故郷の村のもふもふな奇祭がなくなって十余年後、俺の住んでいるアパートに変なおっさん共が現れた。
なろうラジオ大賞用小説第十二弾。
俺の生まれた村には変な祭りがあった。
村の中心にある寺に祀られてる七体の地蔵に、お盆の期間中、村人全員の合作のカツラをかぶせ、それを見つつ宴会をするという奇祭だ。
なぜそんな祭りがあるのか。
子供のころ思ったが、その答えを知る前に俺は家族と引っ越し……そのあと村はダムの底に沈んだ。
それから十余年。
俺は親元を離れ一人暮らし中だ。
場所は東京。家賃が安いボロアパート。
不便だが、充実した生活を送っている。
しかし七月中旬の、夜だけ雨が降る変な日々のある晩の事。
突然窓の外からバンッと、何かが叩きつけられる音がした。
パジャマに着替えた直後だった俺は、まさか雨どころか風も出て何か飛んでぶつかったかと思い窓の外を確認した。
――見知らぬおっさんがいた。
ハゲ頭と無表情が特徴の、中年のおっさん。
雨でずぶ濡れとなったそいつが部屋の窓に自分の右手を押しつけていた。
それも一人じゃない。
そのおっさんの背後には六人の、同じくハゲ頭で無表情のおっさんがいる!
というかその窓は三階……しかもベランダも何もない、ただの壁しかない面だ!
あいつら、掴む物が何もない所でどうやって俺を見てるんだ!?
というか何が起こっているんだ?
あまりにシュールでホラーな光景なため、言葉が出なかった。
すると、そんな反応の俺に苛立ったのか、突如おっさん共は……一斉に両手で窓を乱暴に叩き始めた。
それは雨の音を上回り、豪雨ではないかと思わせる大音量の暴力となった。
俺は、どうしたらいいのか分からない故の混乱と恐怖のあまり……すぐベッドに逃げた。
そして毛布を深くかぶり耳をふさぎ、夢から覚めろと心の底から思った……その時だった。
先ほど見たおっさん共の顔が、子供の頃に見た七体の地蔵の顔に、それぞれ似ているのに気づき……。
そのまま緊張で気絶したのか、いつの間にか朝だった。
窓にはもうおっさん共はいなかった。
だけど村の地蔵と関係がありそうだと思い、その地蔵がある寺の住職の孫で俺の同級生でもある男に電話で訊いてみた。
すると俺の推測通りおっさん共が地蔵と関係がある事が分かった。
同級生によればあの地蔵は、ハゲてない頭への憧れを持ったまま亡くなった侍を模したモノらしい。なんじゃそりゃ。
とにかくおっさん共は、その侍の幽霊だったのかもしれない。
それもカツラをくれなかったために出た……。
近い内に俺は、村に帰るつもりだ。
ダムの底に買ったカツラを沈めれば、たぶん大丈夫だろう。
最初は、山ガールが山で首輪付きの犬と出会って、最終的にその犬の案内により死ぬ話や、家の壁から出てた、もふもふした何かの正体が、前の家の持ち主(連続殺人鬼)に殺されて、その家の壁に埋められた被害者の頭髪だった事実が明らかになる話……などを予定してましたが、どこかで聞いたようなパターンだったため、誰も聞いた事がない変なホラーを目指してこんな話になりました。
ちなみに、主人公が狙われたワケですが……沈んだ村に一番近い場所にいたのが主人公だった、という事で。
あと、上記の没ネタを書かれる方がもしもいらっしゃればご一報を。
必ず読みに行きます。




