復活の日
雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。
そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。
「やー、私が体調不良のあいだ家事育児頑張っていただきありがとうございました」
「……おい」
「お世話になったぶん、今日からバリバリ働きますよー!」
「いや、おい」
「まずは晩御飯の用意ですね。肉まんでいいですか?」
「冷食じゃねーか! いや、そうじゃなくてオイ!」
「なんですかさっきからオイオイオイオイと。私はオイなんて名前じゃありませんよ関白様」
「そんな熟年夫婦みたいなやり取りがしたいわけじゃなくて! なんでそんなサラッと再開してるの!?」
「サラッと? 再開?」
「とぼけるな。あたかも昨日の続きですみたいな雰囲気にしてるけど、前回の日付を言ってみろ」
「2月11日ですよね?」
「2018年のな! で今日の日付は?」
「2月12日です」
「2019年のな!」
「ま、よくあることですね。一年間違えるくらい」
「ないわ!」
「我々が冷凍睡眠している間にそんな時間が……」
「強引にもほどがあるSF展開やめろ!」
「さぁいよいよ平昌オリンピック開幕です」
「しれっと2018年の2月に戻そうとするな!」
「はぁ……もう無理矢理な繋ぎ方しかできなくなっちゃったじゃないですか。さっきせっかく気を利かせて前回の次の日っぽくなるように再開したのに」
「小賢しいよ! まずさ、なんか言わなきゃいけないことあるんじゃないの? 一言だけでもさ」
「あけましておめでとうございます?」
「違うし遅ぇ!」
「メリークリスマス!」
「戻るな!」
「はいはい。愛してますよちゃんと」
「そういう言葉も求めてない! なんか腹立つな、そのウインク!」
「なんですか、もう」
「一年もほったらかしにしたことについてだよ! 一言もないの!?」
「無いです!」
「断言」
「書き溜めも無いです!」
「居直り」
「あ、だってほら去年の抱負は『なるべく現実に目を向けること』でしたから、ね?」
「現実見すぎ! いま思いついたくせに伏線回収だと言わんばかりなドヤ顔やめろ!」
「そもそも前回言ったじゃないですか。これからは隔年更新だって」
「毎年更新だろ! いや毎年更新もおかしいけどな!」
「あれから一年ですか。ここも変わってしまいましたね……」
「数年ぶりに故郷の町に戻ったふうに……。そんな懐古するほど変わってないよ。むしろ変化してるとこ見つけるのが難しいくらい」
「ランキングの順位とか、変わってしまいましたね……」
「一年も経てばそりゃ変わるさ」
「人気のジャンルは相変わらずのようですね……」
「嫌みったらしいな! 君がわからないだけで少しずつ変化はあるんだよ」
「一年も経ったら日常モノブームとか、シチュエーション・コメディブームとかが来ててもいいものを」
「ブーム来てからノコノコと顔出すのか」
「ずっと前から日常モノやってましたもん」
「甲子園出場決まった後から練習見に来てデカイ顔するOBみたいだな」
「とにもかくにも、今は少し余裕があるので適当なペースで更新しようと思うんです」
「とか言って、また一年経ったりして」
「新しいですね。毎年一日分ずつ進むスタイル。そしたらいつか日常コメディブームが」
「通り過ぎていく」




