第112話:大阪(たいはん)へ
ちょっと体調崩したのでインターバル的な内容です。
さて、我々一行は新たに虹香さんを加えて大阪の街へと……いや、その前にもう一度晶龍君とのお別れだね。
「またな」
「うん」
ぼくらの間ではこの程度で十分。というか名残惜しそうにしたらきっとパイリンさんに抉られてしまう。
パイリンさんは……あ、にこやかに手を振ってくれてるから大丈夫そうだね。リンファさんがちょっと納得いってないみたいな感じ。でもリンファさんは旅に出すわけにはいかないんだよね。
そのまま御宇を離れて江戸に向かう。今回の報奨金が出るらしい。まあ正確には晶龍君やパイリンさんへの褒美なんだけど、二人ともぼくらに渡してくれって辞退したんだと。
まあ正確にはぼくじゃなくてマリエさんな。さすがにホーンラビットに渡そうというのはなしでしょ。
江戸に着くとすぐに上様に呼ばれた。門番さんが取り次いでくれて、先にはモンドさんが居たからね。
「おお、やっと到着したでござるか」
「あはは。お世話になります」
マリエさんがポリポリと頭を搔く。そう、一人というか一匹増えてるからね。
「マリエ、こいつは?」
「モンドさんって言って私たちと旅をした人だよ」
「ふぅん。まっ、マリエの伴侶にしちゃあちょっと歳食ってんな」
「ひょわっ!?」
虹香さんは蛇の姿のまま流暢に喋る。念話ですらない。
「へ、へ、へ、蛇が喋ったァてござる!」
遅れてモンドさんが驚く。いや今更かーい。でもまあモンドさんにはちゃんと話しとかないといけないと思うんだ。ぼくじゃ無理だから篝火さんよろしく。
「やれやれしょうがないでありんす。幸之助殿、この者は我らの新しい仲間で虹香と申しんす。よろしくしてくりゃれ」
「あー、はい、虹香でぇす。よろしくね」
「……うむ。拙者は三芳野幸之助と申す。以後お見知りおきを」
自己紹介が終わって、そのまま城へと案内される。城の警備兵には虹香さんが止められたけど、一応ボディチェックをマリエさんがする事で許された。
みんなで上様の前に行く。もちろんぼくらは平伏しないといけない。まあぼくと虹香さんは平伏しないけど。
「一同、面をあげぃ」
元信ってやつがやってたのを別の人に代わったらしい。そりゃあそうか。いわゆる謀叛だもんね。
「此度は、謀叛や勝手な軍事行動を止めることが出来て大儀であった」
「ははーっ!」
「マリエ殿、篝火殿、褒美をそちらに渡さねばならんのだが、何か望みはあるかな?」
「私どもは前回もいただきましたのでこれ以上は」
「そうは言うても今回はまた別な話だからのう。そうだ、お主ら大阪の街に向かうのであろう? スムーズに処理出来るように手形の裏印を押してやろう」
手形の裏印があるだけで何が違うのかは分からないけど、上様が堂々と褒美にくれるものだきっと役に立つのだろう。
で、残りのものには食事で酬いるみたいに言われた。そうだね。ご飯は大事だと思う。ぼくも肉類を食い溜めておかないといけないかもしれないから。
そんな感じで、宴が開かれた。お酒はぼくらは飲まないので、モンドさんと篝火さんで飲んでるみたい。あと、虹香さんもぺろぺろ舐めてる。そんなに好きなのかな?
「ねぇねぇラビ? あんたホーンラビットなのにお肉食べるの?」
「あ、ああ、うん。なんか食べといた方が良いような気がするから」
「そっかぁ。まあ食べれるなら食べといてもいいんじゃないかなぁ。なかなか良いお肉だし」
虹香さんはそのまま消えていった。喋りながら飲み食いしてるので咎められることはなさそう。
ぼくはお肉を頬張る。うん、まあ美味しく感じるのは間違いない。身体の奥底から何かが呼んでる気もする。食い溜めだ。おー!
翌日。出発の予定は朝だったけど篝火さんとモンドさんが二日酔いでダウン。虹香さんは平気そう。ウワバミってやつかな、蛇だけに。
マリエさんの看病で夕方には回復したものの、この時刻から出るのはちょっとやめといた方がいい。今夜の宿は三芳野邸。幸太郎君がぼくに飛びついて、その後虹香さんを発見し、ぐるぐる回す。うん、ぐるぐるだ。
「めぇーがぁーまぁーわぁーるぅー」
それをものともせずに振り回し続ける幸太郎君。将来大物になりそうだ。その夜は幸奈さんが幸之助、モンドさんとの馴初めを語ってくれました。前も聞いた気がする。
翌朝、幸奈さんがぼくらに火打ち石をカチカチとしていた。えっ、燃やすつもり?
「これは切り火と言いまして、厄災よけのおまじないです」
どうやら門出にぼくらの無事を願ってやってくれたみたいだ。前はやってもらわなかったんじゃ? ああ、旅が長くなると思ってなかったのね。
斯くしてぼくらは大阪の街へと向かったので……あ、幸太郎君? さすがに虹香さんを放してあげてくださいね。




