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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第8章】魔法武闘会、ついに開催です
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8−8 好感度的にはアウト

 初陣を突破し、控室に戻ったミアレット。流石に「ちょっとお腹が空いたかも」と、遅れてやってきた食欲を「思い出のバゲットサンド」で程よく満たしつつ。モニターの中で奮戦しているモリリンを見守っている。しかし……。


(やっぱりモリリンさん、苦戦しているわね。相手が地属性なのに、魔法で押し負けているわ……)


 モニターの右上では、予想外の苦戦に焦っているモリリンの姿が映し出されていた。炎属性お得意の攻撃魔法を連発しても、思うように地属性の防御を突破できていない。攻撃魔法一辺倒の戦術からして、モリリンもウィザード気質の魔術師だと思われるが……搦め手に乏しいのか、補助魔法で防御魔法を崩す手段は持ち得ていないらしい。


(あの杖は、攻撃性能は微妙だってキュラータさんも言ってたわよね。それで、魔法攻撃力の底上げ効果はあるらしいけど……大元が削られていたら、上乗せボーナスがあっても意味がないのかも……)


 魔法武具の各種能力値ボーナスは、実は純粋な底上げと見せかけて……実際には、上昇値の算出方法が少しばかり特殊だったりする。

 このゴラニアでは、ゲーム脳あるあるな「ステータス」なんて個人情報は存在せず、流動的な魔力の性質に引っ張られてか、魔術師本人の状態で実数も変動する。そして、魔術師個人の魔力因子量とその覚醒率、延いては総魔力量が多ければ多い程、魔法武具による能力値の上昇幅も大きくなる。上手に魔力を扱える魔術師程、魔法武具の能力値ボーナスの恩恵を受け易くなっており、効果が今ひとつな魔法武具でも、持ち主によっては真価を発揮する事もあったりして……なかなかに、一筋縄では行かない設計になっている。


(魔法武器は自分に合ったものを選ぶこともそうだけど、魔力因子の覚醒率を上げるのも大事らしいのよね。この辺は、上級生なら習っていそうな気もするけど。モリリンさん、魔力因子が削られているのに気づいていないんだろうなぁ……)


 【魔法武器習熟度パラメータ】の開放と同時に、アプリケーションにくっ付いていた「豆知識」によれば。魔法武具はフィールドの魔力を取り込むことで、一定の効果を一律発揮できるが、それ以外にも魔術師自身の魔力で性能を底上げしたり、はたまた、魔法効果を乗せたりする事ができるらしい。

 現に、ミアレットがエアロブースターを発動した際には、ウィンドブルームは基本的な飛行性能に加えて、回避率を大幅に向上させている。この事からしても、魔法武具はただ持っているだけでも恩恵を受けられる反面、同じ武具を使っていても、使い手によっては性能が変わってくる側面もあるのだ。


(豆知識にしては、重要な内容な気がするけど……魔法学園って、こういうトコロは意外と放任チックなのよね。アケーディア先生の影響かしら?)


 果たして、きちんと「取扱説明書」やら「豆知識」等のコラムまで読み漁る生徒は、どのくらいいるのだろう。

 生前から取扱説明書はとりあえず読むタイプだったため、ミアレットはごくごく自然にそれらの文字列にも目を通しているものの。冒険心と好奇心の塊なお年頃とあっては、「まずは使ってみるべし!」と先走る生徒も多いに違いない。……きっとイグノだったらば、絶対に説明書の前にアプリ起動だろうなと、変な典型例を思い出して。ミアレットはついつい苦笑いしてしまった。


(いけない、いけない。今はイグノじゃなくて……モリリンさんだったわ)


 そんな事を訝しげに考えつつ、ピンチしかないモリリンの戦況に視線を戻せば。いよいよ対戦相手の武器による一撃で、脇腹を殴打され、彼女が苦悶の表情を浮かべているのが映し出される。


(わぁ……相手の武器、えげつないかも……)


 モリリンの対戦相手は女子生徒ではあるが。彼女の手元にあるのは、か弱さは微塵も感じられない、獰猛なフレイル。先端の鉄球もそれなりの重量がありそうだが、補助魔法もしっかりと駆使して、軽やかにモリリンを追い詰めていく。そして……。


(……勝敗が着いたみたいね。あんなに派手に吹っ飛ばされたら、普通の女の子が耐えられるはずないわ……)


 結局、モリリンは「いいトコなし」で惨敗を喫する羽目になった様子。駆け寄った天使様に傷は癒してもらえても、悔しさで歪んだ表情はなかなか戻らない。音声が小さく、モリリンがどんな言葉を紡いでいるのかは定かではないが……杖を叩きつけているのを見ても、ケーリュケイオンに八つ当たりしている雰囲気だけはありありと伝わってくる。


(武器のせいにしても、何も解決しないでしょうに……。そもそも、魔法武器に頼ろうって発想が間違っている気がするわ……)


 魔法武器は確かに、力と自信を与えてくれる素敵な道具には違いない。だが、【魔法武器習熟度パラメータ】の取扱説明書にもあった通り、無条件に力を授けてくれるなんて、ワンダフルな道具でもない。魔法武闘会を画策した時に、純粋な魔法勝負での企画で通せばよかったものを……きっと、モリリン達は言動とは裏腹に、自分の実力に自信がなかったのだろう。下級生を出し抜こうなんて狡い魂胆で、「魔法武器アリ」の企画書を投じたのが、そもそもの間違いだったのだ。


(まぁ、下級生は魔法武器を持っていないだろうって、思ったんだろうけど。それが透けて見える時点で、微妙なのよね……)


 仮に、実力はあったとしても。姑息さが感じられる時点で、好感度的にはアウトだろう。それでなくとも、モリリン(とその取り巻き達)は王子様達の不興を大いに買い漁った後なのだ。……その上で、正々堂々の勝負を挑まなかった上に、有利な条件下でも敗退だなんて。王子様達の目にも、モリリンの失態はさも興醒めに映る事だろう。


(でも、あの様子だと杖を手放してくれそうかしら? ナルシェラ様の説得にも応じてくれるといいのだけど……)


 流石に、その場で杖を捨てるまでには非常識ではなかったものの。敗因となったケーリュケイオンは、モリリンにとって既にお気に入りではなくなっているに違いない。スゴスゴと撤収していく、モリリンの背中をモニタの中に見つめながら。ミアレットは漠然と、「上手くいけばいいなぁ」と考えていた。

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