Honesty ①
今回のテーマ曲はBilly JoelのHonesty です。
いくつか候補があったのですが歌詞の内容が一番合っているかなと…
冴茶ソのほうじ茶は早々に作れる事になった。
契約書の条件とは別に、社長が商談中にインターネットバンキングから先様の口座に1000万円振り込んだので、その分、早く商品化のめどが立った。
後でお礼を言うと
社長は「お前への愛情の証だ」と笑った。
ヤツとの関係は複雑なのでそうはならないが、最初からヤツの会社の社員だったら、少しは感動できたのかもしれない。
あと、この街で“冴ちゃソ”がちょっとしたブームになって『まろやか音』の契約に冴茶ソの注文、ポータブルサーバーの購入予約と、今の私の本業でない所が結構忙しくなった。
特に『まろやか音』の導入はこの街では人任せにはできないので、私自身が作業着を着て設置に行った。
その分、お店の手伝いや家事が疎かになって余りにも申し訳ないので、先の事も考えて
『一甫堂を『まろやか音』の地区代理店にしてマージンを落とそう』
と提案したのだけど…
英さんは笑いながら、しかしマージンを一甫堂へ落す事については、はっきりと断った。
あーちゃんたちの高校へも『まろやか音』の設置に行った。
皆、見に来てくれて
「作業着、男前でカッコいい」とお褒めの言葉をいただき『まろやか音』の周りに集まった記念写真もSNSにUPされた。
久しぶりに見る学校は、自分がJKだったころと全く違う世界に映った。
この学校は2部制と聞いて、思わず願書を取り寄せたくなったくらいだ。
私より少しだけお姉さんの加奈子さんも私を可愛がってくれた。
彼女は日勤夜勤明けの長時間勤務後に
「こんな時って妙にテンションアゲアゲになるのよ!!」
と英さんとおやじさんから無理やり私を奪ってショッピングに連れ出した。
主に、着た切り雀の私の服を買いに出たのだけど…
「こういうの アイツ受けするのよ」
と私なら絶対買わないようなスカートだの、ブラウスだのを選んでくれた。
あ、アンダーもだけど…
「ひょっとして英さんに見られたことがあるんですか?」と聞いたら
「あ、ヤキモチ焼いた」とケタケタ笑われた。
アンダーについては
『それはさすがにムダかな』という感じもうっすらとはしたが、
もし万一、カレがその気になってタイミングがあえば…
そう考えると、
躊躇いながらも買ってしまう自分がなんだか可笑しくてニヘラと笑っていた。
それを加奈子さんに見られて、肘でウリウリされた。
そうやって買い込んだショ袋を脇に、加奈子さんとお茶しているのが、なんだかとても不思議だ。
当たり前のように幸せな毎日が積み重なって、連綿と明日へ繋がっていく…
そんな中に自分が居ると錯覚してしまう。
結果的に嘘をついているかりそめの世界なのに…
この様に日々忙しくはしていたが、おばあちゃまのお世話は時間を惜しまずにやっていたので…
津島のお母さまには時々しかられた。
「いくらやることがたくさんあっても少しは休みなさい! そうでないと大切な人への所作の時にも、心が置いてきぼりになります」と
お母さまからは度々ご自宅に誘われたが、なにかで噂が立つと申し訳ないので、それは固辞した。
その代わり住職様のご厚意に甘えて、お庭の見える部屋でデートした。
大抵、お母さまが先に来ていて、お庭を見ながら編み物をなさっていた。
お母さまは、私を本当の娘として接してくれた。
私がついだらしなく座っていると、膝のあたりをピシリ!と叩かれた。
前橋のおばあちゃまもそうだったが、とにかく姿勢よく正座なさる。
お母さまが「大丈夫! さえならすぐできる」と叩いた膝をさすってくれると私はひだまりのネコのようにグニャグニャになってしまい、結局、頭を撫でてもらっていた。
あと、編み物の毛糸を使ってあやとりも教えていただいた。
こんな些細な遊びも知らない私を育て直してくれるように、お母さまはいつもいつも優しい眼差しを私に向けていてくれた。
2025.9.17差し替え
次回は『なぜ英さんが女性が苦手なのか』が書けると思います。
冴子さんには辛い事になりそうですが…
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