深刻なボケ不足
「今日はいろいろお手伝いして疲れました」
「なんか悪いね。お客さんなのに雪かきだったり夕飯の手伝いだったりさせちゃって」
「いえ、私からお願いして手伝わせてもらっているので。これもいい経験です」
「…………」
「えっ、なんで泣くんですか!?」
「ごめん。君からそんな言葉が聞けることに感動して……。実は君はいつもの彼女の双子の妹なんじゃないかって気がしてきた」
「そういうことにしていただいても結構ですよ? 妹が姉の彼氏を奪おうとしているのかもしれません。あなたは私と姉、どっちがいいですか?」
「君……って言いたいけど、なんか調子狂うんだよね。僕には勿体ないくらい出来すぎてて、自分に自信が無くなってくるよ。僕が君んちにお邪魔したときとは大違いだ。だから僕には君のお姉さんくらいがちょうどいいのかもしれない」
「それは謙遜ですよ。こんなものはただの虚飾ですから、誉められたことではありません」
「……本当にボケないね、君。この調子であと何日過ごすんだろう。今はまだいいけど、そろそろ笑いがないと間がもてないよ」
「む、無茶ぶりはやめてください。我慢してるんですから」
「そんなとこまで我慢しなくていいよ。なんなら僕が何かネタふろうか? それでショートコント的なのやろう」
「漫才しにいくわけじゃないって言ってませんでしたか?」
「ショートコント、年越しジャンプ」
「勝手に始めないでください」
「もうすぐ年越しだけど、去年の年越しって何してた?」
「えっと、普通にテレビ見て」
「ショートコント、『年越しジャンプ』」
「え? あ」
「もうすぐ年越しだけど、去年の年越しって何してた?」
「……地球にいませんでした」
「ジャンプしてただけだろそれ! 中学生か! もっと他にあるでしょ? 年越し蕎麦とか二年参りとか」
「年越し蕎麦は食べてましたし二年参りにも行ってましたしゆく年くる年見てました」
「どれだけ一度にやったんだよ! テレビ見ながらお参りしつつ蕎麦食べながらジャンプしたの!?」
「夢の中で」
「寝てただけじゃないか!」
「……これで満足ですか?」
「ふぅ、ありがと。たまにはこうして突っ込まないとね。なんか久しぶりな気がしていつもより激しくなっちゃった……って、なんで僕がストレス発散させてもらった感じなんだ」
「すみません。私のせいで余計な気を使わせてしまって」
「え、いや、そういうんじゃないから気にしないで。僕のほうこそごめん。君の気持ちも考えずに突っ走っちゃって。嫌だった?」
「いえいえ。でも差し出がましいことを言いますと、年越し蕎麦は年越し前に食べるものです」
「まさかのダメ出し」




