46、自分の足で立つの
依存し過ぎていた。
あの蜜月の日々は、今でも心に深く残っている。
ただ何も考えずに、彼に寄りかかるだけでよかった。
思考することをやめて、流れに身を任せる。
それは、とても楽だった。
それどころか、心地よくて、満たされて。
幸せな気持ちにさえなれた。
でも、その先に待つものは?
それが永遠に続く保証なんて、どこにもないのに?
(……本当に、それでいいの?)
……甘えてちゃ、だめ。
私は、自分の足で立たなきゃ。
一時的な幸せなんて、いらない。
私はこの先の未来を、胸を張って生きていきたいの。
何より、私には向き合うべき過去がある。
ユリウスとの関係も、ユーフェミア様との過去も。
リシュアン様だって、そう。
……そして、きっと彼は苦しんでいる。
ユーフェミア様と再会して、気持ちが揺れたかもしれない。
それを責めることなんてできない。
私は――彼らに償わなきゃいけない。
それにーー
ユリウスには、幸せになってほしい。
それが、私じゃなかったとしても。
そんなふうに思いながら、私は静かに足を踏み出す。
建国記念パーティーの会場へと、もう一度戻るために。
兄のレオナルドを探すためだ。
この気持ちを、ちゃんと伝えるために。
一度、ユリウスと距離を置きたい。
実家に帰りたい。
――そう伝えるために。
胸の奥が少しだけ、軽くなった気がした。
記憶を失ってから、色々なことがあった。
傷ついて、悩んで、逃げたくなったこともあった。
でも今の私は、ちゃんと自分の足で考えて、選んでいる。
そのことが、ほんの少しだけど――誇らしく思えた。
ーーそして。
探していた背中が、そこにあった。
静かに揺れる白銀の髪。私と同じ色をした、あの優しい背中。
胸がきゅっと締めつけられる。
私が少し近づいた、その瞬間――
レオナルドお兄さまが、こちらを振り返る。
「……ミレイナ?」
大丈夫。私はもう、俯いてばかりのミレイナじゃない。




