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何もない部屋


『廊下と違い、何もない……シンプルな部屋だな。従者の部屋だと言われても、おかしくないのではないか?』


 死神はメアリの部屋の中を見て、素直な感想を口にした。


 メアリの部屋は二階の一番右奥に位置しており、死神が用意した地図が記した場所と変わる事はなかった。


 前、隣の部屋は空室にするようにしているようで、斜め向かいにディアナの部屋がある。階段手前にあるのがアルカイズの部屋であり、キス、ディアナ、メアリと続いている。


 その廊下を通る際、壁には謎の文様が描かれているだけでなく、絵や壺等の美術品も置かれていた。


 勿論、カイト達はそれに触れる事はなかったが、飾るにしても、美術品は壁の文様とはまるで合ってなかったのだが……


 それを見る限り、メアリ達に用意された部屋も独特な感じになってるかと思いきや、全くの逆。


 用意された部屋には何もない。ベッドやクローゼットもなければ、鏡や窓もない。あるのは時計だけ。まるで牢屋のようにも見えてくる。


 カイト以外の従者達は部屋の準備をしていたという話だったが、この現状を見ると準備というよりも、片付けをしたのではないか。


 その答えをカイトが死神に告げなかったのは、メアリの行動ですぐに分かったからだ。


 彼女は馬車を入れた鞄の中から、机やクローゼット等を取り出し、元の大きさに戻した。


 部屋に何もなかったのは、魔法使い自身が部屋をカスタマイズしやすいように。


 従者達がしたのは、部屋にあった物を別室に移動させたのだろう。前と隣の部屋は空室にした意味がそれだ。


『なるほど……自身の部屋と似た感じにして、落ち着かせるためか。枕を変えると眠れない者もいる……という知識はある。それと同じ事だな』


 この館だけが特別ではなく、大半がそうであると、カイトは付け加えた。


『鏡は魔法に利用しやすく、覗き見や移動手段等にも使えるのか。窓がないのも、簡単に侵入を防ぐためとはな』


 極力魔法を使うなと、零は伝えていたが、こういう部屋が用意されている時点で、どの魔法使いもする事であるから、問題ないのだろう。


 そんな部屋の中で、唯一時計だけが残されている事に違和感がある。


 カイトもそれを感じ取り、メアリよりも先に時計に触れてみた。勿論、その後に壁や床、天井も調べる。


 彼女は用意された部屋に触れるのは問題ないと言っていた。


 ディアナ達は自身の従者が準備をしたが、メアリだけが違う。カイトが一度調べようとするのは当然だ。メアリ達が行方不明になったというのは事実なのだから。


「時計は……何も問題なさそうです。時間も下の階と同じだと思います。他に怪しい箇所は」


「魔力も感じないので問題ないでしょうね」


 メアリが先にそこは指摘する。カイトが魔法を使えない以上、魔力関連は彼女が注意するしかない。


 他の魔法使いであれば、知っていながら、使い捨ての従者で試す場合があるだろう。

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