オムツ替え
土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
一日の終わりに、三人は他愛もない会話を始めます。
「うんこ」
「あ、文ちゃんオムツ交換? ちょっと待ってね、用意するから」
「なんかあからさまな自己申告を覚えたな、こいつ」
「教えてくれるのは助かります。外にいると風で匂いが流れてわからないことありますから」
「風下に人がいたら申し訳ないな、なんか」
「それにそろそろこの子もオムツ離れしてくれると助かるんですけどね」
「個人差あるからね。自然に覚えるのを待つんじゃなくて、ちゃんとトレーニングの形で教えなきゃ覚えないだろうし」
「子育てする以前は全然気にしたことなかったことの一つに、おむつ交換の場所が街中には案外ないというのがあります」
「わりと困るよね。ショッピングモールとか空港とか、大きい施設に行けばオムツ替えできるトイレもあるけど」
「先進的なファミレスなどであれば、用意してくれている店舗もあります」
「ファミリーが来ることを前提としたレストランだからな、あそこは。そのへんのサービスは客引きにもなるんだろうね」
「入ったらドリンクバーを頼んで小一時間ほど駄弁らねばならなくなるところが微妙」
「それは店側としてもいい迷惑だと思う。乳児用トイレで集客する戦略が客のタチの悪さによって完全に裏目に出てしまっていると思う」
「見積もりが甘かったですね」
「君みたいな凶悪なフリーライダーが社会に蔓延っているなんてネガティブな見積もりはしなかったんだろうな」
「とにかく、トイレや交通機関の乳幼児への対応の悪さが、地味な子育てのしにくさを生み出し、ひいては日本の少子化を招いていると思うんです」
「大げさ……じゃないかもな。その点については同意する部分もある」
「大人用のトイレが乳幼児用に変形するとか、そういうギミックの開発を期待したいです」
「こうやって夫婦で一緒にいるときはまだいいけど、一人で子供を連れ歩いてるときはトイレに行くのも一苦労だもんね」
「私も何度文ちゃんと同じくオムツを穿こうと思ったことか」
「その発想に至るのはやめようよ、成人として」
「どうにもパンツが膨らんでダメでしたね」
「試すまでに至ったか」




