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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第8章】魔法武闘会、ついに開催です
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8−17 余計なホスピタリティ

 頭上に敵襲を確認、速やかに「素敵なステッキ」で臨戦態勢を取られたし。しかし、アケーディアからのご無体なご命令に素直に応じられる程、ミアレットは凶暴路線脱却を諦めていない。悪あがきとばかりに、使える限りの攻撃魔法を繰り出してみるが……。


(ヴっ……魔法はやっぱり、当たらないか……!)


 小憎たらしいことに、鳥の魔物はミアレットを嘲笑うかのように、ヒョイヒョイと攻撃魔法を避けてくる。ショット系の攻撃魔法がダメならば、範囲攻撃に長けているエアリアルダストやサンダーライトニングを使えばいいのだろう。しかし、まだまだ使い慣れていない中級魔法を連発できる程、ミアレットは非凡ではない。


「ヒャぁ⁉︎」

「何をしているのです、ミアレット! サッサと、あれらを駆逐してください!」


 だから、凶暴度が上がる武器は使いたくないんですって!

 声ならぬ抵抗をしてみたところで、戦況が変わるわけでもなし。魔物達には当然ながら、遠慮というものは存在しない。髪やら、衣服やら、尻尾やら。手当たり次第に啄まれ、鋭い嘴で突かれたならば……もうもう、魔法の詠唱どころではなかった。


(うぁぁぁ……! こうなったら、やってやろうじゃないのッ!)


 徒党を組んで襲いかかってくる魔物の攻撃に、雑多な理不尽さもブレンドさせたらば。もう、感情任せにやるっきゃないと……結局、ミアレットはノリノリにならざるを得なかった。


「くっ……必殺ッ! スターダスト・レインボーッ!」


 白馬ならぬ、黒驢馬の馬上にて。今日も眩い七色の星(物理攻撃)が豪快に飛んでいく。ズバズバッ! ドゴドゴドゴ……! いつもながらに、マジカルとは程遠い野太い効果音が木霊すれば、気持ちがいい程に魔物達の数が減っていく。しかして、お熱い決めポーズとは裏腹に……ミアレットの心は冷えに冷え切っていた。


「クアッ!」

「キュイッ! キュキュキュッ!」

「まっ、まだ、来るつもり……? だったら、次は! 殲滅ッ! バーニング・ストリームッ!」


 やっぱり、勢いは超大事。なんとなく、新しい必殺技名を叫んでみれば……コズミックワンドは凶暴性だけではなく、余計なホスピタリティも搭載している模様。「もしかしたら不発かも」なんてミアレットの予想(期待)を軽く裏切り、ズババっと大袈裟な光線を迸らせてくれちゃったりする。


(う、嘘ぉ〜……これ、対応してくる? 悪ノリに対応しちゃうの、これ⁉︎)


 見た目はマジカル、効果音はフィジカル。ミアレットの行き当たりばったりな勢いさえも、素直に飲み込んで。物理攻撃が何よりも得意なコズミックワンドは、今日も絶好調なのだった。


「……」


 冗談抜きで、殲滅しちゃったし。鳥の魔物を1羽残らず、叩き落としちゃったし。

 右手に握られた、見た目だけは魔法少女っぽいステッキをじっとりと睨みながら。ミアレットはアケーディアの背中でトホホと肩を落とす。


「ミアレットを連れてきたのは正解でしたね。この調子で頼みますよ」

「……はーい、頑張りまぁす……」


 一方の副学園長先生は、パカパカと足を休めることなく、満足げにそんな事をおっしゃってくださる。正解も何も、巻き込まないでほしい……が本音なのだが。実力主義者であると同時に効率主義者でもある彼に、ミアレットのご要望なんぞ、通じるはずもなかった。


「しかし、腐っても心迷宮は心迷宮ですね。……このまま走っていたところで、突破は難しそうですか」

「へっ?」

「おや、ミアレットは周囲の違和感に気づかないのですか? さっきから……同じ風景の中を走っているのですよ、僕達は」

「そ、そうだったのです?」


 草原を駆け抜けるだけであれば気楽であるが、ここは心迷宮……つまりはダンジョン内である。アケーディアによれば、どこまでも広がっていると見せかけて、同じ風景が繰り返されているとのこと。


「うーんと……アケーディア先生はどの辺りを見て、景色が繰り返されていると感じたんです?」

「畦道ですよ。僕がさっきから走っているこの道……一定区間で敷石のパターンが同じなんです。曲がっている箇所、端に詰まれているブロックの様子、そして……摩耗と凹み加減。ほら、ここに丸い窪みがあるでしょ?」

「あっ、本当ですね」

「……この丸い窪み、僕が見つけたのは6回目です」


 2〜3回くらいであれば、「偶然かな」で済むのだろうが。6回も同じ模様が浮かべば、流石に「おや?」と思うものらしい。蹄でチョンチョンと窪みをいじくっているアケーディアは可愛らしいが、今はロバの仕草にほっこりしている場合ではない。


(あぁ……ミランダさんの心迷宮もそんなパターンだったかも……?)


 確か、あの時は「残っている思い出がそれしかなかった」から、同じ部屋を再現し続けている……だったかと思う。そして、次のステージに進むために隠し通路を見つけた……というところまで思い出して、再び肩を落とすミアレット。これは要するに、今回もしっかりナビ代わりにされるということなのだろう。


「一応、ウィンドトーキングで抜け道がないか、確認しますぅ……」

「そうしてください。やはり、君は頼りになりますね。心迷宮の攻略もお手の物といったところですか?」

「いや、そこまでお手の物でもないんですけど……」


 またも渋々と、ミアレットがウィンドトーキングを展開すれば。しっかりと周囲の情報を拾った風が、ミアレットに怪しげな場所がないかを明確に知らせてくる。どうやら、道端に何気なく積んであるブロックは、何かの目印であるらしい。


「あっ、そこに積んであるブロックですけど……あの下に、何かあるみたいです」

「ふふ……上出来ですよ、ミアレット。それじゃ、早速調べてみましょう!」


 ミアレットの探測結果に、アケーディアは心なしか嬉しそうである。長い耳をピコピコと動かしながら、アケーディアがブロックの方へと向かっていく一方で、ミアレットはと言えば……。


(グハァッ⁉︎ アケーディア先生、これまためっちゃプリティなんですけど⁉︎ 何ですか、その仕草! 反則でしょ⁉︎)


 曲者だとばかり思っていた副学園長先生に、こんなプリティ要素があるなんて。しかも……。


「ミアレット、よくやりました! ここに隠しスイッチがありますので……押してみましょう!」

「いや、ちょっと待ってくださいよ、アケーディア先生。もうちょっと慎重に……」

「えいっ!」

「……あっ、もう押してるし……」


 興味本位で警戒心もなく、スイッチを押してしまう無邪気さまであるとなれば。今度は不安になってしまうミアレット。なぜなら……。


(モリリンさんからすれば、私達は気に入らない相手になるはず……。だから、このスイッチは特殊ギミックじゃなくて……)


 罠かもしれない。そんな事に思い至ったのも束の間、アケーディアが蹄でスイッチを踏んだらば、いかにも怪しげな扉が畦道の中央に迫り上がってきた。


「進みますよ、ミアレット」

「えぇと……これ、進んで大丈夫なヤツです? 罠の可能性は?」

「あるかもしれませんね? ですが、それがどうしたと言うのです。罠だろうがなんだろうが、強引に突破すればいいだけのこと」

「うわぁ……」


 この副学園長先生、警戒心が根本から抜け落ちているらしい。いつの間にかいつもの姿に戻ったアケーディアが、意気揚々と扉の先へと進んでいくが。……変に勢いのある副学園長先生の姿に、ミアレットは不安を覚えずにはいられない。

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