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1978/2024

Decision Making

 好きな人に冷たくするのは難しい。明らかに矛盾したその行動をわたしが取れるとしたら、それはあの人のことをたいして好きではなくなったときだろう。




「はぁ、今週末も誘えなかった……」


「ああ、サシ飲み? 一応誘おうとはしてるのか」


「いざとなると勇気出ないよね。というか、絶対断られるよ。だって家で臨月の奥さん待ってるんだよ? 常識的に考えて飲むわけなくない?」


「うん、無理だと思う。ぶっちゃけタイミング悪すぎだ。出産控えた夫婦の間に割って入るって、控えめに言って人間のクズだし」


「おい。あんたが言ったんでしょ」


「おれ人間のクズだし」


「……そうだね」


「あと確実に奪えるとは一言も言ってない。勝負しかけるとしたら産後だろ。子供産まれたらそれはそれでしかけにくくなるけどなぁ」


「本当に浮気したらそれはそれでどうなんだって話だしねぇ。わたしのほうがあの人のこと見損なっちゃいそう」


「それこそ今更な気づきだな」


「いまの関係失うのも嫌だしさー。ランチ誘わないとか冷たくするの無理。我慢できない」


「そこで一歩踏み出さないと現状に変化はない」


「あんた勇気だけはあるよね。女の子に振られたら嫌だとか思わない?」


「別に勇気なんていらん。失敗したところで次行けばいい。女なんて山ほどいるし」


「その思考は無理。わたしが好きなのはあの人だけだから……」


「女ってだいたいそうだよな。無駄に一途。対策としては、他の男にも惚れてみるしかない」


「本気で言ってる?」


「うん、まぁ、姉ちゃんには無理だとわかってる。伊達に長い付き合いじゃないからな」


「……あんたってさ、高校卒業したら大学進学するんだよね」


「ああ、そのつもり」


「わたしの行ってたとこ?」


「いや、普通に東京行きたい。都会人になりたい」


「ふーん」


「だから来年からはひとり立ちしてくれ」


「わたしはとっくに社会人として独立してますー! 別にあんたがいなかったところでぜんっぜん問題なし!」


「ま、人妻と付き合えることになったら姉ちゃんの大学に進学しようかな」


「え? そこまで可能性ありそうなの? そっち」


「まだわからんけど、わりといけんじゃね? って気がしてる」


「マジで?」


「いちおう会話が続くようにはなったからな。このまま親密度上げてって、あとは旦那のほうがなんかヘマしてくれたら、こっち向くんじゃないかって気がしないでもない」


「あんたすごいね」


「伊達に複股かけてないぜ」


「まったく褒められないけど、そしたら全部上手くいくかな? ほら、わたしがあの人と付き合って、あんたが奥さんと付き合えば完璧」


「子供は?」


「…………」





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