表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1999/2024

聖夜の更新2017 She Like

 彼が失敗したわたしを慰めてくれたとき、頭を撫でるその感触に、大好きだった今は亡き父を思い出した。よくよく考えてみれば、わたしが最初に恋をしたのは彼に対してではなく、忘れかけていたその感覚なのかもしれない。




「はぁー、まだ産まれたって連絡来ないよ……。大丈夫かな」


「そんな心配すんなって。出産って時間かかるときはめちゃくちゃかかるんだろ?」


「そうなんだ?」


「なんで男のおれのほうがよく知ってるんだよ。徹夜で分娩とかザラらしいぞ」


「な、なるほど、壮絶だね。渋滞なんて第一の試練に過ぎなかったと……」


「まぁケーキでも食べてのんびり待とうや。フルーツ山盛りとチョコ、どっちがいい?」


「ケーキ? あんたそんなのいつ買ったの? ていうか、どんだけクリスマスに気合い入れてんの?」


「違うわ。これはもらったんだよ」


「なんで? 誰に?」


「例の彼女にたまたまケーキ屋で会ってさ。買ったけどやっぱり今日は食べられない気がするからって。ズバリ予想的中だったな」


「そっか」


「まぁ、ぬいぐるみと交換でトントンってことにしとこうや」


「そうだね」


「で、フルーツとチョコどっち? この期に及んで食べないって選択肢はなしだからな」


「うん。じゃあ、フルーツ」


「よし、いよいよ頑固な姉ちゃんと、クリスマスを祝うときがきたか! 感無量!」


「そんなに嬉しいの?」


「ああ、ずっと憧れだったからな。ウィーウィッシュアメリークリスマス!」


「いつになくテンション高いねあんた。腕回しすぎて壊れた?」


「そういや姉ちゃん、渋滞緩和のことなんで言わなかったの? 感謝してもらえただろうし、好感度だって上がったんじゃね?」


「ああ、まぁ、そんなのわざわざ主張するほうがおかしいでしょ」


「それはそうだけど、そこは自然な形で教えるんだよ。実際あのまま渋滞突っかかってたら、どうなってたかわからんよ? 第一の試練っつっても、脱落したらそれはそれよ?」


「いいの。もう、主任の赤ちゃんが無事で、あの夫婦が幸せなら、それでわたしは満足だから」


「それは強がりじゃなくて本気で言ってんの?」


「うん。本気。だって、そのために今日あれだけ頑張ったんだもん」


「……そうだな」


「わたしね」


「うん」


「ちょっとだけ好きになれそうだよ、クリスマス」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ