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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第8章】魔法武闘会、ついに開催です
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8−14 副学園長先生の毒気

「僕は最初から言っていましたよね? 彼女達はナルシェラ君達からのお断りの言葉が欲しいようです……と。モリリン達の肩を持つ気はサラサラありません」


 確かに、そう言ってはいたけれども。モリリンの暴挙と、その結果については別の話ではなかろうか?

 副学園長先生の冷めた発言に、ナルシェラが不安を隠せない面持ちをしていると……バルドルを伸ばす手元は休めずに、アケーディアが本心を吐露し始める。


「第一、借り物の魔法道具に頼ろうとしている時点で、退学してもらっても構わないと思っていましたけどね」

「えっ? それはいくらなんでも、極端過ぎないですか?」

「そんな事はありませんよ。当学園では常に、努力と創意工夫をせよと生徒達に伝えています。それなのに、魔法道具に頼るつもりで、彼女達は魔法武器アリの企画書を提出してきたのです」


 魔法道具は確かに、魔力がなくとも誰でも利用できる。魔法武具の追加効果に関しては、その限りではないものの……余程にセンスがズレていない限りは、誰が使おうとも最低限の効果を発揮するのが、魔法道具の最大の強みだ。しかし、それが生徒本人の実力かと問われれば。違うというのが、副学園長先生の持論であるらしい。


「借り物の力を使って、たった1人の下級生をやり込めようとする精神性に、僕は甚だ辟易していましてね。モリリンを始め、彼女達の取り巻きメンバーは把握していますし、魔法武闘会の結果如何に関わらず、退学勧告を出す予定ではあったのです」

「でしたら……最初から、魔法武闘会を開催しなければよかったのでは? そんな意地悪をしなくても……」

「いいえ? こうでもしないと、彼女達は理解しないのでは? 都合のいい噂を流すのも、そう。その噂に流され、ありもしない栄光を夢見るのも、そう。魔術師にとって重要な素養は、努力と研鑽を継続できる勤勉さと、状況を的確に捉える慧眼です。それなのに、この浮かれ具合は何なんでしょうね? 我が魔法学園は、お見合い会場ではないんですよ」


 本当に馬鹿馬鹿しい。チラリとモニタで試合の様子を見ながら、アケーディアはフンと鼻を鳴らす。そうされて、ラディエルが困った顔をしているが……副学園長先生の毒気が天使達にも向いていることに、気づいたのだろう。小さく、「面目ありません」と呟いた。


「とは言え、試合内容については収穫もありそうなので、開催自体は全くの無駄ではありませんか。単に王妃の座を巡る、椅子取りゲームだとばかり思っていましたが。有望な生徒をピックアップできるのは、非常に喜ばしい。……ふむ。今回の戦闘データは、是非に参考にさせていただきましょう」


 開幕の挨拶でも、「内容に興味はあるが、誰が優勝するかはどうでもいい」と言ってもいたが。副学園長先生の研究者気質(マッド寄り)は前向きでブレないのだと、ナルシェラ達はちょっと慄いてしまう。


「いずれにしても、ご苦労様でした。この蛇やロッタについては、僕達の方で処理しますから大丈夫ですよ。モリリンについては……ま、本人の希望くらいは聞いてやってもいいですかね。学園に残りたいと言うのであれば、劣等生として居座るくらいは許してあげましょうか」

「ですが、それでは……」

「あぁ、ナルシェラ君の言いたい事は分かりますよ? 学園に残っているだけでは、根本的な解決にならないと。ですが、僕は根本的に解決する必要性をそもそも感じません」


 しかも、このドライさである。モリリンの必死さの背景を知っている手前、ナルシェラとしてはモリリンを助けてやりたいと思っていたが。この副学園長先生は彼女を切り捨てる方向に舵を切るつもりらしい。


(他に相談相手は……いないか。カテドナ殿やキュラータ殿も、副学園長先生に同調しそうだな……)


 特にカテドナはモリリン達を「目障りなハエ」と毛嫌いしていたし、ミアレット第一主義の彼女であればモリリンを真っ先に見捨てるに違いない。


(だけど、モリリン嬢達がここまで暴走してしまったのは、僕がしっかり断らなかったせいでもあるし……。やはり、このまま放っておくのは心苦しい……)


 魔力適性の培養研究をしているアケーディアは、本来は最高の相談相手ではあるだろう。それに、失われた魔力を復活させるという研究分野では、モリリンも恰好の観察対象になり得るだろうに。しかし、モリリンは思わぬところで副学園長先生の不興を買っていたようで、彼の研究対象からも外れている模様。


「……あのぅ、副学園長センセー」

「どうしました、ガラ君」

「モリリンを助けるのって、どうしてもできないっすか?」


 結局は、自分の身の振り方が悪かった。ナルシェラが内心で深く後悔していると、隣のガラから意外な声が上がる。どうやら、ガラは彼なりにナルシェラの沈痛な面持ちの意味を察したらしい。


「君からそんなお願いが出るなんて、思いもしませんでしたね。どうしました? モリリンに弱みでも握られましたか?」

「いや、そういう訳じゃないっすけど。……このままじゃ、ナルシェラ様達も居心地が悪いじゃないっすか。確かに、モリリンが魔力を失ったのは自業自得だと、俺も思うっすけど。事の発端にはちょっと関係してますし、ハイさようなら……なんて、綺麗に忘れられると思います?」


 ガラも正直なところ、モリリン(+取り巻き達)は苦手である。彼女達の勢いがよろし過ぎるあまり、苦労させられたのだから、いない方がいい相手でもあろう。だが、なんだかんだでナルシェラの気質を理解しているガラにしてみれば、このままでは罪悪感だけが残ってしまうというのも、予想の範疇な訳で。そうともなれば、従者としてはナルシェラの希望を通すのがスジだろうと、頑張って身振り手振りも加えて「ちょっとは助けてやってくださいよ」と訴える。


「はぁぁ……分かりました、分かりましたよ。非常に気乗りはしませんが、多少は前向きに検討しますか。ナルシェラ君とディアメロ君にだけは、こちらに通っていただきたいですし。モリリン如きのせいで、君達のような張り合いのある研究対象をみすみす失うのは、非常に惜しい」


 結局、そこに行き着くんだ。しかも、生徒に対して「モリリン如き」とまで言いよったぞ、この副学園長先生。

 アケーディアの行動パターンは、研究第一に偏り過ぎている。そんな現実を撒き散らしながら、深々とため息を吐く副学園長先生であったが。……「言い出したからには、責任くらいは取りましょう」と嘯くあたり、投げやりながらも約束は守ってくれそうだ。

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