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職業:白銀の乙女  作者: 紀美野ねこ
永遠と不可視と無邪気な妖精

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55. 翔子と歪んだ世界

「この階段を降りてすぐが最後になりますよー」


 第八階層も問題なくアンデッドを駆除し、残りは第九階層のみ。

 で、その第九階層は階段を降りてすぐが広い部屋。奥には第十階層への階段となっているそうだけど……


「向こう側の第九階層にはパルテームの近衛騎士のアンデッドがいたので注意してくれ」


 あー、魔法の暴走から逃げ切れなかった連中の成れの果てですか……自業自得というか哀れだよね。

 いや、死んでからも他人に迷惑かけてるっていう意味では救いようがないな。


「翔子、加護掛け直して」


「ん、了解」


 全員に加護を掛け直し、ついでに聖域も掛け直し。問題なしかな? っと……


「ヨミ、大丈夫?」


「ワフッ!」


 元気よく返事してくれたし大丈夫かな? とりあえず頭を撫ぜておこう。

 お腹空いてそうだから、ささみジャーキーもプレゼント。


「ワフ〜」


 おいしそうにジャーキを頬張るヨミを皆で見て和んだところで……


「じゃ、行きましょうか」


***


「魔術士がいますよー。気をつけてくださいねー」


 光の玉に照らし出された先にスケルトンがうじゃうじゃと。

 その奥には騎士の鎧を着たゾンビ?が二体。さらに奥に魔術士が一体。


「魔術士は私が先にやろう」


「お願いしますねー」


 うん? 矢が届く距離だとは思うけど、前に並んでるスケルトンやらゾンビ騎士が邪魔じゃないの? って思ってたら……


 ヒュンッ!


「え、何、今の……」


 チョコも智沙さんも唖然としてるけど、私も同じ顔してるんだろうな。

 だって、なんか斜め上の方に放った矢がぐいーんって曲がって魔術士に当たったんだもん。

 当然、その魔術師は光の粒になって消えたわけで……


「はいはい、来ますよー!」


 ずいっと前へ出たマルリーさんが大盾(ラージシールド)を構え、近寄ってきたスケルトンをシールドバッシュで吹き飛ばす。

 チョコと智沙さんも我に返って、マルリーさんの左右に展開。近寄ってくる骨を次々と光の粒へと変えていく。

 魔術士が残ってたら飛び道具もあってめんどくさいことになってた気がするけど……これは大丈夫そうかな。


 順調にただの骨を駆逐したところで、鎧付きの骨——スケルトンナイト?——が襲いかかって来たけど、こいつらもマルリーさんの大盾(ラージシールド)でいなされ、チョコ、智沙さんに一突きされて終わる。

 近衛騎士だったらしいけど骨になって劣化したのか……、いや、マルリーさんが強すぎるんだよねえ、やっぱり。


「終了かな? あっさりでしたね」


「いや、普通はもう少し掛かるのだがな。鎧の隙間を穿っただけで、相手が浄化されてしまうのは、やはり君が掛けた加護がすごいということだ」


「ワフワフ」


 ディアナさんに微妙な顔でそう言われ、ヨミもその意見に賛成っぽい感じ。

 特に変なことはしてないんだけど……楽に済んで良かった良かったでいいんじゃないかな。


「お疲れ様でしたー」


 スケルトンは光の粒となって消え、部屋には散らばった全身鎧と長剣(ロングソード)だけ。

 この鎧とかって戦利品になるのかな? あ、いや、クーデターを起こした貴族に渡す証拠品って可能性の方が高そう。


「チョコさんー、すいませんが鎧と長剣(ロングソード)を回収して運んでもらえますかー?」


「あ、はい、そうですよね。やっぱり証拠品ですか?」


「ですねー。アンデッドになってたので倒したっていう話だけでもいいんですがー、物があった方が説得力もありますしー、もらえるお金も違いますからー」


 なかなか強かだなと思ったけど『白銀の乙女たち』でも、マルリーさんは金庫番してたんだっけ。他のメンバーがお金に無頓着で苦労してる描写があったよね。

 チョコが鎧のパーツや長剣(ロングソード)に清浄の魔法をかけて拾い上げ、いったんひと所に集める。これ持って帰るにはかさばるけどしょうがないか。

 さて、あとは奥に見える下り階段だけど……


「確認します?」


「そうだな。一応、御前からも見れるところは全て見ておけと言われているしな」


「了解した。だが、あまり近づかない方がいいと言われているので気をつけてくれ」


 うん、なんか吸い込まれたりしたら嫌だしね。

 智沙さんがいつの間にか取り出した双眼鏡で先を覗き見て……すぐにそれを下ろして目頭を押さえる。


「変なものでも見えました?」


「いや、なんというか……歪んでいてまともに立てなくなってな」


 ああ、亜空間を直視しちゃったのかな。

 ちょっと自分もと思ったけど、チョコとマルリーさんが戦利品を回収し終えたようで戻ってくる。


「様子を見るだけにしましょーねー」


「ワフッ」


 もちろん、そのつもりです。

 ディアナさんとマルリーさんが先を進んで、それについて行くことに。

 しばらく進んだところで二人が立ち止まり、


「この辺までにしておきましょうかー。見えますよねー?」


「ああ……」


「「これはひどい」」


 階段の先が完全にカオス。

 確かに『世界が歪んで』て見てると足元がふらつく感じ。あれだ。ネットに転がってる錯視画像のすごいやつを眺めてる気分。

 ヨミなんか私の足にピッタリくっついて離れないし……


「理解してもらえただろうか?」


「うむ。これは触らない方がいいという意見に賛成だな」


 智沙さんの顔色が良くない。私も多分そんな感じなんだろうと思う。チョコはそうでもないけど、これは魔導人形だからだよね。


「この階に降りる通路に扉つけた方がいいかもですね」


「そうだな。だが、今はどうしようもない。時間も時間だ。撤収しよう……」


 誰からも異論は出ず、私たちは『歪んだ世界』を背にこの階層を後にした。


***


「今日はいつもより少し遅かったので心配しました……」


「だが、今日で第九階層まで終えれたのでな。結果として早く終わって良かった」


「えっ、今日で全部終わっちゃったんですか?」


 私としても二、三日掛かるとは思ってたから、一日で終わって良かった良かったって感じかな。

 あの『歪んだ世界』以外はだけど……


「第十階層は行けない感じだったので、それについて館長さんと話しておきたいんだけど、いつなら大丈夫そうです?」


「あ、帰ったらすぐにと連絡が来ています。どうやら何かあったような感じで、電話口の様子でも不機嫌そうでした」


「ふむ。夏季休暇がちゃんと取れれば良いのだが……」


 智沙さんが青信号を確認して、アクセルを踏み込む。

 そういや、二人が遊びにくるのにどこに連れて行こうか、まだ決めてないんだった……


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