表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2018/2024

三猿

 雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。

 そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。




「有名なモチーフに、見ザル、聞かザル、言わザルってあるじゃないですか」


「うん。日光東照宮にあるやつね」


「あれ、なんだかちょっとモヤモヤしません?」


「モヤモヤ?」


「だって、見ザルも聞かザルも入力を拒んでるわけでしょう? そうなると次も何かしら自分の中に入れまいとするサルであるべきだと思うんです。つまり、口ならば食べザル」


「ダイエットかなにかしてるのかそいつは」


「いいじゃないですかダイエット猿。これから言わザルには食べザルに名称を変えてもらって、世のシェイプアップに励む人々の守護神として降臨してもらいましょう」


「見ザル聞かザル言わザルって、自分の立場が悪くなるようなこととか、人間関係に災いをもたらすようなことはやめようって意味のことわざでしょ? 食べることはそれと関係ないんじゃない?」


「げに恐ろしきは食い物の恨みと申しまして、食べ物の奪い合いが人間関係のもつれに発展することもあるんですよ」


「だからって食べザルはないだろ。餓死するぞ」


「生きていく以上、『食べざる』をえないですもんね」


「言わザルがごとく口を閉じろ」


「そもそも何を見なかったり聞かなかったり言わなかったりするのかが問題です。これ、全てのことについて当てはめたらウニとかクラゲと同じ生物になってしまいますから」


「道徳的な話として、悪を見ない、聞かない、言わないなんだと思うよ」


「悪を見ないって、他人の悪事から目を背けてるみたいに聞こえますね」


「確かに」


「ところでこの三猿、実は四猿だという話もあるそうです」


「へぇ、四番目はなんなの?」


「しザル、です。股間を押さえているサルです」


「適当言うなよ!」


「いやいや本当ですって。ほら」


「マジか。……マジだ」


「この姿勢だと金的攻撃を受けたように見えてしまいますが」


「他のサルと比べて我慢してる感がケタ違いだな」


「あるいは不意に女性のブラチラかなにかを目撃したことで、股間のモノが立ち上がってしまい、それを隠しているという」


「二回連続で同系の下ネタやめろ!」


「『僕は耳と目を閉じ口を噤んで股間を押さえた人間になろうと考えた』」


「サリンジャーに謝れ!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ