安全策
「もしくは誰かに教えて貰った……それだったら、怪しいのは三人なんだけど、一人はアンタのお陰で除外してもいいわね」
誰かが侵入者に部屋割りを教えた。キスが怪しんだのは三人。その一人がメアリのお陰で除外されたとなれば、一人しかない。
館の主の従者である零だ。彼女はメアリの感視によって、侵入者の存在を知らないと判断したからだ。
「……彼女の事ですよね。残り二人はゴールド=ゴールとアルカイズ様ですか」
メアリが零の名前を出さなかったのは、従者三人がお茶と果物を持って、食堂に戻ってきたからだ。
『三人での会話はなかった。キスとメアリの会話に聞き耳を立てていたのかもしれないな』
死神は零、三、七に怪しい会話が無かった事をカイトに教えた。
「その通りね。二人が姿を見せてないのが理由よ。アンタ達の主を疑うのは仕方ない事だから」
キスは零と三の主が疑われるのは仕方ない事だと口にはする。
「この場にいない以上、疑われるのは仕方ありません」
「犯人扱いされてないだけ、ましだと思っておきます」
零と三は主が疑われている事に対して、文句を言い返さなかった。
疑われるのは当然。従者とはいえ、そこまでの信用はないのか。もしくは、主ならやりかねないと考えているのか。
犯人と断定されないだけ良かったと本当に思っているのかもしれない。
『腑に落ちないが……どちらかを選ぶのなら、アルカイズになるな。ディアナを殺すにあたって、部屋割り以上の情報が必要になる』
死神が選んだのはアルカイズ。だが、敢えて言うのならであり、どちらが正解とも思ってないようだ。
『今回、侵入者は無差別ではなく、ディアナを狙っていた』
「そうですね。メアリ様とキス様もそう思っているのではないでしょうか。ディアナ様以外が眠らされていたわけですから」
無差別というのは、鏡の転移をしたのが十だった。違う誰かだとしても、殺されていたはず。
『なら、そのディアナを安全に殺す方法は何だ?』
「安全に……ですか? 反撃されようにするんですよね? 後は……姿を見せないとか?」
死神が言う安全な殺害方法。相手に反撃させないのはある。姿を見せない、正体がバレないようにするのも挙げられる。
『その通り。相手に気取られないのが一番。それをするのなら、ディアナも眠らせればいい。魔法使いを殺すのに、鍵を開ける魔法の一回で済めば儲け物でしょ』
メアリとキスを眠らせるのに成功したのなら、それをディアナにも使えばいい。
そうすれば、鍵を解除する魔法だけで十分。眠った相手に包丁を刺せば終わりだ。
『ただ……侵入者はそうしなかった。ディアナが中に招き入れるだけでなく、反撃もされないという事が分かっていなければ出来ない事だ』
ディアナを眠らせるよりも安全だと、侵入者は判断したわけだ。
『それにだ……侵入者がアルカイズからディアナの情報を得て、それをエサに彼女の部屋に招き入れられるとする。そうなるとディアナは無防備どころか、侵入者を殺しに掛かるはずだ』
アルカイズだけでなく、ゴールド=ゴールが情報を渡したとして、彼女は無防備になる事はない。




