103. 翔子と魔導具倉庫
目の前の景色が一瞬にして変わった。ルナリア様のお城に設置されている転移魔法陣から出た先は……古代魔導具を管理するダンジョンらしいけど何もない部屋。都内のダンジョンでゼルムさんたちを見つけたあの部屋に似てる。
「こちらでございます」
シルバリオ様の声がかかり、そちらを向くと通路へと繋がっており、この先に保管場所があるのかな?
「ゴーレムたちがいるけど驚かないでちょうだいね」
「「へ?」」
「む? 其方らはゴーレムを見たことがないのか?」
「はい、そりゃもう」
私の右肩という定位置に鎮座中のフェリア様。なお、ドライマンゴーが無くなりそうな件については、ディオラさんを説得する方向に切り替えた模様。ガンバッテクダサイ。
「ワフ?」
「ううん、なんでもないよ。行きましょ」
私たちのそんなやりとりを気にせず先へ進む竜族のお二人。ケイさんも知ってるのか無反応で続くので慌てて追いかける。
通路はうちの蔵の地下に似ていて、天井全体が柔らかく光っている感じ。昼光色。しばらくすると、銀色の扉に閉ざされた場所に突き当たった。
「なんかアレ」
「高度に発達した科学は以下略?」
「それそれ」
ここは宇宙船の内部ですとか言われても信じそうな雰囲気。扉は押すと開く自動ドア方式には見えないので何かするのかなと思ったら、
「二人ともギルドカードは持っているな?」
「「はい」」
「この青い線の内側に来てくれ」
ギルカ認証? ケイさんはともかく、ルナリア様とシルバリオ様も持ってるの?
ともかく、言われた通りに足元にある青い線を越えて中に入る。
「認証を」
『認証を開始します。ルナリア様、シルバリオ様、フェリア様、白銀の館関係者四名を確認。解錠します』
おおお! すごい! 立ってるだけで認証とか古代文明ハイテク!
「このような仕組みまで作るとは、ミシャも器用なものよのう」
「「へっ?」」
本日二度目の間抜けな反応をしてしまう私とチョコ。
「これはダンジョンの機能じゃないわよ」
「昔はダンジョンの入り口に警備を雇っていたのですが、ほぼ何も起きない場所に警備でいるというのもなかなかに苦痛なことでしてな」
シルバリオ様曰く、この魔導具保管用ダンジョンはかなり重要な場所なので警備も厳重にしていたらしい。けど、滅多に人の来ない場所を警備し続けるのも……大変だよね。
その話を聞いたカスタマーサポートさん、『空の賢者』ミシャ様が「じゃあ、無人化しましょう」ということで、こことダンジョンの入り口に認証をつけたんだとか。
私たちの世界の知識があるからこそ思いつく感じ? 今のこの認証つきの扉に加えて、警備にはゴーレムが配備されてるんだとか。ダンジョン内を巡回警備してるそうで、認証が通ってないとボコられるとのこと。……怖い。
音も立てずに銀色の扉がスーッと右側にスライドして開き、ルナリア様たちが躊躇なく進む。遅れないようについていった先は巨大な倉庫にしか見えない部屋。
「すご……」
天井がすごく高い。都内のダンジョンの神樹の部屋が上の階層をぶち抜いた感じだったけど、ああいう作りなのかな?
そしていくつも立ち並ぶ大きな棚。多分、古代魔導具が収められてるんだと思うけど、これ上の方の棚はどうやって取るんだろ……
「さて、どこかしらね」
「お姫様、少々お待ちください」
シルバリオ様が一礼し、少し右側へと進むその先には……情報端末? なんか大きな本屋で見たことがあるようなアレがある。
「これ、ひょっとして検索装置ですか?」
「はい。目的の古代魔導具がどの棚のどの場所に保管されているかを調べてくれる優れものですな。これもミシャ様が作られた物です」
マジですごい。私でも思いつきはするだろうけど、そのシステムを構築しちゃうんだ。
シルバリオ様が何やら端末を操作し、しばらくするとその奥から歩いてきたのは……これがゴーレムだよね? なんだか鉄でできたデッサン人形みたいなものがやってきて一礼すると、棚の方へと歩き始めた。
「このゴーレムについて行きましょう」
そう言って後をついていくシルバリオ様。うん、案内してくれるってことだよね。いや、案内だけじゃなくて、物を取ってくれたりもしそう。
ガッションガッションと足音を立てて進むゴーレムはロボットに見えなくもない。その後ろをぞろぞろとついていく私たちだけど、私とチョコは棚にある魔導具がどれも気になってしょうがない。
「ミシャ様はここにある魔導具を全部把握してるんですよね?」
「把握しとるはずだ。一時期ずっと篭っておったしな」
「この棚にあったものを一度全部把握してから整理し直してくれたのよ」
さらっとそんなことをいう二人だけど、それってめちゃくちゃ大変なのでは。あ、ということは……
「私ってここにいたんです?」
とチョコ。
「ええ、そうよ。あなたを格納していた箱があったでしょう?」
「はい」
「あれと一緒にね」
やっぱりあのクローゼットみたいなのはチョコの格納庫だったのね。それ以外の剣とか盾とか鎧とか、色々あったけどあれは別物かな? マルリーさんの盾ってルナリア様の鱗が入ってるとかいう話が『白銀の乙女たち』にあったよね。
ゴーレムの後をついていくことしばし、何度か右折して左折してを繰り返し、かなり奥の方まできた感じ。どこまでいくんだろうと思ってると、ゴーレムが急に立ち止まって左を向く。
「上の方の魔導具どうやって取るんだろ……」
「飛べるんじゃない? チョコも飛べるし」
「ふむ、一理ある」
そんなしょうもない会話をしていると、ゴーレムは棚の柱に手をやって……
ピピピピ…… ウィーンウィーン……
かなり上の方にある棚の一部が前方にスライドし、前に出切ったところで下降し始めた。まさかの棚が降りてくる方!?
「昔、テレビで見たことあるような気がする。SFだなーって思ってたけど、こっちの世界で先に見ることになるとは思わなかった」
「あら、そうなの? ミシャが言うには、あなたたちの世界ではこういう倉庫が一般的だって聞いたのだけど」
「あ、いや、確かに大きい会社……ギルドとか商会の倉庫はこうなってると思います」
六条の倉庫ならこうなってても全然不思議じゃない。っていうかなってるよね。資材管理とかって建築会社でも重要度高そうだし。
そんな話をしているうちに棚が完全に下まで降り、そこにある一つをゴーレムが降ろしてくれる。その形はどこかで見たことがあるようなないような……
「空気清浄機?」
「それだ!」
そういや、コスモクリーナーを取りに来たんだった……




