68. 翔子とお昼寝
「はいはーい、お昼できたよー!」
時間は午後一時を回ったところ。
魔道具の話や転移魔法陣の魔晶石への魔素補充とかしてたら、お昼を回ってたので慌てて準備。
訓練してる人たちは放置してそうめんを茹で、大量の薬味というか付け合わせを。
「おー、ありがとね」
「え、もうお昼?」
「ああ、準備を押し付けてしまったか。すまない」
サーラさんは普通にしてるけど、チョコと智沙さんは結構辛そう。
まあ、二時間近くやってりゃそうなるか。平気なサーラさんがおかしいんだろうね。
「ちゃんと手を洗ってくださいね」
「はーい」
全員揃ったところで、いただきます。
「これ、パスタとまた違う感じで、さっぱりしてておいしいね。戻ってから作れないかな……」
サーラさんも気に入ってくれたようで何より。
そうめんの原材料って小麦粉だよね? パンはあるみたいだし、作れるとは思うけどどうなんだろ。
「そうめんよりも、このつゆを作る方が難しいんじゃない?」
「うむ。めんつゆというと鰹だしだろうしな。向こうの世界に鰹があるのかどうか……」
「そうですね。あと昆布とかも」
たしかにそうめんよりもめんつゆの方が難易度高いか。
海苔はあるようなことが『白銀の乙女たち』にも書かれていた気がするし、昆布だってあるような気はする。
でも、鰹節はなー。鰹はあっても、それを鰹節にするとかいう発想に至るかどうか。燻製肉とかはあるっぽいからワンチャン?
「ところで、明日行く場所はここよりも山奥になるのか?」
とスイカを頬張りながらフェリア様。
「あ、ええ、そうです。車で一時間ぐらいかな? 割とちゃんと整備されてるんですけど、他に見る場所とかがないので、あんまり人が来ないんですよね」
「ここもいいところだと思うのだがな。空気は綺麗だし、星空を見たのも久しぶりだ」
「東京の空って星が全然見えませんもんね」
都会っ子な二人は田舎の星空に感動した模様。
もう少し時期が早かったら、蛙の大合唱を聞かせてあげれたのに。寝られなくなるやつを。
「人が少ないなら、我もこの姿でいて問題ないかの?」
「大丈夫だと思います。でも、温泉に入れるかどうかはその時次第ってことで」
「ふむ。いざとなったら、タオルに包まってでも……」
不穏なことを言ってるけど気にしないでおこう。サーラさんが目を光らせてくれるはず。
「この後は訓練の続きです?」
「んー、それでもいいけど、あんまり詰め込んでもね。私としては、しばらく昼寝するぐらいでいいと思うんだけど」
そうチョコに返すサーラさん。というか昼寝はちょっと魅力的。
ヨミとお昼寝したい……
「あ、私、ちょっと買い出しに行きたいんですが。昨日、思ったより皆さん食べたので、食材を買い足しておきたいかなと」
「では、私と美琴で行ってこよう。翔子君たちはゆっくり休んでいてくれ」
え、それはさすがに……って言おうとしたところで圧が来たので素直に従うことに。智沙さん、こういうところは体育会系っぽいんだよね。
後片付けを終え、美琴さんと智沙さんを見送ってから、お昼寝タイムに。
奥座敷に薄い布団をひいて、私、チョコ、サーラさんでごろ寝。ヨミは私とチョコの間に陣取ってぺったり。フェリア様は……床の間の座布団に大の字になってる。まあ、暑いしね。
「ふあぁ、じゃ、おやすみなさい」
「おやすみ」
「うむ」
「ワフ」
「Zzz……」
サーラさん、もう寝てるね……
***
目が覚めたら、隣に寝ていたのが美琴さんに変わってた件。
一体何が……ってチョコはどこ行ったの?
体を起こすと、寝てるのは私と美琴さんだけかな。ヨミもフェリア様もいない。
美琴さんは可愛い寝顔ですやすやモードなので、そおっと起きて部屋を出る。
居間に来ても誰もいないってことは、研究所の方かな? 裏口に出たところでヨミがお座りして待っていた。
「ワフン」
「うん、おはよ」
かしこかわいいので撫でるしかない。
「ワフ〜」
「みんなは地下?」
「ワフ」
くるっと振り返って蔵の方へと進むヨミについていく。
外に出るとそろそろ夕方? 午後五時前ぐらいかな。時計見てくれば良かった。
階段を降り、二つの部屋をスルーして、さらに下へ。
訓練所の扉を開くと、予想通りというか午後の訓練をしてるっぽい。ただ、手合わせというよりは指導を受けてる感じかな? 主にチョコが二人から。
邪魔するのもなーって、ヨミとそっと見守ろうとしてたら、フェリア様の声がかかる。
「ぐっすりだったの」
「あはは」
「いろいろと疲れておったのだろう。若いとはいえ、あまり無理をせんほうが良い」
これが本当の老婆心ってやつなのかな? 定位置の右肩へと座る。
無理をしてたつもりはないけど……してたのかな? よくわからない。
「ま、自分では気付かぬものよ」
「なるほど」
そんなやりとりをしてると、今度は美琴さんがそーっと様子を伺いつつ入ってきた。
「あ、おはよう」
「おはようございます。って、起こしてくださいよ、翔子さん。誰もいなくなっててびっくりしたんですから」
「あ、ごめんなさい。なんか寝顔可愛かったから起こすのもったいないかなって。痛たたっ!」
そう言ったら腕を思いっきりつねられた。
顔が赤くなってるのは……ああ、寝顔見られるの恥ずかしかったのか。
「翔子さん、そういうの反則ですからね?」
「え、あ、はい。気をつけます?」
「美琴よ、こやつ、わかっておらんから気をつけよ」
なんか酷いことを言われてる気がするけど、二対一で勝てそうにないので黙っておく。
そんなやりとりをしてると、訓練をしていた三人が気づいてこちらへと。中断したわけじゃなくて、ちょうど終わった感じかな?
「終わり?」
「うん、終わり。そろそろ夕方の散歩の時間でしょ?」
「ワフッ!」
早く早くって感じのヨミ。
じゃ、軽く散歩してから夕飯かな?
「じゃ、チョコ、また悪いけど……」
「オッケー。こっちの面子は先にシャワー浴びないとだから、その後夕飯の支度するね。寝起きだとアレだし、美琴さんと二人で行ってきたら?」
「あー、そうね。じゃ、町子さんとこも回ってゆっくりしてくるから。えーっと、美琴さん?」
いつの間にか私の右肩から離れたフェリア様が美琴さんと何か話してる。そっとしておいた方がいいのかな? と思ったら、急に振り向いてニッコリ。
「お散歩行きましょうか」
「ワフッ!」
「アッハイ……」




