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2020/2024

おむつ入学

 雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。

 そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。




「ゲホッゲホッゴッホッ……うぅ」


「咳酷いね。ほら、プリン買ってきたよ。これ食べたら薬飲んで、今日はなにも考えずにぐっすり寝ろ」


「ありがど……ございまず……」


「急に風邪ひくなんてね。季節の変わり目に無理がたたったんだろう。まぁインフルエンザじゃなくてよかった」


「ずみまぜん。あなだに子育てと……家事と両方、やらぜでじまっで。仕事だっであるのに……」


「仕事は休んだからいいよ。こういうときのための有休だ。家事はもともとできるし、文の面倒見るのもいつものことだ。とにかく君はなにも心配する必要ないから、安静にしてて」


「……あなだど……ゲホッ。あなだど結婚じでよがっだ……」


「風邪のせいかいつもより感傷的だな。うん、僕も君と一緒にいられて幸せだよ」


「わだじはなにもじであげられないのにぃ。やくだだずでごめんなざい……ごめんなざい……」


「どんだけ気弱になってるんだよ。子育ても家事も普段は君がしてくれてるだろ」


「文ぢゃん、いまどうじでまずが」


「もう寝たよ。君がいないせいか、いつもより寝つき悪かったけど」


「ずみまぜん。どごろで、もうひどづおねがいが……」


「なに? 僕に聞ける範囲ならなんなりと」


「おむつ交換、じでもらえまずが」


「おむつ? 文はこないだおまるでできるようになっただろ。頭ぼーっとしてる?」


「いえ、文ぢゃんじゃなぐで、わだじの」


「君のかよ! なんで君がおむつしてんだ!」


「文ぢゃんのが余っでだので。あど、おじっごでトイレにおぎるの、おっぐうなので……」


「トイレにくらい起きろ。文はおむつ卒業したのに君は再入学か」


「蒸れてぎもぢわるいんでず。おぎゃあああ! おぎゃあああああああ!」


「泣くな。君のそれ、赤ん坊というより白面の者って感じだ」


「ナンデ、ワレハ、ニゴッテイル...…!?」


「自業自得だろ。念のため聞くけど小だけだよね? 大はしてないよね?」


「出ぞうど思えば、出ぜまず!」


「出すな。張り切るな」


「ああぁ、お尻ふきシートぎもぢいい……。ごれを待っでだんです。もっど激じぐ」


「なぜ僕はこんなやつと結婚したのか」







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