表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1994/2024

聖夜の更新2017 Repeted Conjecture

 女子から相談を受けることは何度も経験しているが(そしてそれらはだいたいが話題作り、かまってほしいがための他愛ない悩みだったが)、自分の悩みを他人に打ち明けるのは初めての経験だった。

 そういう弱みを見せる行為は好きな相手にしてしまうやつで、自分からしないほうがいいというのがおれのセオリーだったが、それだけおれにとって深刻な悩みであったし、それになにより彼女ならなにかしら良いアドバイスをくれる気がしたのだ。




「なるほどね。それで毎年ケーキ買えずに、ショーケースの前で立ちすくむ貧民街の少年みたいになっちゃうってわけ」


「名トランペッターの少年時代みたいなイメージやめろや」


「ちゃんとあなたの気持ち、伝えたの? 家族でクリスマス過ごしたいって」


「いや、おれそういうキャラじゃねぇし。姉ちゃんが嫌がることしたくねぇし」


「たまには弟がワガママ言ってくれるのも、お姉さんとしては嬉しいんじゃない?」


「だからそういうんじゃないって。おれの気持ちだって、姉ちゃんはとっくに分かってるよ。そこまで鈍感なやつじゃない。姉ちゃんが気づいてることに、おれは気づいてる」


「たしかにね、人の本音は言葉じゃなくて態度にこそ表れるものだけど」


「おう、そういうことだ」


「でもね、態度というのは気づかないふりができるものなの。言葉にして初めて向き合わなきゃならなくなることもある」


「……そうか」


「相手の気持ちを察するのは、確かに人の優れた能力だけれど、忖度に忖度を重ねてると、どちらの望む方向にもいけなくなるから気をつけなさい」


「忖度、してんのかな」


「少なくとも伝えたいことを秘密のままにしておくのは、家族っぽくないんじゃない?」


「うん」


「はい、私からはここまで。付き添いありがとう」


「家に上がってよかったら、まだ一緒にいてやっていいぞ」


「けっこうです。私たち夫婦の愛の巣に上がりこもうなんて二億年早いわ。電話すれば彼が飛んできてくれるから大丈夫」


「……ちぇ」


「拗ねないの。ほら、このケーキあげるから、二人で食べなさい」


「は? いらねぇよ。姉ちゃん絶対食わないし」


「それならそれでいい。私もさっきまでケーキ食べたい気分だったんだけど」


「けど?」


「なんか今日はね、食べられない気がしてきたんだ」


「そうか。元気な赤ちゃん産まれることを願ってるよ」


「あなたたちも、楽しいクリスマスを」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ