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職業:白銀の乙女  作者: 紀美野ねこ
永遠と不可視と無邪気な妖精

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47. 翔子とトレーニング室

「ふう、定刻通りにただいま到着っと」


 七月下旬、予定通りに東京への出張だけど一人旅状態。

 美琴さんに「正社員の出張なので業務時間に移動して下さいね」と言われたので、いつも通り『シティ』で朝食とお手伝いをし、チョコとヨミが転移魔法陣で向こうに着いたのを確認してから出発した。

 一人で移動すると交通費も安く済むのでいいんだけど、まあ味気ないというか……話す相手もいないのでだいたい寝てました……


「翔子さん!」


「あ、美琴さん、お疲れ様です〜」


「お疲れ様です。さあ、行きましょう」


 え、まさか美琴さんの運転じゃないよね……

 ドキドキしながらついていくと、普通にリムジンが待っていて一安心。いや普通じゃないけど。前と同じように後部座席に向かい合って座ってホッと一息。


「チョコとヨミはどうしてます?」


「午前中は私のアイリス語の勉強に付き合ってもらいました。お昼からは智沙さんとトレーニング室にこもってますね」


「トレーニング室?」


 あのお屋敷にそんなのあったっけ?

 どっか近くにジムっぽい場所があるのかな。


「ああ、以前、ゼルムさんたちを保護していた仮設住宅なんですが、取り払ったのちにトレーニング室になってます」


「えっ? またそんな簡単に?」


「今回も基礎とかがないパターンで、ちょっと覆った程度のものですから」


 簡易の体育館みたいなものなのかな。六条建設の力であっという間なのは確かなんだろうけど。

 それにしても、智沙さんはともかくチョコがトレーニングして何かあるのかな?


「二人はそこで何してるんです? 智沙さんはともかく、チョコが筋トレとかやってもしょうがない気がするんだけど」


「竹刀で撃ち合ってました……」


 と苦笑する美琴さん。ああ、そういうことかー。

 そういえば智沙さん、アンデッド熊に一撃喰らわした時もすごかったけど、ああいうのって警備会社だから身につくってものでもないよね。


「智沙さんって、やっぱり剣道とかやってる人なの?」


「あ、いえ、智沙さんはフェンシングです。剣道も小さい頃はやっていたそうですが、高校からはずっとフェンシングだと聞いてます」


「おお! それであんなに突きが速かったんだ」


 言われてみれば、あの半身になって片手を伸ばすような突きはフェンシングっぽい。

 でも、よくあの瞬間にその動きができるよね……


「世界大会とかに出場するレベルの腕前ですからね」


「すごい……。でも、白銀の館に移籍して良かったの? こっちだとそういう目立つことはしなくなるよね?」


 前は六条系列の警備会社って話だったけど、確かに武道系のスポーツマンなら納得かな。実業団というか、そういう人は多い気がするし。

 でも、今の白銀の館はそういう目立ちそうなことは絶対にやらないと思う。館長さんの命令とはいえ未練とかないのかな?


「智沙さんは大学卒業と同時にフェンシングの表舞台から離れてますよ。本人も目立つことは好きではない方ですし、大学はそれで奨学金があったからだそうです」


「うわ、どれだけ真面目なんですか……」


 いわゆるスポーツ特待生って感じだったのかな? 高校生から始めてそれって天才だよね?


『到着します』


 スピーカーから運転手さんの声が聞こえる。話し込んでるうちにお屋敷に到着したようだ。

 およそ一ヶ月弱ぶりの六条のお屋敷。これだけ広いとヨミのお散歩も毎日コース変更できて楽しいんだよねー。


***


 別邸の私たちの部屋に荷物を置き、さっそく裏手にあるトレーニング室へと足を運ぶ。ぱっと見は本当に仮設のミニ体育館って感じ。屋敷の表側からは見えないからこんな作りなんだろうけど、見えてたらもっとすごい作りになりそうだよね。

 どういう感じなのか見たいので、気付かれないようにこっそりと入ると、


「はっ!」


「くっ!」


 練習試合? 手合わせ? 二人してやり合ってるんだけど、竹刀じゃなくて木刀じゃん。大丈夫なのかな、これ……


「ワフッ!」


 あ、ヨミに見つかっちゃった。

 こっそり入ったつもりだったけど、さすがにヨミはごまかせなかったか。


「よし、終わりにしよう」


「は、はい。ありがとうございました……」


「うむ」


 戻ってきた智沙さんが生き生きしてて、チョコは……お疲れ様って感じ。

 ダンジョンの外なので、魔素を使った身体強化は使わずに対戦してたんだよね。魔導人形として、白銀の乙女としての基本性能だけで相手をしてたんだろうけど、それを智沙さんは上回ってるってことだよねえ……


「お疲れ」


「うん、智沙さん、基本性能が高すぎる」


 左手を差し出すので右手を合わせて記憶を同期……

 なるほど。魔素の消費を抑えるのに、タイプ設定なしでずっと相手してたのね。そりゃ大変だと思うよ。


「久しぶりに骨のある相手と手合わせが出来て良かった。チョコ君は少なくとも、六条警備にいる皆よりは強い」


「は、はは……」


「それにここでは力を抑えていたようだな。いつものように盾を持つなりしていれば、私も苦戦していただろう」


 とのことだけど、智沙さんも魔素を浴びてチート持ちになりつつあるから、実際にダンジョンで手合わせしても勝てそうにない件。


「えーっと、明日の話をしませんか?」


「「アッハイ」」


***


 別邸に戻ってきて、智沙さんの部屋にお邪魔することになった。

 智沙さんらしいシンプルな部屋。打ち合わせしやすいようテーブルに椅子四つ。

 私たちの部屋はベッド二つあるし、美琴さんの部屋はカーフィギュアだらけだしということで、智沙さんが気を利かせてくれたらしい。


「明日ですが、第一階層から第六階層を隅々まで確認してください。向こうからの手紙では『このダンジョンは地上にいる魔物を回収する』らしいので、魔物はいないと思いますが……」


 と美琴さんが智沙さんを見る。


「ただ、あの熊のように第七階層から上に来ている可能性はあるので油断は禁物だ」


 なんだよね。

 地上に魔物はいないから増えようはないと思うけど、第七階層以降から上がってきてる可能性もなくはない。ブラッドホーネットっていう障害も消えたし。


「出発は午前十時。午後二時までには第四階層に入り、午後三時前には第六階層の神樹の広間に到達しておきたいところだ」


「向こうの助っ人がこちらとコンタクトを取るのは午後三時予定です」


 頷く私たち。

 第七階層の件は、向こう側から助っ人が来て、その人たちと一緒にということになった。館長さんは渋っていたが、少しでも危ないようなら無理せず撤退ってことで納得してもらっている。

 その人たちと当日いきなり一緒に第七階層はキツいので、明日合流していろいろと打ち合わせてから挑むことになっている。

 この前のディアナさんは確定らしいけど、もう一人か二人来るらしいので、そこはちょっと不安かな? 良い人だといいんだけど……


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