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テイマー少女の逃亡日記【コミカライズ連載中】  作者: 一色孝太郎
第三章

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第三章第10話 バレちゃいました

2021/10/15 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

「あ、えっと、その……」

「そのヘラジカはどうしたんですの?」

「えっと、その、ち、血抜きを……」

「そうではないんですの。ローザさんがやったんですの?」

「え、えっと、えっと、はい」

「どうやったんですの? さっきまでそのヘラジカはなかったですの」

「そ、それは……」

「それは?」

「え、ええと……か、鞄から出したんです!」

「……」


 あ、あれ? ネダさんが呆れたような表情をしています。


 それからつかつかと歩いてきてあたしのバッグを指さしました。


「誰がどう見たって入るわけないんですの。それとも、その鞄は魔法の鞄なんですの?」

「え、えっと……」


 魔法の鞄ってなんでしょうか?


「ご存じないんですの? 魔法の鞄は、古代の遺跡からごくまれに見つかることがある貴重品ですの。【収納】のように中にたくさんの物をしまえる特別な道具ですの」

「う……」


 あたしがそんな貴重品を持っていたら絶対おかしいですよね。


 ど、どうしましょう……。


「あ! ということはもしかして、ローザさんは【収納】を持っているんですの!?」

「っ!?」


 ば、バレ……ちゃいました?


「……その表情は図星ですの」

「うう……」

「このことは誰が知っているんですの?」

「えっと、その……」

「誰も知らないんですの?」

「はい」

「なら、誰にも言っちゃダメですの。それから、レジーナ様が戻ってらしたら相談するんですの」

「え……?」


 これ以上知っている人を増やしちゃって大丈夫でしょうか?


 あたし、奴隷にされたりしないでしょうか?


「なんて顔をしているんですの? レジーナ様はローザさんの後ろ盾ですの。相談しないほうが失礼ですの」

「そ、そう、ですよね」


 ううっ。でも、やっぱり心配です。


「あ、いたいた! ネダ様~! 釣れました……って、ええっ!? ローザちゃん!? そのヘラジカどうしたの!? さっきまで持ってなかったよね?」


 リリアちゃんにまで見つかっちゃいました。


 でも、そりゃそうですよね。


 ああ、もう! あたしのバカ! どうしてこんなところで血抜きしようなんて思ったんでしょうか?


 というか、どうして早く収納にしまわなかったんでしょうか?


 ううっ。後悔先に立たずです。


◆◇◆


「そう。ローザ。よく打ち明けてくましたわね。平民が【収納】を持っていると知られたなら、悪い連中に狙われることでしょう。でも、こうして教えてくれたおかげで対策ができますわ」


 ヴィーシャさんと一緒に戻ってきたレジーナさんに【収納】を持っていることを伝えると、レジーナさんは優しく笑ってそう言ってくれました。


 ただ、なぜか王太子様たちまで一緒にいるんです。王太子様はやっぱりあたしの胸をじっと見ていて、ものすごく気持ち悪いです。


「ねえ? 殿下!」

「ぐあっ!? お、おい! レジーナ、踏んでいるぞ」

「わざとですわ。今大事な話をしているんですのよ? 一体何を見てらっしゃるのかしら?」

「わ、悪かった。悪かったから……いてっ」


 悪かったと言いながらあたしの胸に視線を向けようとした瞬間、レジーナさんは王太子様を踏んでいる足に体重を掛けました。


「わ、わかった。ともかく、この件は俺だけでは判断できん。父上の判断が必要だ」

「そうですわね。使用人たちにも堅く口止めをしておきますわ」

「ああ。頼んだぞ。ところでレジーナ」

「なんですの?」

「いい加減、足をどけてくれないか?」

「……本当に反省しているんですの?」

「あ、ああ。悪かった。もうしないから許してくれ」

「……」


 レジーナさんがいかにも信用ならないといった表情で王太子様を見ています。


 ……もしかしてレジーナさんのほうが王太子様より偉いんでしょうか?


「仕方ありませんわ。許して差し上げましょう。それからリリア、ヴィーシャ、ここであった全てのことは他言無用ですわよ?」

「はい」

「もちろんです」


 リリアちゃんとヴィーシャさんは真剣な表情でそう言って頷きました。


「レジーナ嬢。私からもよろしいですか?」

「ダメですわ」

「え!?」


 いつもの目だけ笑っていない笑顔ではなく、ちゃんとした笑顔でそう言ったドレスク先輩の言葉をレジーナさんがにべもなく却下しました。


「どうせエルネスト様のことですもの。ローザに【収納】の使い方とあわよくば魔法の使い方を教えてもらおうとしていますわね?」

「なっ!? ど、どうしてそれが……」

「一体どれだけの付き合いだとお思いかしら? それに、一体いつになったら興味のある相手にもちゃんした笑顔で話せるようになるんですの? あの顔で話しかけられたら平民のローザは怖がるに決まっていますわ」

「そ、それは……」


 ええと? どういうことでしょうか?


「ローザ。エルネスト様は魔術にしか興味がないただの魔術バカなんですわ。そして興味がある相手と話そうとすると緊張して、目だけが笑っていない変な笑顔になるんですわ」

「へ?」

「あの顔は、わたくしも空恐ろしいと思いますわ」

「あ、はい」


 ということは、レジーナさんも昔あの顔で根掘り葉掘り聞かれたんでしょうか?


「あ、でもあの顔をやめてくれたらお話くらいなら……」

「本当ですか!?」


 ドレスク先輩がそう言って身を乗り出してきました。


 もしかしたら、レジーナさんの言っていることは本当なのかもしれません。


「は、はい。でも、その、あの変な笑顔はやめてほしいんです」

「……ぜ、善処しましょう」

「では、わたくしの立ち合いで一席設けますわ」

「レジーナ嬢! ありがとう! ローザ嬢も!」


 そう言ってドレスク先輩はあの目だけ笑っていない笑顔であたしに微笑みかけてきたのでした。


「いてっ! レジーナ嬢! 踏んでいますよ!?」

「踏んでいるんですわ!」

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― 新着の感想 ―
鑑定は秘密です 種族も秘密です
[一言] 王族に知られるとか碌な目に合わないイメージしかねえ(王族に対する不信
[一言] 全然秘密にならない秘密、これから全国に知れ渡るでしょう
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