老化
土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
一日の終わりに、二人は他愛もない会話を始めます。
「今って、平成何年ですか?」
「……なんだその未来から来た人みたいなセリフ。平成29年。来年で平成30年だよ。生前退位で年号もそろそろ変わりそうだけど」
「すみません。最近なんだか時系列がごちゃごちゃで。過去編かと思いきや謎時空だったり、かと思いきや過去だったりで」
「あー、うん、よくわからないけど大変だね」
「私って歳はいくつでしたっけ?」
「本当に大丈夫か。君はいま29歳。僕は28歳。文はついこないだ2歳になった」
「ちくわ」
「ガハッ! まさかの二十代最後の歳……。なんと言いますか、うわぁ」
「うん、びっくりだね。文、お母さん来年で三十路だってさ」
「みそ」
「こうしてはいられません。今のうちに二十代でしかできないことをやっておかねば」
「ああ、三十過ぎるといろいろ負の変化が体に起きるって言うしねぇ」
「顔にシミシワが目立つようになり、お腹にお肉が付きやすくなり、ちょっと走っただけでヘトヘト、徹夜などもってのほか……」
「徹夜か。久しくしてないな」
「昔は夜を徹してあなたと愛を語り合うこともあったというのに」
「…………」
「文ちゃん、最近お父さん帰ってくるとすぐ寝ちゃうからお母さん寂しいよぉ」
「さびしい?」
「中間管理職になると定時で帰るのが難しくなるんだよ。わかってほしい」
「年齢が上がると大変ですよね。体力は落ちるのにやらなければならないことは多くなるという理不尽」
「本当にね。まぁ二十代後半でそんなこと言ってたらこの先やっていけないんだけどさ」
「これから年齢が上がっていくにつれ、更に仕事時間が増えていったらどうします? 定年間際には二徹三徹が当たり前になってるんじゃないですか」
「どんなブラック企業だ。人間を使い捨てる気満々か」
「ひたすら酷使して過労以外の健康不良で死んでもらったほうが企業としては退職金払わずに済んで万々歳ですよね」
「その環境で過労以外の死因があるのか。というかその会社の経営者は赤い血が流れている人間か」
「そうならないためにも、もっと若い世代に頑張って徹夜してほしいですね」
「社会の老化を感じる」




