126. 翔子と観戦モード
「では、待機をお願いします」
「了解です。何か起きた場合は遠慮なく」
私たち専用のテントに来た副長さんが敬礼した後帰っていく。時間は朝の九時。なかなか早いが今から廃坑内の探索開始で、私たちは助っ人として待機。いわゆる「先生、お願いしまさぁ!」っていう……
「おー、こんなでっかく映るんだ!」
サーラさんがテント奥にあるスクリーンに驚いている。プロジェクターででっかく映るのいいよね。このサイズでアニメ見たい。
テントの中央にはテーブルと椅子が四つ。智沙さん、サーラさん、私、チョコの四人分。隅っこには大きなクーラーボックスがあって、飲み物が詰め込まれている。今日一日、ここでずっと待機できるようにお昼とかも持ってきてあったり。
美琴さん、ルナリア様、マルリーさんは今日もお留守番を。前回とは違ってあっさりとオッケーされました。なんでも、残ってる間にお菓子作りをするんだとか。女子力が高そうな感じに聞こえるけど、作って自分たちで食べるんですよね?
「ワフ」
膝に飛び乗ってきたヨミを撫でつつモニターに目をやると、画面の左上四分の一には廃坑の入口付近が映っている。
「出番あるかな?」
「無さそうな気がする」
一昨日、残ってたオークやスケルトンが残ってる魔素を追って出てきたのもあるし、魔素が無いところに居続けるってことが無さそうなんだよね。
「私も無いとは思うが、気を抜かないようにな」
「「はい」」
プロジェクターの設定を終えた智沙さんも着席。サーラさんもどっかりと腰かける。
魔素をほぼ全て水に変え終えた日、「うまく動きましたよー」って報告をカスタマーサポートさんにしたんだけど、その時についでというか少し懸念点を伝えておいた。すると……
「これ一個で百万円なんだよね」
「値段聞くんじゃなかったね。私の精霊石の大きさだと五百万だって……」
廃坑の中は魔素が無くなったので、ヘルプに行くことになったら怖いなーって話をしたんだよね。私や智沙さんはともかく、チョコとサーラさんは魔素の回復がないとっていう。
そしたら、カスタマーサポートさんから送られてきたのが魔石を浄化した魔晶石。これに各人が魔素を詰めて持っておけば、予備の魔素になるし、消費具合の目安にもなるんだとか。慌てて都内のダンジョンに行って、充魔してきました。
「一個百万円のバッテリーって考えるとすごいよね」
「まあまあ、オーディオマニアの人たちって一メートルのケーブルに十万円とか出すらしいし……」
スピーカーやケーブルだけでなく、電源タップや果ては電力会社にもこだわるらしい。安定した電流と電圧がうんぬんかんぬん。いろんな沼がありますねってことで。
「む。やはりUGVを使うようだな」
智沙さんの呟きに画面を見ると、ゴリアテの上にカメラを積んだようなUGVが三台、いや四台かな。やっぱりディーゼルか何かで動いてるっぽくて排気が出てる。でも、ケーブルも繋がってて……って映像とか音声とか用かな。
スクリーンの右側に画面が四つ並んで映し出された。各画面の右上に零号機、初号機、弍号機、参号機って……暴走しそうな命名はどうかと。
「お、動き出したね」
左上の入口付近の映像を見ると、四台のUGVが隊列を組んで前進していく。一昨日掘った穴には鉄板が渡されていて、さらにその先の土嚢は真ん中部分を撤去して道を作ってるのね。
「おおお……なんか画面が揺れて見づらい……」
「ずっと見入ってると気持ち悪くなりますよ?」
「大丈夫大丈夫」
まあ、サーラさんなら平気な気がするけど。
キュラキュラと進むUGVはライトを点灯させ、廃坑内を進んでいく。意外とスピード出るのね。モリモリ進んで行った先で道が分岐し、二台ずつに分かれて進んでいく。最初に突入した時と同じで手前からきっちりと確認していくっぽい。
「む、マップが出てきたな」
画面の左下にマップが映し出され、UGVの現在位置が表示される。この辺の地形は前回調査済みだからか、しっかりと描き込まれている。前回救出に行ったあたりからは白紙。
「お昼までにあの辺りまで行く?」
「行くんじゃないかと。魔物が出てこなければ、ですけどね」
どっちにしても、今日は私たちが何か要望できるわけじゃないし、見てるだけだよね。
***
「お? これって翔子ちゃんが作った土壁じゃない?」
「ですね。この先はどうするんだろ……」
そんなことを思っていたら、UGVはそこはスルーして先へと進んで行く。
「どうやら行けるところを先に埋めて行くようだな。それに今開けるのはまずいかもしれん」
「あー、あの中のオークの死体が腐ってそうですもんね。っていうか、あの死体がアンデッドになったりしないですかね?」
「それは大丈夫だよん。あの時、翔子ちゃんの加護が掛かってたからね」
サーラさん曰く、加護が掛かってる攻撃で倒された魔物がアンデッドになることはないそうで。
「ワフン」
「うんうん、ヨミのおかげだね」
ささみジャーキーをあげよう。
「他の通路も今のところ問題はなさそうだな」
手前の十字路をまっすぐと右に行ったUGVも、特に魔物と遭遇することもなく進行中。マップがどんどん出来上がってていい感じ。
あれ? 残り一台——零号機——が十字路のところで止まってるけど? と思ってたところで、左上に副長さんが映る。
「これより零号機のところまで隊員が入り、センサーを設置します」
ああ、なるほど。録画に残すって名目で私たちに伝えてくれてるのね。その後ろにはフルフェイスマスクをつけた隊員さんたちが整列中。
「あれってチョコちゃんのを見てなのかな?」
「ですかね」
前回はポリカ盾だったけど、今回はジュラルミンの大盾。四人ぐらいがそれを持ってて、腰には電磁警棒。
「あれなら盾の下を地面につけて、受ける力を分散できると思うよ」
「へー、それはマルリーさんに習ったやつだっけ」
「そうそう。まあ『地面を確認してからですよー』って言われたけどね」
「そりゃそうか」
ガツっと支えになる感じで大盾を構えられるならって感じなのかな。そんなことを考えているうちに、隊員さんたちが廃坑へと入っていく。例の四人以外はアサルトライフルを持ってるし普通かな……ってクロスボウも持ってるね。
「すごく準備してきてるねえ」
「まあ、前回が散々でしたしね」
「でも、ヨーコが言ってたよ。ばっちり準備万端の時ほど何も起きないって」
それ、私もチョコも思ってて言わなかったのに……
「だから、ちゃんと準備するんだってさ」
「「なるほど!」」
ヨーコさん、聖人すぎる……




