8−1 目指せ! 脱・凶暴路線
(うーん、今回はこんなもんかぁ……)
迫る魔法武闘会の開催日は、いよいよ明日。ミアレットは連日、放課後の時間をフル活用し、「魔力トレーニング塔」の攻略や「仮想空間システム」での訓練に勤しんでいた。
成果としては、まずまず。魔力トレーニング塔は22フロアまで突破でき、ほんのり魔力因子の覚醒率も上がっている。仮想空間システムで覚えたての「エアリアルダスト」と「サンダーライトニング」も使ってみたが、詠唱スピードはさておき、難なく発動できるくらいまでには仕上げられた……と思う。
(やれるだけのことは、やったわ。それに、私には奥の手もあるし……)
最終的には、凶暴な魔法武器・コズミックワンドを頼れば、何とかなりそうか。少なくとも、大物の魔物を仕留めた実績もあるし、この武器でゴリ押せば、大抵の局面はクリアできそうな気がする。
(でも、できれば魔法で対処したいのよね……。これ以上、凶暴なクラスにチェンジするのは、避けたいかもぉ……)
何せ……魔力因子の覚醒率だけではなく、武器の習熟度もちゃっかりと上がっているのだ。否応なしに、とあるアプリケーションでそんな事を認識させられたミアレットは、別方向から浮上した懸念事項に頭を悩ませている。
その渦中のアプリケーション……フロア20踏破のご褒美・【魔法武器習熟度パラメータ】を起動すれば。……何故か、「槌」の習熟度が異様に伸びている。どうやら、コズミックワンドはマジカルな名称にもかかわらず、鈍器としても認識されているようで。「杖」の習熟度もそれなりに上昇しているが、数々の凶悪な必殺技(物理攻撃)に頼った場合は、「槌」の習熟度も伸びてしまうようである。……ミアレットがウォーメイジにクラスチェンジしてしまったのは、これが原因だったらしい。
(これ、習熟度が更に上がったら……また変なクラスに昇格しちゃったりするのかなぁ……)
ミアレットは杖の習熟度「13%」と槌の習熟度「44%」をチラチラと見比べては、深々とため息をつく。どこをどう見ても、鈍器が得意武器になっている時点で、か弱い魔術師のパラメータではないだろう。
(習熟度が50%にならないように気をつけよう……。何となくだけど……その一線を越えたら、変な境地に辿り着いちゃう気がする……)
いずれにしても、今のところはウォーメイジ止まりなので、まだ間に合う。いや……何が何でも、間に合ってくれなければ、困る。アプリケーション取得を機に、目指せ! 脱・凶暴路線……である。
(それで……あぁ、ウィンドブルームはロッド扱いなのね。良かったぁ……)
もう片方の魔法武器は性能もお利口ならば、分類も素直。魔法の箒は順当に「ロッド」……つまりは棒状の雑多な武器として分類されているようで、特殊効果も物理扱いにはならない様子。普段から移動手段としての利用が多いので、ロッドの習熟度「5%」は順当な数値だろう。
(武器って、本当にいろんな種類があるのね。それにしても……アハハ。このアプリがある時点で、本当に武器を本格的に使う前提なのね。魔術師って……)
魔術師と言ったら、杖オンリーだとばかり、思っていたのだが。この世界の設定が色々とおかしいのは、身をもって経験済みなので、ミアレットはもうもうツッコむことも諦めている。……いずれにしても、選択肢が豊富なのはいい事だ。
「訓練は終わりましたか? ミアレット様」
「あっ、カテドナさん。すみません、お待たせして……」
「何をおっしゃいますやら。主人をいつまでもお待ち申し上げるのは、使用人として当然です」
相変わらず、ピシリと整った姿勢のカテドナ。彼女はミアレットが自習に励む間、訓練棟のエントランスで待っていてくれたらしい。しかし、彼女のあまりの従僕加減に、ミアレットは申し訳ない気分になると同時に……却って、心配になってしまう。
「いや、そこは柔軟に対応してもらって、いいんですよ? カテドナさんも休憩したりとか、もっと自由にしても……」
「もちろん、自由にさせていただいておりますよ? 特にミアレット様の恋愛模様は、自由に観覧させていただいております」
「えっとぉ……? できれば、それ以外の範囲で自由にしてもらえると、嬉しいんですけどぉ?」
自由って、そっちかーい! ミアレットは内心でハリセンを振り回したい衝動に駆られるものの。さっき、凶暴路線は脱退すると決めたばかりである。……ここは変なクラスチェンジを避けるためにも、暴れることも含めて諦めた方がいいだろうと、仕方なしに肩を落とした。
「いずれにしても、お待たせしてすみません。それに、ナルシェラ様達も退屈させていないと、いいんですけど……」
ミアレットの魔法武闘会への参加は当然ながら、ナルシェラ達も知っている。いや、むしろ彼らがアケーディアと結託(?)した結果に、ミアレットは強制参加と相なったのだから、元凶と言っても差し支えない。そんな状況なものだから、ミアレットが自習に勤しむのも大いに結構と、王子様達は副学園長先生の自室で待機してくれているのだが……明日が本番とあって張り切ってしまった結果、いつも以上にお待たせしてしまったと、ミアレットは反省している。
「そちらも大丈夫ですよ、ミアレット様。ナルシェラ様達には、キュラータ殿がお側に仕えております。彼であれば魔法の知識と一緒に、紳士としてのマナーも的確に教えてくださる事でしょう」
「キュラータさんも、色々と隙がない人ですもんね。ところで、ガラさんは?」
「……主にお茶を淹れることに専念しているようですが、使用人としてはまだまだですので。一緒に鍛え上げて差し上げましょうと、キュラータ殿が張り切っておりました」
「うわぁ……」
しかし、その張り切りは一種の穴埋めなんだろうなと、理解して。ミアレットは居た堪れない気分にさせられる。
それもそのはず、彼が「姉上」と敬愛していたらしい相手……ロッタがここ数日、帰ってきていないのだ。しかも、ロッタの契約主に確認したところ、彼女の契約が妙なことになっているそうで。全幅契約を持ってしても、彼女の居場所を掴めない状況になっているらしい。
(ロッタさん、どこに行っちゃったのかなぁ。モリリンさんの身辺調査をしているだけなら、いいんだけど……)




