17
「断られること前提で話を進めるつもりはなかったからな。攻め入るための準備に時間がかかっただけだ。私が王になった初の戦になるかもしれないからな。万が一の手抜かりを残すはずがなかろう」
「だがヴィヴィアンは唯一の継承権を持つ王女だ。我が国を潰すつもりか」
「それなら王が子を作れば良いではないか?」
「・・・・・・それは」
王は先ほど紹介された亡き王妃そっくりの令嬢を思い浮かべていた。
同じ家から娶るのは他家との影響を考えて好ましくない。
だが、今回は軍事国家のモンジョルド国からの圧力がある。
国を守るためという大義名分ができてしまう。
「良ければ我が国自慢の美姫を何人か王の後宮に送ってもよいぞ。どうだ?」
「その心配には及ばん。ちょうど側室に迎えようと思っていた令嬢がいるからな」
「それは良かった。では戴冠式が終われば改めてヴィヴィアンを迎えに来よう」
戦争が回避されたことに安堵した貴族たちはゆっくりと退席した。
「王が聡明な方で安心した。私としてもヴィヴィアンの祖国を潰すのは忍びないからな」
「お話がまとまって良かったですわ。お兄様」
「妹よ。先に帰国し、戦争をせずとも済んだことを報告してもらえるか?」
「分かりましたわ。ちょうど大使の方がいらっしゃるというお話がありますもの。明日にでも出立いたしますわ」
妹はこの騒ぎに乗じて思い人を国に連れて帰る算段を考えていた。
王弟も監視が強くなる前に出国するつもりでいた。
「それでは正式な話をさせていただこう。もちろん王の新しい側室との婚姻は国よりお祝いを贈らせていただく。よい関係を築きたいものだな」
この言葉で王はヴィヴィアンを嫁がせることと新しく側室を娶ること、そして子どもを生すことを確約しなければならなくなった。
だがそれで国が守られるのなら安いものかもしれない。




