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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第1章】ややこしい魔法世界の隅っこで
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1−20 細かいことも気にしてくださいよ

「ウンウン、ざっとこんなもんだろ」

「……アハ、アハハ……先生、マジで凄いっす」


 結局、残りの2体も易々と下し、マモンが満足そうに風切りを鞘に収める。そうして、ようやくミアレットをそっと降ろすが……言動が乱暴な割には、所作がいちいち紳士的なのが、なかなかにニクい。


「ミアちゃん、気分はどうだ? 歩けそう?」

「は、はひ……大丈夫です……」

「そか。本当は休憩もしたいところなんだが……今はそんな事をしている場合じゃなくてな。……とにかく急ぐぞ」

「それはいいんですけど……ちょっと、状況を整理する時間が欲しいです……特に、魔術師なのに武器を使わないといけないところとか……」


 彼らが魔法学園を興し、魔術師を育てることに注力しているのは、深魔対策の一環なのだとミアレットだって常々聞かされている。「元の世界に帰る」ことが最終目的ではあるものの、そのためには必要な魔法を習得しなければならないのだし、魔法学園に通う事自体はミアレットも渋々ながらも了承はしていた。だが……彼女の目的は魔法を勉強する事であって、「特殊祓魔師」になることではない。むしろ、そんなものになってしまったら……ますます、目標達成まで時間がかかってしまうではないか。


「んな、仕方ないだろ? 魔法学園に通ってもらうのはイコール、魔術師……延いては特殊祓魔師を目指してもらうためなんだから。何のために学費と教材費免除どころか、働き口まで用意していると思っているんだよ……」

「ゔっ……そうでした。魔法学園に入学できれば、将来安泰……なんでしたっけ?」


 だが、武器まで扱えるようになれとまでは聞かされていない。武器を手にしたとしても、杖くらいだとミアレットは思っていたのだが。


「それでなくても、ミアちゃんは大注目株なんだから、頑張ってほしーなぁ。あっ、もちろん武器の適正確認とか、扱い方のレクチャーはしっかり面倒見るから、心配するな〜」

「ありがとうございます……って、言いたいところですけど。心配しているのは、そこじゃないんです……」


 なんだかんだで、面倒見のいい大悪魔様はきっちりとフォローを入れてくるものの。気軽に頑張って欲しいと言われたくないのが、複雑な乙女心というもの。……ミアレットとしては、余計なことまで頑張りたくない。


「そもそも、マモン先生みたいになれって言われても、無理ですってぇ……。私、さっきから驚きっぱなしでしたもん……」

(ミア嬢が驚くのも、無理はないでおじゃる。……主様の腕前は、ちょっとやそっとのレベルではおじゃらんし。何も、そこまで頑張らなくてもいいでおじゃる。今はまだ気楽に乗っかっておけば、良き哉)


 ……しかも、魔法道具の方がミアレットの気分にしっかりと寄り添ってくるのだから、いよいよ居た堪れない。


「ほれほれ、2人とも。おしゃべりはその位にして。そろそろ目的地に着くから、気ぃ付けとけよ。それで、う〜ん……あれが本丸っぽいなー」


 ミアレットと風切りの内緒話を知ってか知らずか、マモンが額に手を充てながら、目を凝らしている。そうして、ミアレットも彼が示す方を見やれば……遙か前方には確かに、立派な城らしき建造物が聳えていた。しかし、先程のエルシャが作り出したと言う宮殿の雰囲気とは程遠い、禍々しい色をしていて。……完全に「自分は危険ですよ」と威嚇するような、威圧感も醸し出している。


「……なんか、いかにもって感じですね?」

「そうだなー。……何つーか。今回の心迷宮……ちょっと、甘く見てたかも知れないな」

「えっ?」


 歪な石畳を歩みつつ。マモンが頭を掻きながら、呟く事には。ミアレットが見つけた扉を潜る前は確かに、エルシャの心迷宮は綺麗な状態だった。だから、そこまで深く「黒くなっていない」と思っていたそうだが……。


「……あのご立派なお城を見る限り、そうでもなさそうだなって。いや……違うな。あの城はどうも、エルシャちゃんが作ったものじゃなさそうな気がする」

「そうなんですか?」

「うん。……さっき、言ったろ? 歳を食ったやつの心迷宮程、ドス黒くなる……って。エルシャちゃんがミアちゃんと同い年ってことを考えれば、こいつはかなり不可解な状況だ。とは言え……細けぇこたぁ、行ってみりゃ分かんだろ。ここで悩んでても、仕方ねー」

「いや、ここは細かいことも気にしてくださいよ……」


 しかしながら、先に進むしかないのはミアレットとて分かっている。マモンの話からしても、彼女が見つけた扉はいわゆるショートカットの入口だったようだし、進む先としても間違っていない。ただただ……付随する「これからの不安材料」が多すぎて、ミアレットの心はざわついたままなだけだ。


(ゔぅ……どうしてこうなるのよぅ……! 私は平穏に、魔法を勉強したいだけなんですけどぉ……!)


 注目されることも望んでいないし、褒められることも求めていない。ミアレットはただ、普通に魔法学園生活を送りたいだけである。

 それなのに……女神様達のご配慮(と書いて、ありがた迷惑と読む)のせいで、手厚いフォローという名の「特別カリキュラム」まで乗せられたら、身も心も持たないではないか。


「さてさて、到着しましたよ……っと。ミアちゃんも、覚悟はいいかー?」

「はい……えぇと、このまま突入するんですか? 私、完璧に足手まといですよね? ここで待っていた方がいいような……」

「いや? そんな事ないから、気にすんな。ミアちゃんは物分かりもいいし、聞き分けもいいし。他のお子さんを預かるよりは、遥かに楽だぞ?」

「まぁ、それほどでも……」


 中身が大人なのだから、それは当然だと思う。だがマモンも含め、女神様達以外の「こちらの世界の住人達」はミアレットが転生者であることを知らされていない。それが故に彼らは一律、ミアレットのことを「大人びた女の子」だと認識しており……ちょっと難題を振ってみても平気だと、ミアレットの内部事情をよろしくない方向に誤解していたりする。


「変な心配はすんな。これまで通り、大人しくついてきてくれりゃいい。それと、気づいたことがあったら、都度都度教えてくれると助かるぞ。そんじゃ、ま。行ってみよー!」

「アハハ……ガンバリマス」


 結局は、頑張らざるを得ないらしい。いくら見ているだけ(しかも、経験値ももらえる)と言っても、これからのことを考えると、まずまず不穏ルートに入ったと言っていい。……ゴラニアではエリートコースなのだろうが。そんなエリート街道は願い下げだと、ミアレットは考えずにはいられないのだった。

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