口を滑らせる
「ディアナ様。カイトは考えなしに魔法使いに対して、提案をするような者ではありません。何か気付いた事があったはずです」
メアリはカイトを庇う言葉をディアナに告げた。カイトが馬鹿にされた事に彼女は腹を立てたのかもしれない。
『主であるメアリの言葉を嘘にさせないために、君の考えをちゃんと答えるべきだ。まぁ……それよりも先に問題はあるか』
「カイト……ハァ……従者に名前を付けていたとは。聞かなかった事にしておきます。従者を一人しか取らない貴女であれば、考えられなくもなかったですからね」
「ディアナ様」
死神が言った問題とは、メアリが数字の壱ではなく、カイトと名前で呼んでしまった事だ。
ディアナは溜息を吐きながら、メアリが従者に名前を付けていた事を誰も言わないと告げた。
それは今が協力関係になっているのもあるだろう。
「特別な存在であるなら、それだけ危険が付き纏います。名前を数字で呼ぶのは、魔法による呪いをかけにくくするためでもある事は貴女も知っているはず」
「……はい。皆が従者を数字で呼ぶからこそ、特定の従者を呪い殺すのを難しくさせている。名前は相手を限定されますから」
従者を数字で呼ぶのは物扱いと同義であるのもあるが、簡単に呪い殺す、操るのも防ぐためでもあるらしい。
名前を付ける事はメリットよりもデメリットが高い。それでも名前を付けるのは人間のように扱う事を意味しているのだろう。
「理解しているのなら良いのです。私も昔……最初の従者に名前を付けた事がありますから。その結果……死にましたよ」
「それは何者かに殺されたのですか? それともディアナ様を庇ったとか」
「違いますよ。私が殺しました。従者でありながら、別の女と……私を裏切ったのですから。気に入った者でも、一線は引くべきなのです。名前を付け、裏切られた時は絶望でしかありません」
従者に名前を付けた事で特別視され、それを弱点として、敵対者に狙われる可能性がある。
だが、名前を付けた従者に裏切られた場合、主にとっては一番のダメージになる。
大事にしたところで、魔法使いと従者は主従関係。主が愛しても、従者がどうなのか分からない。命約も裏切りをなくすために作られたのかもしれない。
「……大丈夫です。彼は私を裏切る事はありませんよ。命約だけでなく、呪いも掛かっています。私がいなくなれば……」
メアリはディアナに嘘を吐いた。命約もそうだが、呪いについて。彼女がカイトに付けたのではなく、彼がメアリを庇って受けたもの。
メアリがいなければ、病気もとい呪いが進行するのは確か。彼女はそれを治すために回復魔法を必要としているのだが、それをディアナは知る由もない。




