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1990/2024

Ethical Problem

 その日は、彼がいつもと別人に見えた。格好も行動もまったくいつもの彼であり、同僚たちと話す様子も今までのそれと違いなかったけど、どこか認識がズレてしまったように、わたしには違ってみえた。




「尾先さん、今日はなんか元気ないね。具合悪い?」


「いえ、別に特には」


「表情暗いよ? 特になにもなかったとは思えないんだけど」


「……少しショックを受ける出来事があって」


「ショック?」


「前に話した好きな人、なんですけど」


「う、うん」


「どうやら彼女がいたみたいなんです、その人」


「そっか……。まぁ、よくある話だね。好きな人にはもう恋人がいた、って」


「そういうとき、主任ならどうしますか?」


「僕?」


「身を引きますか? それとも、奪いますか?」


「どうだろうね。特にどうするってこともなく、そのままずるずる友達関係続ける、みたいな感じかもね。僕、優柔不断だからさ」


「それは、苦しくないですか? だって自分の好きな人が他の誰かと楽しげにしてるのを、端から見続けるんですよ?」


「その人が幸せそうならいいんじゃないかな」


「平気で……平気でそういうこと言うんですね」


「うん、もちろん苦しく感じることもあるだろうけどね。それでも誰かの幸せを壊すよりは苦しくない」


「わたしは、そんなふうには考えられませんでした。実は前から知ってたんです」


「知ってた?」


「その人がわたしなんてこれっぽっちも見てないって。他に好きな人がいるんだって」


「……そっか」


「だから奪おうとしたんです。その人の好きな人から。最低ですよね」


「最低かな? 君が奪いたかったなら、それでよかったんじゃない? その先どうなるかは関係者だけの問題だよ。僕みたいな第三者が善悪を判定するようなことじゃない」


「もし主任が第三者じゃなかったら?」


「……そうだとしても、君が気に病むことじゃないよ。そのときは、僕と彼女と君の問題だ」


「優しくしないでください」


「どこが? 優しくなんてしてないよ。真っ向から立ち合ってるつもりだ」


「もっとズタボロになるくらい非難してください。わたしが主任を嫌いになるくらい……。もうこれ以上、好きになりたくないんです」


「うん……ごめん」


「やっぱり今日は具合が悪いので、早退します。ご迷惑おかけしてすみません」




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