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職業:白銀の乙女  作者: 紀美野ねこ
永遠と不可視と無邪気な妖精

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81. 翔子と建前

 来た道を戻るだけなんだけど、一番怖いのが例の十字路のところ。

 この隊員さんたちだって十分気をつけてたと思うんだよね。プロ中のプロなんだろうし。

 でも、おそらくあの枝道あたりで前後から挟撃されて、二正面になるのを嫌ってあの枝道に入ったんだと思う。


「大丈夫そうだな」


 十字路を確認したサーラさんが前進し始めたので一安心。これで後ろだけ気にしてれば大丈夫のはず。

 あ、そうだ、閉じておけばいいんだった。氷壁なら小一時間は余裕で持つはずだし、とりあえずの足止めにはなるよね。


「智沙さん、一瞬待ってください」


 そうお願いしてから、


《起動》《氷壁》


 隊員さんたちは振り返る余裕もなさそうだし、サクッと氷で蓋をした。


「うむ。いい判断だな」


 納得して褒めてくれる智沙さん。素直に嬉しい。

 少し離れた最後尾に早足で追いついたところでフェリア様が漏らす。


「翔子の国の軍隊は弱すぎではないか?」


「いや、魔素がないからですって……多分」


 私だって「もうちょっと健闘できたのでは?」と思わなくもない。

 改めて後ろから隊員さんたちを眺めると、装備として持ってきてたのはジュラルミン盾四枚。後は各人が警棒やサバイバルナイフかな?

 銃器を除く対人装備としては十分なのかもだけど相手がオークじゃなあ、と。ナイフ一本で猪を仕留められる自信があったのかな?

 いや、でも、サーラさんは短剣で無双してた……


「サーラさんの短剣ってすごいんですよね?」


「それは間違いないが、サーラ自身の身体強化や其方(そなた)の加護も掛かっているのだ。オークなど紙切れ同然よ」


 うっ、それかー……

 隊員さんたちだって、ビデオを見てある程度は敵の強さを想定してたんだろうけど、いろいろと想定外だったのかな。数とか魔法使いっぽい奴とか。

 彼らが再戦して勝つ方法を軽くシミュレーションしてみたけど、銃器なしっていう時点でかなり厳しい気がしてきた。


「智沙さんなら、さっきのオークたち一人で倒せますよね?」


「一対一の状況を維持できればな。だが、途中でこれが壊れるだろう」


 そう言って手に持った警棒を見せてくれる。

 うん、そっちの問題もあるんだった。というか、隊員さんたちの警棒やサバイバルナイフもダメになってそうね。

 チョコの永遠タイプでの長剣(ロングソード)や、サーラさんの短剣はいわばSSR級の武器。所有者の魔素や加護の力が乗るっていうチートに耐えれる代物なんだよねえ。

 どうにか私たち以外で解決できるような方策を考えないと、本当に分身しないといけなくなりそうなのがね。せめて智沙さんに相応の武器を用意してもらえないかな……


「出口が見えてきたようだの」


 ふう、これでミッションコンプリートかな?

 あ、せっかく水の精霊さん連れてきてるのに使う場面なかった。


***


「翔子よ。ついでにその鳥籠の魔晶石に魔素を足しておいてくれぬか」


「あ、はい」


 完全にここを離脱する前に一仕事。っていうか、フェリア様が鳥籠に戻るのと、みんなに清浄の魔法をかけて綺麗になっておかないと。


 先にここを出て行った隊員さんたちだが、副長さんだけが私たちを待っている。というか監視されてる感じ。気にしないけどね。


「はい、フェリア様。どうぞ」


「うむ、大義であった」


 なにそのセリフ。素なのかギャグなのかはっきりしないと突っ込みにくいんですけど。

 ともあれ、扉を開けて中に入ると緑と青のインコとなって……小座布団にへそ天で寝る気まんまんですね。


「翔子、清浄はよ」


「妹者マテ、時に落ち着け」


 一番お仕事してくれたサーラさんが最初です。けど、あんまり汚れてないんだよね。

 あの血飛沫舞う中を避けてたってことだよね。それくらい出来そうなあたりが洒落にならない。


「ありがとねー」


 続いてチョコ、智沙さん、私と清浄をかけ、ヨミ……は自分でかけたのね。えらいので撫でよう。


「ワフ〜」


「翔子よ、加護と聖域を解除し忘れるでないぞ」


 完全に忘れてました! へそ天のくせに!

 加護をそれぞれ解いてから、最後に聖域も解除。これでオッケーかな?


「うむ。では、我々も戻ろうか」


 智沙さんがそう言って副長さんの方を見ると、慌ててブルーシートを開けてくれた。

 先に出た隊員さんたちは早々に本部に帰ったっぽい。怪我人もいたし、待ってもらう必要もないけどね。

 逆に副長さんは「同行しろ」っていう命令に忠実ってことか。宮仕えも大変なんだなあ。


 来た山道を足早に戻ると、美琴さんが待ち構えてて駆け寄ってきた。


「はあ、心配しました。外に出たところで一報入れてくれればよかったのに」


「あ、ごめんなさい……」


 有線通信ケーブルが切れてたし、帰りもそれを直す話も出なかったから完全に失念してた。外に出てから電話できたじゃん。


「美琴。御前に連絡を入れてくれ。要件は済んだのでこれから帰投すると」


「はい」


「私はあちらに報告してくる。皆は先に車へ」


 本部テントの方へと歩き始める智沙さん。気になる。気になるので……とチョコを見ると、意図は伝わって、いや、理解済みなので美琴さん、サーラさん、ヨミと先に。私はさも当然のように智沙さんについていく。怒られるかな?


 ちらっと私を見た智沙さんが、


「本当に報告だけだ」


「ええ、それは理解してますけど、ライフル突きつけられて私たちのことを話せとか言われても困りますし」


「なるほど、それはあり得るな。だが、翔子君はどうやってそれに対応する?」


「魔素を銃口から注いであげれば、多分撃てなくなるかなーと」


 ダンジョンの機能が銃を撃てなくしてるのかと思ったけど、あの坑道はダンジョンじゃないっぽいし。となると、魔素が安全装置的な役割として爆発という現象を阻害してるんじゃないかと。仮説だけどね。


「その前に私が銃を払い落とすだろうな」


「わかってますよ。でも、智沙さんが心配なので」


「……ありがとう」


 本部テントに入ると、先に戻っていた副長さんと群長さんが何やら話をしていた。私たちが何をしたかっていう報告なんだろう。

 突入部隊の人たちはおらず。別のテントかな? まあ、応急手当が不十分だった人もいただろうしね。

 と、近づく私たちに気づいた副長さんが、さっと群長さんの斜め後ろへと控える。


「我々の作業は終了しましたので撤収します」


「了解した」


 本当にそれだけで終わった。向こうも何も聞かず、こちらも彼らを助けたとも言わない。

 要するに「六条は『たまたま』ここの調査のために入り、『たまたま』人を襲っていた怪物を倒した」だけなのね。


 完全に理解した。でも、チョットデキルは遠いと思う。




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