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2024/2024

マッドシェフ

 雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。

 そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。




「はい、ではね、今回はですね、つちざんまいということで、土食に、挑戦してみたいと思いまーす」


「うん、なんでちょっとユーチューバーっぽい始め方なのかな?」


「さて、こちらに用意致しましたのは、主に土で作った土料理でございますー」


「すしざんまいポーズをするな」


「いかがでしょうか?」


「どうって……もうちょっと料理っぽく作れなかったの? 幼稚園の砂場でおままごとしました的な見た目のやつばっか」


「先に注意点を申し上げておきますが、今回使った土はちゃんと食用のものを用意しました。皆さんはくれぐれもそのへんの土を拾って食べないように」


「食べないよ。皆さんって誰だよ」


「では、さっそく試食していただきましょう」


「僕がいただくんだマジで。君、自分では味見した?」


「まずはこちら!」


「聞けよ。どこ向いてしゃべってんだ」


「土のタルタルステーキでございますー」


「バレンタインデー関係ないなぁもう」


「新鮮な土を丹念に手ごねして成形しました。では一口、どうぞ」


「……土の匂いがする」


「それはまぁ土ですからね。ウンコの匂いがしたらヤでしょう?」


「嫌に決まってんだろ! 食事中だぞ! ……食事中なのかなこれ?」


「つべこべ言わず食べて食べて。あーん」


「ぐ……。味は……特にないな」


「はい、特に味付けはしてません。まずは素材の味を存分に楽しんでください」


「だからその素材の味がないんだけど」


「では次のお料理。定番! 泥団子でございますねー」


「料理じゃなくて砂場遊びの定番だろそれは」


「なんの変哲もない泥団子に見えるでしょう? 一口かじってみてください」


「ん」


「なんと中に! 土が入ってるんです!」


「まったく期待を裏切らないな。あとジャリジャリする」


「内側の土は少し粒大きめの土で作ってあります」


「これ、歯の表面削れない?」


「土と一緒に歯も食べられるなんてお得ですねぇ! ギャアッ!」


「すまない。ちょうど手元に投げやすいサイズの泥団子があったからつい」


「食べ物を粗末にしちゃダメでしょうが!」


「食べ物じゃねぇだろコレ!」


「次はちゃんと土以外も原料に使ってます。デザートの土プリン。砂糖を溶いた卵を土と混ぜてじっくりと焼き上げました」


「土器じゃねーか!」


「だってプリンだったら焼かないと……」


「製法まで真似しなくていいよ! ゼラチン使え!」


「それだと土プリンじゃなくて土ゼリーでしょう?」


「土ゼリーでいいよ! なんでプリンにこだわるんだよ!」


「見た目的にチョコレートプリンっぽくなるじゃないですか」


「いや見た目は焼き物だよ。こんなもん食べたら歯ぁ欠けるわ!」


「ドレッシングをかければふやけます」


「プリンにドレッシングはかけないだろ! そこ路線外れていいのか……って泥水じゃん!」


「泥ッシングです。ぶぷぷーっ」


「ハハハ泥ップキックがお望みかな?」





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