Disturbing Morals
大学というのは規則や時間に縛られない高校のようなものだと認識している。二十歳を越えれば酒も飲めるようになり、特定のコミュニティ内で幅をきかせることができる。世の高校生たちはそんな世界を夢見て、大学受験に臨んでいる――のだろうか。
おれには正直、その面白さがよくわからないのだが。
「姉ちゃん」
「ん?」
「大学って楽しかった?」
「あー、大学ねぇ。期待したほどではなかったかな。少なくともうちのとこは」
「ふーん。サークルってなに入ってたっけ?」
「手芸」
「パッとしないなぁ。女同士で駄弁りながらお茶飲むやつだろ?」
「ちがっ……わないけど……」
「そんなの入るから彼氏できねぇんだよ。もっと他にテニサーとかテニサーとかテニサーとかあるだろ」
「テニスサークルにどんな偏見持ってんの?」
「とりあえず異性と接点持たないとせっかくの大学生活が白黒写真になっちゃうだろ。野球やサッカーと違って女子にも人気のあるスポーツだからな、テニスは」
「手芸サークルだって男子おったわ」
「入ってくる人種限られるだろ。姉ちゃんはその男子と恋に落ちたりしたの?」
「落ちてない。そんな危険な香りのする男子は入ってこなかった」
「だから運動系の部活入りゃよかったのに。少なくとも今より男に免疫ついてたと思うぞ?」
「だって体育会系ってなんか怖いし」
「運動部にどんな偏見持ってんだよ」
「男子も怖いけど女子も怖い。だったら女の子同士、いざこざなくにこやかにおしゃべりしていたい」
「まぁ気は楽だわな、そのほうが。おれも女の子と和やかにおしゃべりするのが好きよ」
「来るな。あんたみたいなのがいるとサークルの風紀が乱れる」
「……やっぱりそうなんかな」
「え?」
「おれの周り、そういうことばっかり起きるからさ。元々仲良かった女の子同士が喧嘩したり、友達だと思ってたやつに嫌われたり」
「んー」
「おれが悪いんかな?」
「さぁ。学校でのあんた知らないから、わたしにはなんとも言えんわ」
「普通に女の子に優しくしてるだけなんだけど、いつの間にかほつれるんだよな」
「女の子だけに優しくするからじゃないの?」
「男に優しくしてなんか良いことあんの?」
「やっぱりあんたが悪い気がしてきた」




