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王太子妃付き侍女の憂鬱。  作者: なな風
とある一日。
12/17

番外編 時事ネタ in 2/14。

書かなければならないと思った、後悔も反省もしていない!


「バレンタイン?」

「ええ、バレンタインです。」

 今日はバレンタインデーです。


「なにそれ?」

「たしか神話にある小話ですね。地上の一部地域で行われていた習慣に精霊王が目を付けた、でしたか。なんでも異性に甘いものを贈る日、だったはずです。」

「なるほどねえ、だから今日皆落ち着きがないのね。」

 侍女達も隠し持っている様子でしたからねえ。


「特に、好意を持つ異性に対して贈るものを本命、と呼ぶそうです。ついでに告白する者もいるとか。」

 貴族がやることではない気もしますが。


「うーん、私自由恋愛は別にいいけど。まあいいわ。」

 貴族ですから政での役割がございますし。


「政略結婚が大半だからねぇ。というか本人達は自由恋愛と思ってても実はそう仕向けられてた、ってのもあったりするのよねぇ。」

 マジですか。

「本当よ?」

 貴族こわい。

「貴女も貴族の令嬢でしょうが。」

 私の役割はエリューシャ様の侍女ですので。

「……婚期は逃さないようにね。」

 前向きに検討しておきます。


「それはそうと、異性に甘味を贈るんだった。……私もアウルにあげようかしら。」

「いいですね、それ。」

「せっかく贈るんだしなにか面白いものを送りたいわね。」

「……そうですね。サージャルから送られてきたものを使った面白い甘味があったはずです。たしか、チョコ?でしたか。」

「ああ、アレね。いいわね、それでいきましょ。……学院生の時の知り合いが作り出したのよねぇ。」

 まさかの知り合い作。

「あの子ったら『これは魔性の食べ物だ!』って言ってちょっとずつしか売らないのよ?」

 なるほど、プレミアをつけてるんですね。

「……レシピは手に入れておりますので、それを再現してみましょうか。」

 私も食べたいですし。


「そういえばどんな味だったかしら、まだ数回しか食べたことないのよねぇ。」

 なんと。

「……茶色で苦くて甘い、口の中で溶ける物体です。机仕事をしている時に食べると集中できる気がします。」

「……贈り物にして大丈夫なのかしら。見た目的に。」

「私的には大丈夫です。」

「というか、食べてるのね…………。」

 ジト目はやめてください。かわいいです。


「……まあ、いいわ。そうね……、執務中手軽に食べられるような形でお願い。」

「かしこまりました。」

「ついでに私の分もね。」

「心得ております。」

 私の分もね。


「それと、だけど。どうやって作るか見てみたいわ。」

 マジですか。

「かしこまりました。……ですが、少々匂いがつきますのでこの部屋では……。」

「匂い?匂いかぁ。強かったっけ?」

「制作中はかなり。」

 こびりつく感じ。


「……制作途中のものを段階的にお見せすることならできるかと。」

「……わかったわ。ならそれでおねがい。」

「かしこまりました。」





「というわけでチョコ制作といきましょう。」

「なにがというわけでなのよ?」

「そこはお気になさらず。」

 ノリだ。


「まずはこれです。」

「大きな……豆?」

 豆です。

「カカオ、といいます。」

「甘いの?」

「とても、苦いです。」

「これが甘くなるの……?」

 そこは砂糖とミルクの力で。


「えー、まずこれをローストします。この作業はとても匂いが出ますので割愛して。」

「コーヒーみたいね。」

「えっコーヒー知ってるんですか。」

 おっと素が。

「……あの子によく飲まされたわ。」

 なるほどコーヒー派。


 閑話休題。


「……ローストしたものがこちらになります。」

「いい香りね。」

「これの皮といらない部分を取り除いて、砕いてから粉にします。」

「……コーヒー。」

 間違ってはない。


「粉にしたものがこちらになります。」

「これ、淹れ「苦いです。」……最後まで言わせなさい。」

 だってめっちゃ苦いですもの。

「それに油分が多いですから。」

「だめかぁ。」

 まだ気が早いです。


「砕いたものを半分に分けて、片方は油分を絞ります。……絞ったものがこちらです。」

「油分のほうを使うの?」

「ええ、とろけないんです。」

「へぇー……。」

「ちなみに、後でこの搾りかすで美味しい飲み物でもいれますからね。」

「コー「違います。」……ヒーではないのね。」

 ココアになります。


「次にこれをボウルに移し替えます。またこのボウルより大きめのボウルにぬるま湯を張って、お湯が入らないようにしながら湯煎します。」

「おー、溶けてきたわ。」

「溶けてきましたら、砂糖とミルクを入れます。」

「……かなり入れたわね。」

「これでもまだ苦味がありますよ。」

「そうなんだ……。」


「砂糖も溶けましたら、先程絞った油分をいれます。」

「トロトロになったわね。」

「舐めてみます?」

「いいの?」

 ティースプーンに少し付けて渡す。

「……甘苦くて美味しいわ。」

 もう少し甘くします?

「んー、このままでいいわ。アウルはこの方がいいと思うのよ。」

 わかりました。


「ではこれにですね、温度計を突っ込みます。」

「……温度計?」

「ええ、温度計です。……この溶けたものが……45度を保つようにしながら、混ぜます。」

「保たないとどうなるの?」

「ザラつくわ分離するわでとても残念なことに。」

「失敗するのね……。」

「ええ。……混ぜましたら、お湯から出して、氷水を張ったボウルに入れて一回冷やします。」

「冷やすのね。」

「温度計をみて、大体30度より低くなった程度でまたぬるま湯に入れて、30度を越えたくらいで出します。この時に白いものが出ている場合、湯煎の最初からもう一度行います。」

「さっき言ってた分離ね。」

「ええ。やり直しがききますのでなんとかなります。」

「これは出てないから大丈夫ね。」

 いい感じかな。


「ではこれを型に流します。」

「ハート型。」

「殿下に贈るのですよね?」

 問題などありませんよね。

「……そうね。」

 問題なし。


「ではこれを低温保存庫に。」

「固まるまで待つのね。」

「待つ間に先程の搾りかすをすり潰しましょう。」

「美味しい飲み物ができるやつね!」

「ええ。すり潰しましたら、これも低温保存庫で冷やします。」

「これも冷やすのね。」

「とはいえ粉ですからすぐ冷えますので。冷えたら取り出します。」

「速いのね。」

 さて鍋の用意を。


「さて、ではこの粉……ココアパウダーといいますが、これを砂糖と共に手鍋にいれます。」

「ここから飲み物が。」

「もうすぐですから。……冷えたミルクをいれまして、ダマにならないようによく練ります。」

 よく練るとおいしい。

「練りましたら、火にかけて。ミルクを少しずつ足しながら混ぜます。沸騰する前に火から出したら美味しいココアの出来上がりです。」

 とりあえずこれでも飲んでてください。


「甘くていい香りね、いただくわ。」

「御賞味あれ。」

 自分も飲む。うまい。

「美味しい……。あったまるわね。」

「ありがとうございます。寒い時にかなり良い飲み物になるかと。」

「眠れない時にもいいかもね。」

 いいですね、それ。


「さて、チョコが固まりましたよ。」

「出来たのね!」

「ええ。冷えたチョコを型から外して、と。これで完成です。御賞味あれ。」

「いただくわ!……甘くてほろ苦い……これはたしかに魔性の食べ物……。美味しい!」

「有り難きお言葉。」

 苦労した甲斐があった。


「ではこれをラッピングしましょうか。」

 全部食べちゃいけませんよ。

「わかってるわよ。……この箱と……このリボンでお願い。」

「かしこまりました。」

 箱に綿をつめてへこませる。その上に高級な、上質な紙を折って箱形にしたものを入れて、仕切りを入れてチョコを並べる。内蓋、外蓋をして、リボンを巻いて、完成。


「さあエリューシャ様、できましたよ。」

「ありがとう。さあ渡しにいくわよ!」

「お供いたします。」

 いざ征かん。





「アウルー!いるかしらー!」

「ん、エリーじゃないか。どうしたんだ?」

 ……ノック無しで執務室に突入していきましたよ。

「エリューシャ様、せめてノックを……。」

「大丈夫だ、気にしてない。」

 気にしてください。


「アウル、今日はバレンタインよ!」

「ふむ。」

「というわけで甘味の贈り物よ!」

「おお、ありがとうエリー。開けても?」

「ええ!」

「では失礼して。……これは。もしやチョコかい?」

「ええ、チョコよ!しかも手作り!」

(私の)手作りです。

「ほう、それはそれは……。ありがとう、エリーの愛が詰まってるんだね!」

 ソーデスネ。

「さあさあ、食べてみて?」

「ああ、いただくよ。……これは、なかなか……。」

「どう?」

「私好みの甘さと苦味……素晴らしいよ、エリー!愛してる!」

「ありがとう!私も愛してるわ、アウル!」

 …………えー、キラキラ空間再び、です。退散していいですかね。


 ……おや、ノックです。来客ですよ、殿下。

「……入れ。」

 切り替えの速さは素晴らしいです、お二方。しかしまた絶妙なタイミングで来ましたね。誰でしょう。


 ガチャリと扉が開き――






「ハッピイィィィィィィィィィィィィイ!!!!!!!!!!!ヴァァァァァレンタァァァァイィィィィィィィィィィィィン!!!!!!!甘味のおすそ分けだコンチクショーーー!!!!」


 誰、何、この人、白っ、というか箱投げっ!


「チョコ被ったけどいいよなァ!テキトーに分けて食ってくれな!……以上、それだけだ、ハイテンションでお送りしたぜ、じゃーなー!あははははっ!!」


 ……行ってしまった。何だったんだ。誰だったの。というか髪も肌も服もめっちゃ白かった。なに、あの。


 お二方もぽかーんと……ああ、箱はしっかりキャッチしてますね、二つ。


「……なあ、今のって。」

「ヴィリア……よね?」

「ハイテンションモードのな……。」

 ……うっそだろオイ。


「……バレンタイン、って言ってたわね。」

「ああ、チョコ被った、とも言ってたな。」

「……開けてみましょう。」

 開けるとそこには。


「チョコ、だな。」

「蜘蛛、ね。」

 蜘蛛形のチョコ……。

「私のほうは竜だな。」

「あの子らしいというかなんというか……。」

 何故その形を選んだのか。


「まあヴィリアだからな。」

「ヴィリアだからね……。」

 なんですかその納得の仕方は……。


 ……またノックが。今度は誰ですか。

「入れ……。」

「失礼します!」

 殿下今ので疲れてませんか。


「アウル!エリー!さっきここにアイツこなかったか!」

「ああ……来たよ……。」

 これはこれはアクロイ団長。

「アイツいきなり来て箱投げてきたんだが!チョコ入りの!」

「ええ、こっちも同じよ……。」

 同じ手口の犯行が。……というか団長、完全に素が出てます。

「しかも中身がだな!」

「私は竜だった。」

「私は蜘蛛。」

「俺のはこれだ!」

 ……女の人の、人形?あ、メモがありますね。えーと。

「なーーーにが1/12ヴィリアちゃん人形だあんの野郎!!!開けた瞬間の団員の目どうしてくれんだ!!!」

 メモには、『わたしを食べて(はーと)

 なんつって。独り身ガンバ(笑)』と。うわぁ……。


「ああ、またか……。」

「懐かしいわねぇ……。」

「くそ……向こう行ったのに油断した……っ!」

 ……また、なんですね……。


「あの野郎今日こそは捕まえてやる……!」

「頑張ってー。」

「ほどほどになー。」

 お二方、適当です。……団長、行ってしまいました。


「……執務の続きするか。」

「部屋に戻るわ……。」

 今日はもうすでに疲れました……。





 その日、城のどこかから爆笑する声と吼える声が聞こえてきたそうな……。



チョコテロ。作り方はうん、大体で。作るならしっかりしたサイトで調べてね!

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