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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第7.5章】イグノ君、ハーヴェンさん家にお呼ばれする
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7.5−2 生憎と、これはいつもの風景でヤンす

 目の前には分厚いステーキに、綺麗な透明スープ。サラダとパンを合間に入れつつ、ビューティフルな断面のステーキを頬張れば。ここは最高級レストランかよと思える美味に、俺は生きている喜びを感じまくっていた。


(う、旨ぇ……! 何この、ステーキ! 焼き目はこんがりなのに、中身はジューシィ。噛んだ瞬間にジュワッととろける……!)


 しかも、ステーキだけじゃなくて、スープやサラダもさりげなく旨い。語彙力も一緒にトロけちまったのか、もはや「旨い」以外の言葉が出てこない。ハーヴェンが料理上手なのは、聞いてはいたけれど。ここまでとは、予想外だ。でも……。


(幼女ちゃん達、よく食うな……。あんなに小さなお口なのに、俺より食うスピードが速いんだけど……)


 俺達よりもちょっと遅れて帰ってきたのは、大天使ちゃんと小犬っぽい何か。大天使ちゃんにはちょっと睨まれたが、俺の華麗な活動記録(報告書?)効果もあるのか、意外とすんなり一緒に食卓を囲っていたりする。そんで、小犬っぽい何かはハーヴェンの子分で、コンタローと言うらしい。普段は魔法学園で受け付けをしているって事だったが……こんな時間まで仕事だなんて。悪魔って、冗談抜きで働き詰めなんだな……。


(見た目は黒柴なんだよなぁ。この顔を見てると、つい麻呂眉をグリグリしたくなる……)


 しかも、コンタローはかなり気が利くヤツみたいで。俺が驚いているのを察知したのか、隣からきっちりフォローを入れてくる。……なんだろうな。普通に付き合う分には、悪魔の方が断然いい気がしてきた。


「あ、あぅぅ……イグノ君、姐さんとラディちゃんの勢いはいつもの事でヤンす。気にしないであげて下さいです。お頭のお料理は絶品でヤンすから、2人とも食欲が止まらないみたいで……」

「お、おぅ……そうだな。うん、この料理を前にしたら、仕方ないよな……」


 ……因みに、コンタローの言う姐さんは大天使ちゃん、お頭はハーヴェンのことっぽい。


(それにしても、すごい勢いだな……。食べ方は下品ではないにしても、もうちょい落ち着けないのか……?)


 俺達のやり取りが耳に入らないくらいに、天使ちゃん母娘は爆食が止まらない様子。時折、ハーヴェンにスープのお代わりをおねだりしながら、パンもステーキも片っ端から腹に収めていく。あの小さな体のどこに、これだけの料理が入るんだか……。


「さて……そろそろ、デザートの時間かな?」

「えっ? この上に……更にデザートまであるのか⁇」


 ……嘘だろ? いくらなんでも、食い過ぎじゃ……?


「デザート! デザートッ!」

「パパッ! 今夜のデザートは何?」


 え、えぇぇぇ……? 食う気満々だよ、この子達。これだけ食って、まだ入るのかよ……。


(あっ、でも……デザートは別腹って言うし。それに、そんなに大した量じゃない……)

「はーい、お待たせ。今夜のデザートはミックスベリーのショートケーキです」

(いやいやいや、おかしいからな⁉︎ 明らかに食後のデザートって感じじゃないだろ、それは⁉︎)


 ハーヴェンが運んできたのは、立派なガッツリ目のケーキ。サイズも結構あるし、これでもかってくらいに、イチゴっぽい果物とクリームが満載なヤツ。見た目はこれまた、とっても綺麗だけど。俺はともかく、あんなに食ってたのに……天使ちゃん達はこのサイズ、普通に入るのか?


「あっ、もちろんホールで作ったから、お代わりも……」

「よし! だったら、私は2切れ食べる!」

「私も!」


 うん、入るっぽい。あのほっそい腹に、しっかり入るっぽい。しかも、2切れも入るっぽい。


(な、なぁ、コンタロー)

(あい、なんでヤンしょ?)

(これも、いつもの光景なのか⁇)

(……イグノ君が言いたい事はもちろん、分かるでヤンすよ。でも生憎と、これはいつもの風景でヤンす。姐さん達の別腹は異次元サイズだと、おいらも思うです)


 そうか。これがおかしいと思うのは、俺だけじゃないと分かっただけ、ヨシとしようか。

 聞けば、ハーヴェンとコンタローは暴食の悪魔らしいんだけど。……その暴食の悪魔2人(1人と1匹?)を上回る食欲とか、こっちの天使は本当にどうなってるんだよ。コンタローも食いしん坊っぽいんだが、明らかに遠慮してるし……。


(この世界の悪魔って、なんか……メチャクチャ苦労している気がする……)


 俺が呆気に取られている間に、しっかりと1個目のケーキを平らげ、2個目のケーキ(お茶のお代わり付き)にフォークを刺している天使ちゃん達。とっても幸せそうな顔は、確かに可愛いけれど。圧倒的な食欲を前にしたら、色んな不安で100年の恋も冷めちゃう気がする。


(幼女ちゃんと結婚した場合、この食欲を支えないといけないって事だよな……? いくら稼いでも足りない気がするし……何より、ここまでの料理は絶対に作れないんだけど)


 ハーヴェンの料理に慣れている=かなりのグルメさん。料理自体はハーヴェンに教わることもできるだろうけど、ここまで作れるようになるには、相当の修行が必要な気がする。それに……ハーヴェンみたいに甲斐甲斐しくお料理やら、お給仕やらまでやっていたら、俺の方が潰れちゃう。


「うんうん、今夜のデザートも気に入ってくれたかな?」

「もちろん。ハーヴェンのケーキが不味かったことは、一度もない」

「パパのケーキ、最高。いくらでも食べられる」

「そうか、そうか〜。そいつは何よりだ」


 そんな天使ちゃん達を、ハーヴェンは満足げに眺めているけれど……いや、お前はどうしてそんなにニコニコしていられるんだよ。完璧にいいように使われてるだけだろ、これは。


(天使ちゃんを恋人にするのは、止めた方がいい気がしてきた……。もしかして、あのリッテルさんもこんな感じなのか……?)


 いくら美人でも、これじゃなぁ……。こうなったらいっその事、悪魔の恋人を探した方がいいかも……? アーニャ先生やアレイル先生も悪魔だって聞いてるし、スタイルの良さは天使ちゃん達にも負けてない……いや。むしろ、あっちのお姉様達の方が圧倒的にダイナマイトボディなもんだから、包容力はブッチギリだ。


(なんだかんだで、悪魔の方が穏やかっぽいし……。ハーヴェンにお友達を紹介してもらえば、1人や2人、ピッタリな子がいるだろ)


 こいつのお友達ともなれば、きっといい子揃いに違いない。今度こっそり、相談してみよう。少なくとも、暴食幼女ちゃんの恋人は俺には務まりそうにないし。……この食欲を支えていく覚悟は、俺にはないんだな。

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