーションは推しのライブに行くという、音楽に関わる事なのだから、興味がないはずもなし。アケーディアもオススメだと言っているし、後でアプリケーションをダウンロードしておこうと思うものの……ふと、妙なことに気付いてしまう、ミアレット。


「えぇと……それってつまり、アケーディア先生もこのイヤーマフで音楽を聴いているんです?」

「えぇ、そうですよ。このイヤーマフは防音性もバッチリなので、没入感も最高でしてね。寝食を忘れるくらいには、研究ついでに聴き込んでいますよ」


 それ、ガッツリハマっているじゃないですか。ロバ耳をつけて、何をやっているんですか。しかも、寝食を忘れるともなれば……軽く生命の危機なのでは?


(アケーディア先生、こういう所は本当にブレないなぁ。まぁ、悪魔は基本的に食事は必要ないって、聞いてたし。大丈夫なんだろうけど……)


 しかし、音楽を聴き込むついでにどんな研究をしているのだろう。ロバ耳をつけて研究に没頭するアケーディアを想像しては、やっぱり心の中で乾いた笑いを漏らしてしまうミアレット。彼女の中では、意外なアグレッシブさを発揮する副学園長先生のイメージが、マッドサイエンティストとして完璧に定着しつつある。

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