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雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。
そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。
「ただいま我が家ー! あー疲れましたぁ。案の定Uターンラッシュに巻き込まれましたね」
「長かったね。文のおしめスペアを全て使い果たしてしまうとは」
「渋滞の長さもさることながら、排泄頻度高過ぎでしょ、この子」
「欲しがるからって君がおやつ食べさせすぎなんだよ。あんまり甘やかすな」
「私が運転代わったあとは、おやつもらえなくてふて寝してましたね」
「ああ、後半、運転してくれてありがと」
「明日はあなたの実家ですから。あなただけ運転させるわけにはいきません。お互いの家が反対方向に離れてるといろいろ面倒ですね」
「まぁ方向的に渋滞に巻き込まれることはもうないだろう、たぶん」
「自動運転カーが普及してくれたら、あの渋滞も今よりマシになるんでしょうか」
「ETCの普及で昔よりだいぶ渋滞距離は縮んだと思うけどね。最終的には自動運転で解決になるのかな」
「年末年始に帰省しなければいい、という解決方法が最も手っ取り早いと思うのですが」
「そりゃそうだ。休みの取りやすい時期だし、親戚一同集まるとしたらこのタイミングしかない」
「親子関係以外の親戚はスカイプとかメッセンジャーでよくないですか?」
「いいわけあるか。そういう態度が核家族化を進めるんだぞ」
「どっちにしても、私とあなたの実家、両方同時に顔を出すのは無理でしょう?」
「ああ、距離的にも体力的にもキツいよね。毎年思うけど、君んちに行くときは車じゃなくて新幹線のほうがいいのかな。文も大きくなってきたことだし、来年からそうしよっか」
「新幹線じゃこれだけ大量のログインボーナスを運んでこられませんよ」
「ログインボーナス言うな。実家をなんだと思ってる」
「行くと何かしらレアアイテムがもらえる神殿的な場所」
「バチあたり発言にもほどがある。すべてはお義父さんとお義母さんの善意だってこと忘れちゃダメだぞ」
「文ちゃんを連れて行かなければここまでの善意が発揮されることはないでしょう。この子はいわば実家ログインボーナスのレアリティを増加させる装備」
「さっきから人を人とも思わないメタファーやめろ」




