49. チョコとディアナとマルリー
「じゃ、チョコ、いつもの説明お願いね」
「オッケー」
翔子はそう言って助手席の方へと。
今日は二人を出迎えることがわかっていたので、輸送車両の方で来ている。
革鎧に弓と細剣を持ってるディアナさん、白銀の鎧に大盾と長剣を持ってるマルリーさん。かっこいいけど、見せびらかすつもりは一ミリもないので、車両後部に入ってもらう。
「適当なところに座ってください」
「あ、ああ……」
「はいー」
ちょっとびくついてるディアナさんと、全く動じてないマルリーさん。
二人が席についたところで後ろの扉を閉めると、智沙さんがスピーカー越しに告げる。
『出発する』
「わあぁ!」
ディアナさん、驚きすぎでしょ。涙目になってるし……
「今のは智沙さんの声ですかー?」
「はい。そのままだと聞こえないので、機械を通して話しかけてるんです」
「へー、機械ってすごいんですねー」
そういや向こうは機械がない世界なんだっけ。その割には理解というか納得が早い感じ。
車が動き出すと、またしばらくディアナさんがあわあわしていたが、ようやっと落ち着いた感じになったので、さくっと『いつもの説明』をしておかないと。
「えーっと、こっちの世界での注意事項があるので、まずはそれをお伝えしておきますね」
ゼルムさんたちドワーフや、イケメン兄弟たちにもした、ダンジョンの外で魔素を使わないでねの説明をしておく。
これもディアナさんは驚いていたが、マルリーさんは知ってますよって感じの顔。
「ということは精霊もいないのか?」
「んー、そうですね。伝承なんかでは似たような存在は聞きますけど、見たっていう人はいないですね……」
コロポックルとかって樹の精霊なのかな? あと雪女って氷の精霊? まあ、日本だと妖怪だとかに分類されてるのが多そう。
ディアナさんはそれを聞いて考え込んでしまっているが、
「こちらの世界にも精霊はいると思いますよー。見えないだけでー」
「ほう?」
「ヨーコがそんなことを言ってましたからねー」
とマルリーさん。
ヨーコさんって『慈愛の白銀』ヨーコさんですよね。あの『白銀の乙女たち』の話が実話なら、ヨーコさんはこっちの世界から行った人。
マルリーさんがあまり驚かないのは、ヨーコさんからこっちの世界のことをいろいろ聞いてたから説が浮上。
「そうですね。魔素がないから見えてないだけなのかもしれません」
「ということは、魔素を使えば……」
「さっきダメだって言われましたよねー?」
マルリーさんニッコリでディアナさんが黙る。
グランドマスターの方が支部ギルドマスターより上だと思うんだけど、どうも逆転してる感じ。
ともかく「魔素を使うのは無し」をもう一度伝えておく。その結果どうこうよりも、魔素不足で倒れられると困るし。
「了解した」
「わかりましたけどー、質問ですー」
「あ、はい。マルリーさん、どうぞ」
「チョコさんはー、翔子さんを模した魔導人形なんですよねー? 魔素で動いてると思うんですがー、大丈夫なんですかー?」
あー、うん、はい。その通りなんですけど、私自身の連続稼働時間はどういうわけか長いので、あんまり気にしてない。
実家にいるときは蔵の地下で毎日魔素が補充できてるし、こっちにいる時はだいたいダンジョンに潜ってたから、実際どれくらいで魔素切れになるかわからないんだよね。
「カスタマーサポートさん曰く、私は古代魔導具とかいうのらしいので、その辺は大丈夫だそうです。あ、でも、魔法とかを使わなければですけどね」
「ふむ……」
なんか納得したディアナさん。そして、マルリーさんが、ちょいちょいと手招きする。
「はい?」
「チョコさん、ちょっとここに座ってくださいー」
と隣の席をぽんぽんする。なんだろう、この逆らえない感じの圧。
取って食われるわけでもないと思うので隣の席に移動すると、マルリーさんがじーっとこちらを覗き込む。これ、前にもあったやつ?
「すごいですねー」
ほっぺを両手でつままれてムニムニムニ……
「あ、あにょー……」
「ごめんなさいねー。とても魔導具とは思えませんがー、古代魔導具という話なら納得ですかねー」
「あはは……」
その古代魔導具である私自身がよくわかってないので答えようもなく。
「下で私と同じ格好をしていたのもー、その魔導人形の魔法なんですよねー?」
「あー、はい、そうです。なんかごめんなさい……」
私が謝ってどうこうの問題じゃないと思うけど、その真似してるのは私なんだよね。
カスタマーサポートさんはちゃんと許可を得てやってるのかな? 著作権? 肖像権? 向こうの世界にそれがあるのかどうか知らないけど。
「気にしないでくださいー。ちゃんと話は聞いてましたしー、今回来たのはちゃんと『永遠の白銀』になってもらうためですからー」
ニッコリとマルリーさん。
これは……特訓の気配!?
***
当面の間、ディアナさんとマルリーさんには別邸にお泊まりしてもらうことになっている。
二階の空いている客室に二人を案内したところで、
「えーっと、チョコさん。その格好のままではこちらの世界では目立つので着替えをお願いします、と通訳お願いできますか?」
あ、そうだった。美琴さん、読めるようにはなってきたけど、話すのはダメなんだよね。
というか、私や翔子、智沙さんがどういうわけか話せてるので、話す方を教えられないというジレンマ。
ともかく、二人に着替えをお願いする。
ディアナさんは革鎧、マルリーさんは白銀の鎧と大変目立つ格好。
これがハロウィンとかなら賞をもらえるレベルのコスプレと思われそうだけど、残念ながらまだ八月前。
「了解した」
「はいー」
この別邸、白銀の館の社員寮となったのもあって、ヨミも含めて女性寮となった。
運転手のおじさんは本邸の方に移ったそうで、ごめんなさいって感じだったけど、組織的には栄転なんだそうで。
そんなわけで、人目は気にせずさくさくと着替えてもらうと、いい感じの美女が二人に。これは別の意味で目立つのではと思わなくもない。
「あと、ディアナ殿はこれを」
智沙さんが追加で渡したのはキャスケット。
エルフの長耳を隠すために用意してあったそれを被ると、ナチュラル系美女の完成。
マルリーさんは体格的に智沙さんの服らしく、すらっとしたできる女みたいな格好になっていた。雰囲気はぽわぽわ系お姉さんなので、ギャップ萌えがあって……
「「いい……」」
ディアナさんが照れてるのはいいんだけど、マルリーさんが面白そうに私を見る。
「そういうところもヨーコに似てますねー」
ヨーコさん、オタクだったのかな……




