過去に縛られる
雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。
そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。
「あけましておめでとうございます」
「おめでとう。今年もよろしく」
「さて、お雑煮とおせち料理も食べたことですし、去年の反省と今年の抱負を述べていきましょうか」
「それは僕や君個人の、ってことだよね? うーん。反省しようとしても今年のエピソードが出てこない」
「いろいろあったじゃないですか」
「うん、いろいろあったんだろうけどね? そのへん描かれてないからなにもわからないんだよね」
「ほら、あなたが私の昔履いていた下着を大切にしまい隠していた事件とか」
「ねぇよそんな事件! でっちあげるな!」
「二人で結婚後初めての大喧嘩をして、あなたが実家に帰ってしまった事件」
「それもない! しかもなんで僕が家から逃亡した感じなんだ!」
「新旧登場人物を交えての唐突な野球回」
「ゼロ年代アニメの恒例パターンみたいなのもない!」
「難しいですね。いったい我々は今年一年なにをしていたのか」
「反省すべきはまずそんな疑問が立ち上がること自体じゃないだろうか」
「まとめると去年の反省は、過去を振り返り過ぎた、現実から目をそらし過ぎた、というあたりでしょうか」
「別に反省するほど悪いことじゃないと思うけどね。確かに、もう少し現実世界で会話してもよかったと思う」
「逆に良かったことは、記念すべき二千回目の会話を迎えられたことでしょうか」
「続く限りほぼ必然と言っていいイベントだな。まぁ継続するのはいいことだ」
「今年は過去編はほどほどにして、ちゃんと現代で話を進めましょうか」
「そうだね」
「あるいは未来編を始める」
「いろいろと難易度高いからやめろ。科学技術が日進月歩の現代じゃ五年後の世界も想像できないから。あとあと矛盾点が大量生産されそうだから。今を生きようよ」
「では今年の抱負は、なるべく現実に目を向けること、ということで」
「ほどほどに現実に目を向けること、にしよう。なるべくだと現実見すぎて継続が危ぶまれそう。夢から完全に覚めてしまったら元も子もない」
「あと更新遅れないこと」
「さっそく今1月2日だけどな」
「え、今日は1月1日でしょう?」
「過去編やめろ」




